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初恋は実らない  作者: 柏原ゆら
*Disappointed Love*
9/18

#09

「……ねぇ、岳」


白石のもとを離れ、席に着いた途端、希帆が俺のもとに来た。


「どした?」

「宿題……見せてくれないかな……。終わんなくて……」

「おお」


わりと真面目な希帆にしては珍しい……でも、まぁしょうがないか。

「はいよ」と宿題になっていたプリントを渡し、希帆はトボトボと席に戻っていった。


*


「……おい、晴人」


俺は、休み時間廊下に出ていた晴人に声をかけた。

理由は、ただひとつ。

晴人は、「よぉ」なんて言って、俺のもとへ来た。よく、そんなに普通にしてられるな。


「……夏祭り楽しかったか?」

「おぅ!まぁな~」


晴人は、楽しそうに笑った。希帆の気持ちも知らないで。だが、その顔を、一瞬で変えた。


「……なに?希帆と行かなかったから怒りに来た?」

「っ!?」


突然の晴人の言葉に息を呑む。


「岳が俺んとこ来た時点で、大体わかってたんだよね~。案の定、夏祭りの話し始めるし」

「そうか。なら、大正解だな。何で希帆と行かなかったんだよ」

「理由は簡単。行きたくなかったんだよ、希帆と」


そして、晴人はゆっくり俺の近くまで歩んだ。


「……俺さ、他に好きな子いんの。確かに、希帆は小さくてちょこちょこしてて可愛いよ?だけどさ、ちょっと重いよね。俺のこと好きなのバレバレだし。何で、俺は希帆のこと好きじゃねぇのに誘わなきゃなんねんだよ」

「……っ」


返す言葉がなかった。晴人の言ってることも、一理ある。けど―…


「……だからって、ドタキャンはひでぇだろ」

「だーかーらー……」


晴人は、呆れたといった様子で続けた。


「……俺は、由梨音が好きなんだよ」


桃園由梨音(ももぞのゆりね)―…

THE・女子って感じの奴で、陰口は勿論、男遊びも酷いそうだ。まさに、晴人にピッタリの女子だと俺は思う。


「でさ、岳って希帆のこと好きだろ?拐っちゃってよ、王子様?」


晴人は、ニヤッと笑ってふざけたように言う。悔しいが、晴人は何でもお見通しのようだ。


「……そ。じゃあ、今後希帆に近づくなよ」


「言われなくても」と言って、晴人は教室に戻った。俺は、その後ろ姿を見つめた。


「……岳?」


俺の名を呼ぶ声に、肩を震わせる。


「希帆……」

「これ……。宿題、ありがと」


「おう」と言って希帆から自分のプリントを受け取る。

「……ねぇ、岳」と、希帆は話し始めた。


「……晴人君との事、気にしなくていいよ」

「は……?」

「さっき、晴人君と話してたんでしょ……?私は、大丈夫だから」

「大丈夫って……全然大丈夫じゃないだろ」

「大丈夫だって。余計なこと、しないで……っ」


そう言われてしまったら、何も言えないし何もできない。

“余計なこと“か……。俺は、希帆の為にやってるつもりなんだけどな。

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