58 成果
ミトの騒動から、約7ヶ月が経過した。
特別助成金という名目でクレブス王から多額の研究費を受け取ったソラたちの研究は、激化を極めた。
上手い表現は見当たらないが――爆発のない日はない、といった具合か。
周辺の民家とはお金で相談し退避して頂いたようである。
お陰で、気兼ねなく、やりたい放題に研究の日々を過ごしていた。
「こ、これだわ……!」
リーシェは震えていた。
それは、二年足らずの研究人生の中で、初めての経験だった。
「波! 波よ!」
人々の少なからずが経験したことがあるであろうそれは、強烈なブレイクスルー。
「魔力の波を……いえ、弱いわね。波を重ねると……うーん……振動させて……!」
自室でグルグルと歩き回りながら、ぶつぶつと呟く。椅子になんて、座っていられない。
そして、決定的な気付きがあったようだ。
「――にっ、兄さん! 兄さぁーん!」
リーシェはドアを勢い良くぶち開けると、大声でソラを呼びながら、階段を下って行った。
絶対防御魔術――ソラに与えられたこの無理難題は、ついに収束を迎えようとしていた。
「…………うん。それ、かなりイケてると思う」
リーシェの話を聞いたソラは、にっこりと微笑んでリーシェを祝福した。
ソラの反応を不安げに見つめていたリーシェの表情が、ぱあっと明るくなった。
「いや待って、すごい、超インスピレーション来てる! ふぉおおお! すごい発想だよリーシェ!」
何か特別に気づくことがあったのか、ソラはハイテンションでそう言うと、リーシェの手を取った。
「ありがとうございます! そ、それで、あの、兄さんのお力をお借りしたく存じます」
リーシェは興奮冷めやまぬまま、そして握られた手と距離の近いソラの顔に少し赤面しながら、おねだりした。
「うん、勿論! 多分、リーシェの魔力じゃ厳しいと思う。僕が試してみるから、見ていて」
「はい。お願いいたします」
ソラは、リーシェを連れ立って庭に向かった。
リーシェが自分の手に余ると判断した魔術の構想を、代わりにソラに実験させるというこの「おねだり」は、ここ半年ほどで定着したスタイルである。
「さて……魔力の波と……それから、振動……からの……」
庭に着くやいなや、早速リーシェの考えた魔術を試すソラ。
「…………できた、かも?」
「……?」
30秒ほど試行錯誤して、首を傾げながらリーシェの方を見た。リーシェも、合わせて首を傾げる。
何故首を傾げたかというと、ソラのかざす手の先、その“絶対防御魔術”があるはずの場所には、何の変化もないように見えるからである。
「ちょっと試しに石を投げてみて」
「は、はい。石ですね」
リーシェは「このへん」と言うソラの指示に従い、ピンポン玉ほどの石ころを投げつけた。
――――パァアアアアアアッッ!
