第二章・消えた彼の謎
世の中には不可解なことがいくつかあると言われている。
絵里はちょうどそれに直面していた。
絵里は、灰色の建物を眺め続けた。
「どうして・・・。」
先程起こったことが信じられない。
先程と言っても一時間も前の話で、もう夕日で灰色の建物はオレンジのかかった色に変わっている。
「・・・!」
絵里はやっと時間の感覚を取り戻す。
「・・・。」
絵里はとりあえず家に帰ることにした。
-次の日-
絵里はいつものように、徹が迎えに来るのを待った。
だが、昨日のことは事実だったらしく徹は現れない。
「今日は一人で行くのか・・・。」
今日の絵里はいつものように元気がない。
絵里の親友の香奈はそのことに一番早く気がついた。
「どうしたの?」
「・・・なんでもない。」
香奈には絵里が話したくないように見えた。
そっとしておこう、香奈はそう思った。
学校が終わり、絵里は久しぶりに香奈と帰ることにした。
絵里と帰るのは本当に久しぶりだ。ということは徹と何かあったのだろう。だが、絵里がその話を出すまで聞かないことにしよう。と香奈が思った時だった。
「昨日、徹がね・・・」(いきなりデスカ)
「うん・・・。」
香奈はやや控えめに答える。
話し終えた彼女は、香奈を見つめた。
香奈はそれが事実と言うことは信じられなかった。
だが、これを冗談で言ったはずがない。
(一体どういう事だろうか・・・。)
二人で話し合ったところで結局結論は出なかった。
彼女たちはそれぞれの家路へ向かった。
絵里は、昨日のビルの前を通ることにした。
「・・・!」
(道路の向こう側にいるのは・・・徹・・・?)
絵里は安心したのと同時に、彼女の頭の中に今まであった不安が増大した。
あの後ろ姿はまさに徹だろう。
だが、絵里には気になる点が二つほどあった。
一つ目は、彼はそこにいるのに、何故私に会いに来てくれなかったのか。
いや、二つ目の気になる点がそれを証明しているだろう。
二つ目の気になる点は、彼の隣には見知らぬ女の後ろ姿があったのだ・・・。