第三章・暗い部屋の中で
なんで?
私が何をしたっていうの?
絵里は、家で電気も点けず一人泣いていた。
なんで?
私に好きって言ってくれたじゃない
あれは嘘だったわけ?
彼女はひたすらいない徹への疑問を繰り返す。
当然返答はない。
窓ガラスにの向こう側にある外を見ていると、窓の枠の中でまるでビデオ再生のように先程のことが思い出された。
思わず目を背ける絵里。
もう何も見るのが嫌で、彼女は必死で目をつぶる。
瞼の裏にも残像は映った。
目を開き、頭を抱える。
窓の外は闇が立ちこめていた。
何かを招き入れるかのように・・・。
絵里は、冬の冷たい夜風が彼女の髪をなで、慰めるのを心地よく感じた。
「・・・あれ?」
よく考えると風など吹くわけはない。
絵里は、泣くために窓は閉め切っていたのである。
しかし、確かに風は彼女の左の方へ抜けていっている。
右の方には窓はない。
(・・・となると)
左の方に何かある。
左の方の壁はカビが生えていた。
だが、よく見るとカビではない。
昨日、徹が吸い込まれたのと同じ穴だった。
そのことに彼女が気づいたのは、彼女の両足が吸い込まれた時だった・・・。
そして
ちょうどこの頃だった。
「絵里。必ず戻る、それまで待っててくれ。」
徹は一人、そうつぶやいた・・・。