「――っん゛ん!?」
「えっ――!?」
石ころは、瞬時に粉末と化し、さらさらと風にさらわれて行った。
……恐るべき魔術の、誕生の瞬間であった。
「……それは、人体にも効くのか?」
定期カンファレンスにて、リーシェの発表を聞いたネガロが質問をぶつける。
「証明実験は怖くてできませんが……今までの僕の研究が正しければ、人体には効かないと思います。しかし……逆を言えば、体内魔力を持たない物であれば、何にでも効くということです」
「はっはは……まさしく、“攻撃は最大の防御”だな」
「ええ。この発想はありませんでした。まさかの結果です」
ソラは賞賛の視線をリーシェに送る。
リーシェははにかんで、ぺこりとお辞儀をした。
「……おめでとう、リーシェ。絶対防御魔術の課題は、これで修了だ。リーシェには色々と無理を言ってしまったけれど、それを跳ね除けて大きな成長を見せてくれたことを、僕は誇りに思う」
「ありがとうございます、兄さん」
真摯なソラの言葉を受けて、感謝を口にするリーシェの目には、薄らと涙が浮かんでいた。
実験が上手く行かず、辛い日々もあった。ソラの期待に応えよう、ソラの役に立とう、その一心で一生懸命に頑張ってきたリーシェの努力が、報われた瞬間であった。
「ありがとうございます」
絶対防御魔術は、これで完成ではない。しかし、研究としては終着点に辿り着いたと言って良いだろう。
良き研究を育めるこの環境に、人々に、輝かしき未来に、リーシェはもう一度心から感謝を述べた。
「こう、なんつーか……ガッ! って感じだよ。ガッ!」
「ガっ……!」
「ちげーよ、こう……ゴッ! っていうか、あれ……グッ? ……うーん?」
昼下がりの庭にて、システィとソラは身体強化魔術の特訓を行っていた。
とは言っても、壊滅的に説明が下手なシスティから、何とかそのコツを掴もうと、ソラが必死こいて勉強している状況である。
「……システィ、なんか特徴的な感覚みたいなのってないの?」
ソラは何度も何度もアプローチを変えながら、システィが言語化し易いように誘導しているのだが、如何せんシスティに語彙がないため上手く行かない。
「あー、そう! 感覚な! 第六感? ってやつだよ。うん」
「その第六感をどうやって働かせてんのかが気になるんだけど……あ、そっか、感覚なら意識しないで当然かぁ……」
疲れからか、頭が働かないソラ。
システィは、おもむろに1トンはあろうかという岩を軽々と持ち上げて、5メートル先の地面に放り投げた。ドシンと、土を通じて足元が揺れる。今やこのように、呼吸の如く身体強化魔術を可能にしているのだ。
「……はぁ、体はこんなに動くのによォ……説明は全然できねー。すまん」
申し訳なさそうに項垂れて、そう言った。
「いや、しょうがないよ。もしかしたら、システィだけにしかできない魔術なのかもしれないし……地道に情報を集めていこうかな」
ソラも半ば諦めかけていたようで、「近道は考えないことにする」と言って、微笑んだ。
……こうして、システィの研究は幕を閉じた。
身体強化魔術の実現に成功、しかし、その機序は未だ不明――なんとも言い難い結果となった。
「さて、本日ですが……自信作です」
ある日のカンファレンスにて、ソラはそう前置きした。
場の空気が、どっと熱くなる。
「表題は、『魔力を用いた通信』と『魔力テレポーテーション』の二本立てです。いずれもまだ実験段階ですが、通信に関してはほぼ実用可能段階まで来ています」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ(←空気の重みが増す音)
「つ、通信って言ったかい? それは、手紙のようなものか?」
ネガロが、堪らず質問する。勿論、この世界では電話という概念は存在しないので、通信という単語を聞いたならば混乱するに決まっていた。
「いえ、リアルタイム通信です。ディレイはコンマ何秒程度ですが、あります。距離が離れれば、もしかすると1秒2秒と伸びてくるかもしれません」
皆、ぽかんと口を開けて、ソラの話を聞いていた。
「…………え、ちょっと待て。理解できない。もし私が間違っていたら言ってくれ」
