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さよならの陽炎を、追いかけて  作者: 七瀬 澪
第四章 「さよならの陽炎」

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44. 巡る季節

春。


僕たちは中学生になった。


三人とも、同じ中学校だ。


クラスは違った。


僕と奏は1年A組。


結衣は1年B組。


「クラス、離れちゃったね」


入学式の後、結衣が少し寂しそうに言った。


「でも、お昼は一緒に食べようね」


奏が、優しく微笑む。


「うん!」


結衣が、明るく頷いた。


あの告白から一年以上が経っていた。


結衣は、もう涙を見せることはなくなった。


いつもの明るい結衣に戻っていた。


でも、時々、僕と奏が手を繋いでいるのを見ると、少しだけ寂しそうな顔をする。


それでも、すぐに笑顔になって、話しかけてくる。


結衣は、本当に強い子だと思った。



中学一年の夏。


僕と奏は、正式に付き合い始めた。


きっかけは、夏祭りだった。


「ねえ、廻くん」


浴衣を着た奏が、恥ずかしそうに言った。


「私たち、付き合ってるって言っていいのかな」


「え?」


「だって、いつも一緒にいるし、手も繋ぐし……でも、ちゃんと告白してないよね」


奏の頬が、赤く染まっている。


「……じゃあ、改めて」


僕は、奏の手を握った。


「奏、付き合ってください」


「……うん」


奏が、嬉しそうに微笑んだ。


「はい、喜んで」


それから、僕たちは正式に恋人になった。


学校でも、みんなが知っている。


「相沢と空乃、付き合ってるんだって」


「知ってる。小学校の時からずっと一緒だよね」


「お似合いだよね」


そんな噂が、廊下で聞こえてくる。


恥ずかしかったけれど、嬉しかった。



ある日の昼休み、僕と奏は中庭で弁当を食べていた。


結衣が、遅れてやってきた。


「ごめん、遅くなった」


「大丈夫だよ。結衣ちゃん、こっちおいで」


奏が、隣の席を指差す。


「うん」


結衣が座る。


三人で、お弁当を広げた。


「ねえねえ、二人に報告があるの」


結衣が、嬉しそうに言った。


「何?」


「私ね、美術部に入ったんだ」


「美術部?」


「うん。絵を描くのが好きだから」


結衣が、目を輝かせる。


「先輩たちも優しいし、すごく楽しいの」


「よかったね」


奏が、優しく微笑む。


「結衣ちゃん、絵上手だもんね」


「えへへ」


結衣が、照れたように笑う。


「二人は、部活入らないの?」


「私は帰宅部かな」


奏が答える。


「廻くんと一緒に帰りたいから」


「僕も帰宅部」


僕も頷いた。


結衣が、少しだけ寂しそうな顔をした。


でも、すぐに笑顔に戻った。


「そっか。じゃあ、私だけ部活だね」


「うん。でも、お昼は一緒に食べようね」


「もちろん!」


結衣が、明るく答える。


でも、その笑顔の奥に、少しだけ距離を置こうとしている気配を感じた。


無理に三人でいなくてもいい。


そう思い始めているのかもしれない。



秋になった。


文化祭の準備で、学校が賑やかになっていた。


僕たちのクラスは、お化け屋敷をやることになった。


「廻、お前は受付な」


クラス委員の男子が、僕に指示を出す。


「奏は、お化け役で」


「え、私がお化け?」


奏が、驚いた顔をする。


「だって、空乃って雰囲気あるじゃん。銀髪だし、綺麗だし」


「うーん……」


奏が困った顔をする。


でも、結局引き受けることになった。


文化祭当日。


僕は受付で、チケットを売っていた。


結衣が、B組の友達と一緒に来た。


「廻くん、お疲れ様」


「結衣ちゃん、来てくれたんだ」


「うん。奏ちゃんのお化け、見たくて」


結衣が、笑顔で言う。


「美術部の展示も見に来てね」


「もちろん」


僕は頷いた。


「後で、奏と一緒に行くよ」


「ありがとう」


結衣が、嬉しそうに笑う。


でも、その笑顔は以前より少しだけ大人びて見えた。


結衣は、成長している。


自分の居場所を、僕たち以外にも見つけ始めている。


それが、少し寂しくもあり、でも嬉しくもあった。



文化祭が終わった後、僕と奏は結衣の美術部の展示を見に行った。

「わあ、すごい」


奏が、感嘆の声を上げた。


壁には、たくさんの絵が飾られている。


風景画、人物画、抽象画。


その中に、結衣の描いた絵があった。


夕焼けの空を背景に、三人の子供が手を繋いでいる絵。


「……これ」


