第五章 アイスと冬の空
「なぁ、アイス食うか?。」
晃はアイスを梨花の方へ尽きだした。
「え、もう冬だし、いらないよ。」
「あ、そ。」
梨花が断るのは、当然だと思っていたように、梨花が言い終わった時には晃はもうアイスの蓋を開けていた。
「そう言えばこないだアイツらに逢った。こないだっつっても四日前だけどな。」
「ん?アイツらって?」
「徹と絵里だよ。」
晃、梨花、徹、絵里の四人は中学からの仲で今年でもう六年だ。
「相変わらず元気そうだった。」
「そう、良かった。」
梨花は空を見上げる。
あの頃は、クラブの帰りに四人で、よく遊びに行ったものだった。
今は、忙しくてそんな暇がない。
高校に入ればクラブはやらなかかったが、勉強の時間を取るとどうしても遊ぶことが少なくなる。
口から漏れる吐息はもう真っ白で改めて冬の寒さを思い知った。
「う〜、寒っ。」
「アイスなんか食べるからでしょ。」
「アイスはいつ食っても上手いじゃん、しゃーねーよ。」
晃はいつだって自分の好みは曲げないタイプだった。
そこに惹かれたので梨花は反論できない。
「まあ、いいけど」
「ところでさ」
「ん?」
「あそこにある黒い物ってなんだと思う?」
「え?」
晃が指さした方向には確かに黒い物があった。
「ちょい、俺行ってくるゎ」
そう言って晃は走り出した。
「ちょ、待って、私も、行く。」
梨花は、あと追って
走ったが、もう晃は、黒い物体の目の前にいた。
「これ、穴だ。」
晃が、息を切らしてたどり着いた梨花に言った。
「そう。」
梨花は見た、黒くて奥が深そうな穴を。
真っ暗で向こうが見えない。
「俺、入ってみる。」
「え、危ないよ。」
しかし晃は入ってしまった。
梨花も入ろうか躊躇し始めた時に、穴が小さくなっていく。
梨花は焦って中に入った。