「はい」
「離れた2つの場所で、たった2秒で通信できるというのか?」
「あ、2つの場所に限らず、6つくらいなら同時に通信できます」
「 」
ネガロの顎がズーンと下に落っこちた。よほど衝撃的だったようだ。
ソラはその表情を見て、少しだけ嬉しそうに笑ったのち、持参した黒い箱を取り出した。
「それでは、実演しますね。先ずは、この箱に僕の魔力を“固定“します。現状、魔力の固定維持は30分が限界なので……ここが改良余地の一つと考えています」
床に置かれた箱は、側面に大きな丸い穴が空いている。ソラはこれをスピーカー代わりにするつもりらしい。
「じゃあ、僕は一旦この部屋を出ます。そして、何か喋るので、聞こえたら返事をしてください」
そう言って、部屋を出た。
リーシェは期待と緊張の面持ちで、ネガロは半信半疑といった感じでソラを見送った。ミトはソラが出て行ってしまったことで膝の上から下ろされ、不満げであった。システィはなんのこっちゃ分かっていない様子である。
……そして、1分後。
『――もしもし、聞こえますか? 僕は今一階にいます』
「!」
カンファレンスルームに、突如ソラの声が響いた。
その場にいた4人全員がビクッと体を跳ねさせて驚き、黒い箱の方を向いた。
『うーん、そうだなぁ……じゃ、リーシェ。好きな食べ物を教えて?』
「えっ、へっ!? わ、私ですか!?」
急に指名されたリーシェは、わたわたと焦った。
「ええっと……」
視線を彷徨わせ、どうすべきか迷い、右往左往し、最終的に箱の前に正座をし、穴に顔を近づけて、こう言った。
「……や、ヤングハンバーグ……です?」
これで合っているのかしら……と不安げな様子である。すると、
『お~、僕も好きだよ。じゃあ今日の夕食は、ヤングハンバーグ御膳にしよう』
ソラから返事が返ってきた。
「つ、通じているッ!?」
ネガロは思わずそう叫び、椅子を倒しながら立ち上がった。
『はーい、通じてますよ。長距離の実験はしてないので分からないですが、一階と二階、つまりこれだけの障害物があっても、問題なく通信できます』
「なんということだ……!」
ネガロのグルグル眼鏡にヒビが入った(ような気がした)。それほどの衝撃であった。
『それじゃあ、戻りますね……っと』
「はい、ただいま戻りました」
ソラは通信しながら階段を上っていたようで、通信を切った瞬間にカンファレンスルームのドアを開けた。
「かっ……革命だ! ソラ君! これはヤバい! マジで半端ないぞッ!!」
と同時に、大興奮のネガロに掴みかかられた。
「いやあ、まだまだ穴だらけですよ……まず、これはかなり魔力を消費しますから、本格的な実用化は厳しいです。加えて、僕からしか発信できないという点が問題です。改良余地は山ほどありますよ」
ソラは、眼鏡を曇らせながら迫るネガロを優しく引き剥がしながら、淡々と語った。
「それでも、これは凄い! 有り得ない! 私の常識がどこかに吹っ飛んでいった……!」
ネガロは大げさなジェスチャーで天を仰ぐと、ぽてっと椅子に座り、そのまま放心した。
1876年の地球において、フィラデルフィア万国博覧会にてアレクサンダー・グラハム・ベルが発表した『電話機』に初めて触れた科学者は、このようにショックを受けたかもしれない。
――しかし、今回のソラの発表は、ここからが本番であった。
「では次に、魔力テレポーテーションの発表に移ります」
ソラは円卓の席に戻ると、そう切り出した。
ネガロはその言葉を聞いて、跳ね起きた。
「まずは、研究背景ですが……“量子”の軽い解説から始めます。これはリーシェにも教えてない分野だね」
リーシェが、ゴクリと喉をならす。
「僕も全然詳しくないんだけど……量子というのは、ものすごく小さい粒のこと。水分子は水素2コと酸素1コで構成されているし、水素は原子核と電子に分けられるよね。でも、量子は、量子なんだ。例としては、電子が挙げられる。量子は、これ以上分けられないくらい小さな粒だと理解してくれればオッケー」
システィが、こっくりこっくりと船をこぎ始めた。
