火星人再襲来
20XX年10月30日。
英語圏のSNSは火星人襲来の話題で持ちきりだった。
ニューヨーク上空に、突如巨大な円盤が現れ、町を攻撃し始めたというのだ。
やがて動画がアップされると、日本人界隈でもそれが拡散し始めた。
「すごいことになってるな」
今どきは誰でもこんなハリウッド大作みたいな動画が作れちゃうんだもんな。
日本のメディアの反応は、思ったより冷淡だった。
朝の情報番組で15秒ほど動画の抜粋を流した後、
「すごいですね。今や、何でも作れちゃう時代なんですね」
「我々メディア側の人間は上がったりですねー」
なんて、気の利いたことを言ってるつもりかもしれないが、俺の感想とさして変わり映えのしないコメントを挟んで、すぐに毎年恒例になってるハロウィンのバカ騒ぎ対策の話題に移ってしまった。
俺はオーソン・ウエルズの逸話を思い出していた。
彼の作った「火星人襲来」のラジオドラマが真に迫りすぎていて、本気にした人々がパニックを起こしたという、アレだ。
騒動の規模については諸説あるらしいが。
現代人は、アレと正反対の反応を見せている。
たぶん、いま俺と同じことを考えてるやつが世界中に何千万人もいるはずだ。
というか、あの動画自体、きっとウエルズへのオマージュなんだろう。
SNSの方はさらにエスカレートして、
同型の円盤がロサンゼルス・ロンドン・パリ・ベルリン・モスクワ・北京に次々と現れてるなんて話に発展している。
東京にはなんで来ないのかと怒ってるやつもいる。
「TOKYOキタ!」
というコメントと共に、スカイツリーの上に浮かぶ円盤の動画がアップされた。
トーキョーはおおむね歓迎ムードで、ネットはちょっとしたお祭り騒ぎ。
んー、なんかもういいかなと思ってテレビを消し、会社に行く準備を始めたタイミングで玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けると、そこにタコ型の生物が立っていた。
流行りのビーズクッションくらいのデカい頭に、うねうねした足がいっぱい付いてる。
うわー…
めんどくせー…
「ワ・レ・ワ・レ・ハ・ウ・チュ・ウ・ジ・ン・ダ」
宇宙人は、俺に葉巻型の光線銃を突きつけた。
…なにこれ。
中身、どうなってんの。
俺は、タコの頭越しに玄関の外に顔を出して、辺りを確認した。
…ひとり、か。
いい根性してんなー、こいつ。
「…あんたさあ、それは流石にちょっとステレオタイプすぎっていうか、もはや昭和レトロの域よ?」
次の瞬間、宇宙人の光線銃が光った。
おわり




