#02
俺には、好きな人がいる。
それは、俺の初恋で。ずっと小さい頃から想っていた。
でも、世の中には“初恋は実らない“という言葉があって。それでも、実らせてやると強気だったのに。
「私ね、好きな人ができたの!」
希帆の言葉を聞いて、弱気になった。でも、それが初恋だと希帆から聞いて、実らなければいいのにな…と思う俺はさいていだな。
「…希帆、あれ」
目の前に希帆の想い人 晴人がいて、指をさす。
晴人を見て希帆は、顔を赤くした。可愛い…なんてな。
「ほら。挨拶してこいよ」
背中を軽く押すと、希帆は耳の下で二つに縛っている短い髪をピョコピョコさせながら晴人のもとへ走っていく。
希帆のためなら仕方ない、と思うのが普通なのだが、やっぱり胸が痛い。
所詮、俺が希帆に対する気持ちも初恋だ。実らないんだ。
*
「はぁ~。晴人君カッコよかったなぁ」
朝挨拶を交わしただけなのに、晴人君と話せてウキウキの私。
「…よかったな、話せて」
「うんっ。岳のお陰だよ~」
「ありがとね」と岳にお礼を言うと、いつものように「…ん」と恥ずかしそうに返してきた。
「…そういえばさ。岳は、好きな人いないの?」
ふと気になり、聞いてみた。
岳みたいなムッツリさんにも、好きな人くらいいるよね~と思ったが、返ってくる言葉は違った。
「…いねーよ」
「えーっ、いないの~?」
そっかぁ。いないのかぁ。
「んじゃさ、作ろうよ!好きな人!例えばさ~…あの子!白石未来ちゃん!」
私は、廊下で友達と話している隣のクラスの未来ちゃんを指さした。
「…誰?」
「隣のクラスの美人さん!お姉さんが、学校一イケメンの何とか先輩と付き合ってる子だよ!」
名前は知らないけど。
岳にお勧めすると、岳は「ふーん…」と興味無さそうにスマホをいじり始めた。
そんな岳に、私は「恋すると楽しいのにな~」とぼやいた。