10 恋する乙女?
おいおい!
おいおいおい!
なんだよどうしちまったんだよあたし!
たかだか男に、せ、背負われただけだろうがよっ。
「ふぅ……はぁ……」
走ったからか? まだ顔が熱ぃぜ。
しっかし、今日はしくったな。
……あいつ、ソラっつったか。
突然でテンパっちまったけど、礼を言わねぇとな。
それにしてもあいつの……魔術、か? ありゃ凄かったな。
あんな魔術が使えりゃ、あたしも……。
やっと家か。
クソッ、やっぱ体が痛ぇ。
今日はもう早く寝るか。
……。
…………。
………………。
あいつ優しかったなぁ……。
……し、システィさん、か。
わ、悪くねぇな……。
「――――っ!」
な、なに考えてんだあたしはぁぁああ!!
―――
「おい、あれ……」
「うわっ、”鬼神”だよ」
「マジだ、俺初めて見たわ。怖ぇー……」
「すげぇ眼光。ありゃ何人も殺ってる目だよな……」
早朝。
ハンターズギルドの一角、システィ・リンプトファートはある人物を待っていた。
Aランクハンターのシスティは、ギルド内での地位を確たるものとしている。
その要因は生まれ持った鋭い目と、その気性の荒さ、そして何より剣術の強さである。
ハンター達は畏敬の念を込め、彼女を”鬼神”と呼んでいた。
腕を組み苛つくシスティ。
ギルド内の雰囲気は最悪だった。
「……なあ。鬼神苛ついてないか?」
「確かに。こりゃ早いとこ退散した方が身の為かもな……」
「いつ暴れ出すかわかんないぜ」
ピリピリとした緊張感が漂っていた。
するとそこで、ギルドのドアが開いた。
空が入って来たのだ。
「あっ」
「あ」
空とシスティはほぼ同時にお互いを見つける。
空は完全に目が合ってしまったシスティに、やむなく近づいて行った。
「おいおいおいっ、あいつ鬼神に自分から近づきやがったぜっ」
「命知らずだな……」
部外者から見ればそれは正にガンのくれ合い飛ばし合いだった。
「お、お早う御座います。システィさん」
空がそう挨拶すると、システィは少し顔を赤らめる。
「テメェ……ち、ちょっと面貸せ」
そう言うと、ずんずんと歩いてギルドから外に出て行った。
空は慌ててシスティに付いて行く。
「……すげえ応酬だったな」
「ああ、あの男なかなか度胸あるな……」
「鬼神相手に引けをとってなかったぜ」
「まあこの後はボコボコにされてお陀仏だろうけどな。くわばらくわばら……」
ギルド内では妙な誤解が生まれていた。
(…………気まずいっ)
空はシスティに付いて行くと、そのまま食事処に入った。
席について適当に注文したまではいいのだが、それからシスティが一言も喋らない。
料理が来ても何も喋らないシスティに対して、空は「美味しいですね」「よく来るんですか?」など当たり障りのない質問をしてみたのだが、全てコクリと頷くだけであった。
料理を食べ終わると、食後のコーヒーが出てきた。
空は、こっちの世界にもコーヒーがあるんだな、と感心して飲んでいたが、味は分かったもんではなかった。何故ならここでもやはりシスティは喋らないからだ。
(会話がない……会話がなさすぎる……)
悩む空を尻目に、コーヒーを何故かかなりの勢いで飲み干したシスティは、がちゃりとカップを置く。
当のシスティが一番テンパっていた。
ガタンと席を立つと、空がぎりぎり聞き取れるくらいの小さい声でこう言った。
「……ぁ、ありがとよっ」
机に銀貨2枚を置くと、足早に去っていた。
「…………はい?」
一人残された空は、ぽかーんとしていた。
暫くそうしていると、一つの答えに行き着く。
(昨日のお礼、か?)
そう考えると納得がいった。
だとすると。
(怖い人だと思ってたけど……ただ不器用なだけなのかも)
空はそう思ってシスティの事を考えた。
不思議と、笑みが溢れた。
―――
言った!
言ってやった!
あたしが本気出しゃあこんなもんだぜ。
へっ、ソラの野郎、これであたしの事……。
…………いやいやいや!
なんだそれ!?
そういうことじゃないだろ!
お礼だ、お礼。昨日のお礼に食事に誘っただけだ。
何でもねぇよ、こんなの。
……。
…………。
いや、待てよ、これって……。
ここここれってデ、デ、デートか!?
デートになっちまうか!?
ち、ちょっと早まり過ぎたかもしんねぇええ!
普通デートはもっと先だろぉ……。
…………いやいやだから!!
そんなんじゃねえって!
単なるお礼だよ。うん。そうだ。
……。
…………。
今日もシスティって言ってたな……むふふ。
……っていうかやべぇ!
よくよく考えたらやべぇよ!
あたし今日全然喋ってねぇ!!
「うああああああ何やってんだあたしいいいいいいいい!」
マジ緊張したからなぁ……やっちまった……。
嫌われてないかなぁ……。
………………女々しいなあたし。
まあ、くよくよ悩んでも仕方ねぇ。
そ、ソラとはまたいずれ会えるだろ。そん時また食事とか……い、一緒に討伐なんかもしちゃったり……。
「だあああから何考えてんだって!」
駄目だ、昨日からソラの事ばっかり考えちまう……。
……これって、もしかして、こ、恋――――
「ぎゃああああああ!!!」
一日中、何か考えては叫び、を繰り返すシスティであった。
お読み頂き有難う御座います。
システィ回でした。
次回は学園入学です。
<修正(2014 6/14 20:41)>
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