#18
そうこうしているうちに、もう放課後になってしまった。今のところ岳からも未来ちゃんからも何も聞いていないから、まだ言ってないという事だろうか。
今、教室には私しかいない。岳はどこにいるのだろうか。もしかすると……未来ちゃんに呼ばれたとか?
「はぁ……」と大きくため息をついて、教室を出る。すると、背後から「よぉ、希帆」と言う声がした。声を聞いて、ビクッと肩を震わす。振り向くと、そこには―…
「晴人……君……」
かつて、私が想いを寄せていた、晴人君だった。
複雑だ。今までは一目見るだけで嬉しかったのに、今はなるべく会いたくなかった。声だって、聞きたくなかった。……顔も、見たくなかった。
それでも晴人君は「希帆にお願いがあんだけど~」とか言いながら、私に近づいてくる。私は、警戒しながら後退りした。
「なぁ、希帆。これから俺と遊ばね?」
「遊ぶ?何して……」
「んー、そうだな~……」
ドン、と背中に壁があたる。これ以上さがれなくなってしまった。晴人君の体が近くなる。そして、これ以上進めなくなると、晴人君は自身の左手を私の顔の真横の壁についた。俗に言う、“壁ドン“の体勢になった。
「ちょっ……何すん……」
「ん?遊ぶの」
そう言って、晴人君は私の唇を奪った。それと同時に、誰かの足音が聞こえた。
晴人君にキスされたまま足音のした方を見るとそこには――岳がいた。岳は、私と晴人君を見て、複雑な表情をして来た道を戻っていった。
……誤解された。そう感じた私は、晴人君を突き飛ばして岳を追いかけた。
「……っ、岳っ……!」
岳が行ったと思われる道を、必死で走った。少し走ったところで、目の前に岳を見つけた。
「岳っ……。待って、岳っ……!」
いくら呼んでも止まってくれないので、後ろからギューッと抱きついて無理矢理ひき止める。岳は、なぜか抵抗しなかった。だから、私はずっと抱きついていた 。
「……放せよ」
しばらくして、岳は口を開いた。
「……嫌だ」
「……は?」
岳はそう聞き返した後、「何で」と聞いてきた。何でと言われても、理由はただひとつ。
「……だから」
「え?」
「……岳のことが、好きだから」
暫しの沈黙。私は、恥ずかしさのあまり更に強く岳を抱きしめた。
「痛い。希帆、痛い」
そう言うので、「あ、ごめん……」と言って放す。
岳は、誰もいない廊下に座りこんだ。私もつられて座る。そして、口を開いた。
「……俺のこと、好きなの?」
恥ずかしながら、首を縦に振る。
「……じゃあ、あの晴人とのキスはなんなんだよ」
「無理矢理、されて……」
「お前、晴人のこと好きだったじゃん」
「嬉しくないのかよ」と岳は付け足す。嬉しいわけがない。一度酷い目に遭わされた相手に、好きな人の目の前でされたのだから。
「どうなんだよ」と岳は答えを要求してくる。私は、岳の目を見つめて言った。
「……晴人君のことはもう好きじゃない。今は、岳のことが好き」
そう言った途端、岳の頬がほんのり赤く染まった。私も、よく堂々と言えたなぁ。たぶんそれは、相手が岳だからかな。
チラッと岳を見ると、更に頬を染め、口元に手の甲をあてながら横を向いていた。背後からは、夕日の光が射し込んでいた。ボーッと見ていると、岳が口を開いた。
「……も」
「へ?」
「俺も好き」
一気に体温が上がるのがわかった。岳は、私の目を見つめてから、ゆっくりとキスをした。唇が放れた後、岳は私の頭を撫でながら微笑んだ。
「……岳、も……?」
「うん。ずっと前から」
前から、岳は私のことを想っててくれたんだ。何だか嬉しくて、口元が緩んでしまう。たぶん私は、今すごい顔をしているんだろうな。
するとここで、校舎施錠の校内放送が流れた。早く荷物を取りに行かなければ、取れなくなってしまう。
私達は立ち上がった。すると、岳が私の少し前を歩き、立ち止まって左手を出した。私は、その左手に自分の右手を重ねた。そして、歩きだした。
「……初恋でも、実るんだな」
「え?何て?」
「いや、何も」
私達は日が沈む中、二人寄り添って帰路を歩いた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
不慣れで、読みづらい点等あったらすみませんm(_ _)m
感想、評価してくださると嬉しいです ゜*。:(人´v`*)☆゜:。*゜




