#16
「はい、完成っ」
私達は約一時間かけて、肉と野菜炒めを作った。にしても……。
「……作りすぎ」
そう。一人分の量にしては作りすぎてしまったのだ。
う~ん、どうしよう……。病人の岳に全部食べさせるわけにはいかないし……。
「……あっ、じゃあ、私も一緒に食べるよ!」
そう言うと、岳と未来ちゃんは「えっ?」と聞き返した。
「予備のお箸あるよね?」
「ま、まあ……」
私はお箸があると思われる引き出しを引き、箸を一膳取り出した。すると、未来ちゃんが口を開いた。
「わっ、私も食べてく!」
そう言うので、私はもう一膳お箸を取り出した。そして、私達は岳の家で夕飯を食べる事になったのだ。
食べ始めて数分で、未来ちゃんが「あっ、そういえばね……」と岳に話をふった。この話は長く続き、私は夕飯を食べ終えてしまった。それでも、岳と未来ちゃんの会話は続いた。
私は食器を洗おうと、席を立った。すると、後ろから岳がついてきた。
「食器洗いくらい、俺がやるよ」
「いや、いいよ!岳は病人なんだから、安静にしてて?」
「いや、作ってもらったんだし、洗い物は俺が……」
「いいって!」といくら言っても、岳は引き下がろうとしない。そんな時、岳がバランスを崩しふらついた。
「わっ……」
慌てて岳を支える。けど、私が小さいのか岳が大きいのか、上手く支えきれずに二人一緒に床に崩れ落ちた。
重い……って事より、岳が近い!吐息がめっちゃ近くで聞こえるし、つらそうな顔が近くに見える。ど、どうしようこの体勢!!事情知らない人には誤解されそう……。
「が、岳、おも……」
「星川君!希帆ちゃん!大丈夫っ!?」
しばらくすると、未来ちゃんが助けに来てくれた。未来ちゃんの手も借りて、岳をベッドに寝かした。
「……星川君、大丈夫かなぁ……」
隣で未来ちゃんが呟く。
「……未来ちゃん、そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」
私は、時計を見て言った。でも、未来ちゃんは「で、でも……」と岳を見ながら言う。
「大丈夫だよ。私がここにいるから。家隣だし」
「じゃあ……よろしくね」
そう言って、未来ちゃんは帰った。岳の部屋は、私と岳だけになった。
私はベッドの横にしゃがんで、岳の頭を撫でながら囁いた。
「珍しいね、岳が風邪ひくなんて。岳が学校来てくれないと、私朝一人になっちゃうんだよ?お昼だって、柚ちゃんがカレシさんと食べると一人だし、帰りも一人だし。皆も心配してたよ?未来ちゃんだって、来てくれたし」
私は、布団から出ていた岳の右手を握った。
「……岳がいないとつまらないなぁ……」




