#07
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夏祭りは光のようにすぐ来て。
待ち合わせの時間より一時間も早く来てしまった私は、待ち合わせの場所として指定したとある神社の前で一人待っていた。
この街の夏祭りは今日と昨日で二日かけて行われて、神社から少し離れた大通りまでは、色々な種類の屋台で溢れていた。
今日の私は新しく買った白と紺色の浴衣を着て、髪をおろして花の髪飾りを付けた格好。この浴衣が気に入りすぎて、今日まで毎日拝んでいた。
ふと、巾着からスマートフォンを取り出して時間を確認する。三時。晴人君とは四時に集合となっているから、何かして待っていよう。暇を潰すいいものはないかな。
ボーッと正面を見ていると、一組のカップルが目に入った。女性のほうが男性の腕に自身の腕を絡ませて、体を男性の方に委ねている。二人の体はピッタリくっついて、とっても仲良しそうだった。
私も、晴人君とあんな関係になれたらなぁ……などと考えていたら、すぐに待ち合わせの時間になった。
でも、晴人君は見当たらない。
用意してるのかな、とか、今こっちに向かってるのかな、とか。色々理由は考えられる。
……でも、三十分経っても、一時間経っても晴人君は姿を現さなかった。
「……待ち合わせ場所、間違えたとか?」
近くの神社に移動する。でも、晴人君はいなかった。
「……時間、間違えたとか?」
でも、私も早く来ていた。一時間も早く来て、待ち合わせの時間から一時間も待った。間違えていたとしても、出会えているはずだ。
「……私と来たくなかった……とか?」
……まさか。晴人君から誘ってきて、それはないよ。
私は晴人君に会うために、街中を歩いた。すると、とある大きなビルの前で見つけた。女の人と歩いている晴人君を。
「晴人君……っ」
その女の人と笑顔で会話し、笑顔で歩き。終いには、女の人が食べたチョコバナナを晴人君が食べるという、俗に言う“間接キス“が行われた。
「…―っ」
何で?何でなの、晴人君。私はこんなに待ったんだよ。
なんて、問わなくても理由はわかる。私と来たくなかった、のひとつだよ。
最初っから、私と行く気なんてなかったんだ……。
ポタポタと、目から涙が地面に落ちる。
グシッと袖で涙を脱ぐって、私は走り出した。
人の目なんか気にせず、ただただ走った。