「で、量子にはある特徴があります。これを有名な“二重スリット実験”で説明します。一本の縦スリットの空いた板に粒子をまんべんなく当て続けると、その奥の板にはスリットの形に模様ができます。では、波を当てると、どうなるか。これは、スリット部分を抜けた波が放射状に広がって、スリット正面が濃く、端に行くほど薄いグラデーションを描くんだ」
リーシェはふむふむと頷いだ。
「じゃあ、スリットを二本に増やしてみます。粒子を当てると、どうなる?」
「……二本のスリットの模様になる、だろう?」
ネガロが自信なさげに答えた。
「はい、正解です。では、波を当てると?」
「…………」
リーシェとネガロは顎に手を当てて考える。
「……しましま模様、ですか?」
リーシェが答えた。
「すごい、正解! 二本のスリットを抜けた波は、干渉し合って、縞模様を描くんだ。これを干渉縞と言う」
ソラはリーシェを拍手して褒め称えた。リーシェは嬉しそうに、しかし恥ずかしそうに赤面している。
「じゃあ、次は量子、つまり電子で試してみる。一本のスリットだと、どうなる?」
「電子は粒と言っていたな。だから、スリット通りの模様だ」
「はい、正解です。では、二本のスリットだと……?」
「二本のスリット通りの模様ではないのか?」
「……実は、干渉縞が描かれます」
リーシェとネガロは「意味不明」という顔をした。
「これは、電子を一粒ずつ当てても同じ結果が得られた。つまり、電子は波の状態を持つことが分かったんだ」
粒なのに波――理解しづらいことこの上ない。
「でもね、これはおかしなことなんだ。一個ずつ当てても干渉縞を描くということは、一個の粒がスリットの手前で二個に分かれて、両方のスリットを通り抜けて、また一個に戻っているというような現象が起こっているということ。想像しづらいし、おかしいよね。なので、ある科学者は、二重スリットの付近に観測装置を設けて、電子がどちらのスリットを通り抜けるか観測しようとしたんだ……どうなったと思う?」
ソラが問う。
どうなった、とは、どういうことか。リーシェとネガロは考える。
「……やはり、先ほど兄さんが仰ったように、電子が直前で分かれて同時に通り抜けていたのでしょうか?」
「そうじゃないと、干渉縞は描かれないもんね。でも、結果は驚くべきものだった……なんと、描かれたのは干渉縞ではなくて、二本のスリット通りの模様だったんだ」
「……?」
「え……?」
「ただ“観測”しただけで、電子は波から粒になったんだ」
「…………?」
「……はい?」
傾聴する二人は、理解できない様子である。
「これは諸説あって、未だに議論が絶えない話なんだけど……僕は電子に干渉しない観測方法でも電子の振る舞いが変わると信じてる派ね。だから、考えた。もしかしたら、魔粒子には量子のような特徴があるんじゃないかって。もしくは、魔粒子が量子に変化できるんじゃないか、とも」
つまり――と、ジェスチャーを加えて、説明に熱が入り始めるソラ。
「さっきの二重スリット実験で得られた結果のような、量子の二面性――波と粒の状態を併せ持つという“考え方”を、魔力に応用する。これが、僕のあたためていた研究の背景です」
リーシェは顎に手を、ネガロは腕を組んで、首を傾げた。
確かに、ソラがより簡単で分かり易い説明を心がけたことで、抽象的になりすぎて逆に理解しづらくなってしまっていた。しかしそうでなかったとしても、理解しづらい内容に変わりはないのだが。
「まあ……その、細かいことは抜きにして、実演しますね」
ソラは面倒くさくなり、説明を放棄して、準備に移行した。
用いるのは、先程の黒い箱のようだ。
「この中は空です。で、ここに……“魔力量子”を二つ作製し、その片方を入れて固定維持します。この二つは魔力エンタングルメント、即ち“魔力もつれ”という状態です。このエンタングルした魔力のペアは、同期しています」
箱を穴を横にして床に置き、離れる。
そして、ズボンのポケットから、銀貨を取り出した。
「今から僕は、この銀貨を僕の持つ方の魔力量子にくっつけながら“観測”します。その結果を元に、固定維持されている箱の中の魔力量子に操作を加えるんですが……ここが問題点の一つで、魔力を操る際は目視しなければなりません。なので、目視できる範囲で、これを行います」
