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初恋は実らない  作者: 柏原ゆら
*Disappointed Love*
12/18

#12

「……希帆。驚かないで聞いて」


とある昼休みの時間。私は、真剣な眼差しの柚ちゃんにそう言われ、こくりと頷いた。何を言われるんだろうか。「驚かないで」と言うくらいだから、驚く話なのだろう。


「……晴人君に、彼女ができたって」


柚ちゃんの口から出た言葉はそれだった。私は驚きを隠せなかったが、余裕を装って柚ちゃんに訊ねた。


「……噂?」

「うん、噂だけど……」

「相手は?」

「桃園さんって聞いた」


桃園さんかぁ……晴人君にピッタリだね。

やっぱり、私の初恋は実らなかった。実らないと知っていて、自分で恋をし続けると決めたんだ。桃園さんと付き合っていることが噂でも、今はなんだか信じてしまえた。


「……希帆、大丈夫?」

「……え?」


気づくと、手の甲に滴がのっていた。雨……ではなさそうだ。なんせ、今日は快晴なのだから。

雨でないとしたら、ただひとつ。涙だ。私は、知らぬ間に涙を溢していたらしい。溢れてくる涙を、私は止めることが出来なかった。


*


授業が始まる前の予鈴が鳴り、教室に戻る。すると、岳に出くわした。岳は、私の顔を見て目を丸くした。たぶん、目が赤く腫れていたからだろう。でも、岳はその事には触れないでくれた。そして、耳元でこう言われた。


「今日の放課後、例の店」


“例の店“とは、私達がこの高校に通い始めたばかりの頃、下校中に見つけたオシャレなカフェの事だ。そのカフェは付属品のスイーツが美味しくて、スイーツ好きな私には何個でもいけちゃうくらいだ。そのお店に、今日の放課後行こうという事だろうか。

岳は、私が頷く前に自分の席に戻っていってしまっていたので、私も戻ることにした。


*


放課後。


「希帆、行くぞ」

「あっ、うんっ」


小走りで岳の後を着いていく。無言で歩いていると、例のお店に着いた。

二人席に向かい合わせで座る。他に、お客さんはいなく、そのせいか、店員さんも少なかった。

少ししたら店員さんが、私達の注文をとりに来た。甘党な私はキャラメルラテを、甘い物が苦手な岳はブラックコーヒーを頼んだ。そして、チョコケーキを頼もう……と思い、口を開こうとすると岳が遮った。


「ここからここまで、全部」


そう言って、手に持っていたメニュー表を指さした。岳がこんなに食べるのかな?珍しい。

とか思っていると、注文した物が来た。そして、岳が頼んだスイーツが来たかと思うと、岳はそのお皿を私の方に押し出した。


「これ食べて、全部忘れろ」


何の事だかすぐわかった。岳は噂で聞いたことで私が泣いていたと知っていて、ここに連れてきてくれたんだろう。

私は、目の前に置かれたカップケーキを一口食べる。すると、自然と涙が出てきた。失恋と、岳の優しさに。

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