娘セイ×婿セイ×開発中!
久々に再開した両親と、ファミレスで別れ、帰り道を行くなだらか。
周りは、すっかり日が暮れて、景色は闇に暗転しているようだった。まだ六時ごろだというのに。
すっかり秋めいてしまっていた。
ふと顔を上げると、路乃外れの公園に狐の面を付けた男子がいる。
ベンチのど真ん中にドカッと腰掛ける男子は、見紛うことなく昴だった。
「……なにしてるの、昴君」
「おや、お面をしてるのに分かるとは、流石なだらか先輩!」
昴は、狐の面を少しだけ上にずらして、口元の笑みをチラつかせた。
「愛する昴君のご尊顔は、仮面上からでも丸わかりですか?」
「バカ言わないで。あ、座っていい?」
「もちろん」
昴は一人分横にずれる。
そこになだらかが、スカートの裾を腿に寄せて座った。
「私、転校しなくて良くなったよ」
「それはなにより。俺も身を張った甲斐があったもんですね」
昴は大げさに手を振ると、溜息を吐いた。
「正直、冷や冷やしてました」
「奇遇だね、私もだよ」
ひょっとすると、一つ間違っていたらこうして昴と話すこともできなかった。二度と英露や雨母とも会うことはなかったかもしれない。
「そうだ昴君、良いこと教えてあげるよ」
「……? なんでしょう、愛の告白ですかね?」
とぼけた様子の昴だったが、なだらかの話は聞く態度だった。その証拠に耳と目は傾けていた。
「私、ちゃんと将来の夢があったみたい」
とても小さい頃の、幼稚園児の口約束みたいなもの。
よくある夢の内容だったが、なだらかにはそれがとても輝いて見えた。
「へえ、それは聞かせてもらえるんですよね?」
「んー……内緒だよっ!」
「ええーっ!?」
真実を知ろうと振り向かせようと手を伸ばしたが、なだらかはヒラリとその手を避ける。
なだらかはベンチを飛び出し、家に帰ろうと走る。
「待ってくださいよ、なだらか先輩!」
「やーだよ」
その時、昴となだらかのアトリスが震えたが、二人はそのことに気付かなかった。
文字はアトリスの表面に一度だけ現われて、文字化けを起こした。バグってしまったようだ。
一瞬垣間見たその文字。
底峰なだらか。
個性「ヒロイン」。
高盛昴。
個性「ヒーロー」
二人の個性は、イチとゼロの間でその発現を待ち続ける。
さくっとした感じに終わらせました。
娘セイ×婿セイ×開発中!完結。