ソラは掌の上に銀貨を置き、確認する。
「たった今、箱の中の魔力量子が銀貨を含む状態をとる可能性を持ちました。それを、僕の持つ魔力量子の状態に準じて確定させます」
コトン――と、箱の中で音が鳴った。
「……ま、まさか」
ネガロはソラの手の上を見る。そこにあったはずの銀貨は、なくなっていた。
「この一連の作業をすることで、目視できる範囲に設置した魔力量子の場所までならば、何処へでも物質をテレポーテーションさせることができます。僕は最初はコピーを作れるものだと思っていて、魔力量子レプリケートと呼んで実験していたのですが、魔力の実現力が働いているのか、何故か大元の物質が消えるんです。理由は考えましたが、はっきりとは分かっていません。改良点としましては、テレポ先の目視の問題を何とかしたいのと、消費魔力が膨大ということと、作業のステップが多いことの三点ですね」
ソラは語りながら、箱に近付く。
箱をひっくり返すと――中から銀貨が一枚こぼれ落ちた。
「か、勘弁してくれっ……!」
ネガロは額に手を当てて、後ろに仰け反り、脱力した。
リーシェは、口を開けたまま硬直していた。
システィは本格的に眠っていた。
ミトは全く意に介さず、紙に数式を書き殴っていた。
「なあ、ソラってよ、何でもできるけどさぁ、専門分野とかあるのか?」
カンファレンス後、目が覚めたシスティがソラに質問した。
筋肉バカのレッテルを貼られてしまいそうなシスティとしては、体力という専門分野で勝負をしている節があり、一意専心に興味が湧いていた。それが意中の人のことともなれば、気になるところである。
「それは、私も気になります」
すると、リーシェも食いついてきた。ソラに科学全般を教えてもらっているリーシェとしても、ソラの専門分野は気になるところだろう。
「あー、専門分野かぁ……」
ソラは質問を受けると、懐かしむような表情を浮かべた。
「僕の専攻は“再生医療科学”だよ。肝臓とか、皮膚とかについて研究をしてた」
「へぇー、医療ねぇ…………ん゛!?」
「にっ、ににに、兄さんは、お医者様だったのですか!?」
驚く二人。この世界での医者の地位は、それほどに高い。そして何より、希少な存在であった。
「え!? いやいや、違う! ただ研究をしてたってだけで、医者じゃないよ?」
全力で否定したソラだが、二人は聞く耳を持たなかった。むしろ、それを謙遜だと思っているようだ。出会ってから今までのソラの行いは、二人をそれだけ納得させる材料として十分だった。
システィは「やっぱすげぇなぁ」と感心、リーシェに至ってはソラをキラキラした目で見つめていた。
ソラは「違うからね」と重ねて否定するも、最早それは逆効果であった。
紙に数式を書き連ねているミトが、あまりに集中していたためかよだれを垂らしそうだったので、ハンカチを持って離脱したソラ。見送る二人の目は、さながら高名な医学博士を見るようであった。
「――できたッ!! ついにできたぞおおおおおおッッ!!」
ネガロの研究室にて、施設全体に響き渡りそうなほどの絶叫がこだました。
「んふっ……ぐっふっふっふ……アーっはっはっはっはーッ!!」
急に叫びだしたかと思いきや、今度は大笑いしだした。
数枚の紙の束を掲げると、「くふふぅ~」と言って、可笑しな笑みを浮かべる。
それは――暗号表。
予言魔術の巻物に記された暗号の意味を推測し、分かり得た全てを言語化したのだ。
「しかし……凄い。凄すぎる。予言魔術……恐ろしい!」
変なテンションをそのままに、さながら演劇のような独り言。
わなわなと震えながら、机の上に広げていた巻物本体を丸める。
「私は……古の秘術に、世界を揺り動かす何かに、到達しようとしている……!」
眼鏡の下の目には、深いクマが刻まれていた。
「一体……何に“アクセス”しているというんだ……」
ネガロは、何とも意味深長な発言を残し、椅子に倒れこむようにもたれ掛かると、そのまま意識を手放した。
それは、予言が指し示す日の、一週間前のことであった。
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