僕は、その絵の前で立ち止まった。


「私たちだ」


奏が、小さく呟く。


確かに、そうだった。


真ん中の少年と、その両側にいる二人の少女。


銀色の髪の少女と、茶色の髪の少女。


それは、間違いなく僕たちだった。


「結衣ちゃん……」


奏の目に、涙が浮かんでいた。


絵の下に、小さな説明文が添えられていた。


『タイトル:大切な友達』


『三人で過ごした、かけがえのない時間を描きました』


僕の胸も、熱くなった。


結衣は、僕たちのことを大切に思ってくれている。


今でも、これからも。


「……いい絵だね」


「うん」


奏が、涙を拭う。


「結衣ちゃん、ありがとうって言わなきゃ」


僕たちは、展示室を探した。


結衣は、受付のところにいた。


「結衣ちゃん」


「あ、二人とも。見てくれた?」


「うん」


奏が、結衣の手を握った。


「すごく、素敵だった」


「本当?」


「うん。大切にしてくれて、ありがとう」


「……当たり前だよ」


結衣が、少し照れたように笑う。


「だって、二人は私の大切な友達だもん」


「私たちも、結衣ちゃんは大切な友達だよ」


奏が、優しく微笑む。


三人で、笑い合った。


でも、その笑顔の中に、少しだけ切なさが混じっていた。


僕たちは、少しずつ変わっていく。


それぞれの道を歩き始めている。


でも、この絆だけは、変わらない。


そう信じたかった。



冬、クリスマスの日。


僕と奏は、二人でデートをした。


イルミネーションが綺麗な公園。


光の中を、二人で歩く。


「綺麗だね」


「うん」


奏が、光に照らされて輝いている。


銀色の髪が、イルミネーションの光を反射してキラキラしている。


「ねえ、廻くん」


「うん?」


「私、幸せだよ」


奏が、僕の腕に抱きつく。


「廻くんと一緒にいられて」


「僕もだよ」


僕は、奏を抱きしめた。


冬の夜は寒い。


でも、奏の温もりが、僕を温めてくれる。


いや、違う。


奏の体は、いつも冷たい。


でも、その冷たさが、僕には心地よかった。


「ねえ、廻くん」


「うん?」


「結衣ちゃん、最近少し遠いよね」


奏が、心配そうに言う。


「そうかな」


「うん。お昼は一緒に食べるけど、放課後はすぐ部活に行っちゃうし」


「それは、美術部が楽しいからじゃない?」


「そうかもしれないけど……」


奏が、俯く。


「なんか、私たちに気を遣ってる気がする」


「……」


僕も、そう感じていた。


結衣は、少しずつ僕たちから距離を置き始めている。


それは、僕たちのためなのかもしれない。


二人の時間を大切にしてほしい。


そう思ってくれているのかもしれない。


「でも、それは悪いことじゃないよ」


僕は、奏の頭を撫でた。


「結衣ちゃんは、自分の居場所を見つけたんだ」


「……そうだね」


奏が、小さく頷く。


「結衣ちゃん、頑張ってるもんね」


「うん」


僕たちは、また歩き出した。


光の中を、手を繋いで。


結衣のことを思いながら。



その夜、家に帰ると、スマホに結衣からメッセージが来ていた。


『二人とも、クリスマス楽しかった?』


『楽しかったよ』


僕が返信すると、すぐに返事が来た。


『よかった。私もね、美術部のみんなとクリスマス会やったの。すっごく楽しかった』


『そうなんだ。よかったね』


『うん。私、美術部に入ってよかったって思う』


『自分の好きなことができる場所があるって、幸せだね』


しばらくして、また返事が来た。


『ねえ、廻くん』


『うん?』


『私ね、二人のこと応援してる』


『ありがとう』


『だから、私のことは気にしないで』


『二人で、たくさん幸せになってね』


その言葉を読んで、胸が熱くなった。


『結衣ちゃんも、幸せになってね』


『うん。いつか、私も素敵な恋をするから』


『そのときは、僕たちに紹介してね』


『もちろん!』


スマホの画面に、笑顔のスタンプが送られてきた。


結衣は、前を向いている。


自分の幸せを、ちゃんと探している。


それが、何よりも嬉しかった。


挿絵(By みてみん)

【挿絵についてのお知らせ】

最後まで読んでいただきありがとうございます。


今回から、物語のイメージをよりお伝えできればと思い、挿絵を入れてみました。

キャラクターの表情やシーンの雰囲気が、少しでも伝われば嬉しいです。


また、これまでに公開した過去のエピソードにも、少しずつ遡って挿絵を追加していく予定です。

お時間のある時にでも、読み返してイラストを探していただけると幸いです。

これからも『さよならの陽炎を、追いかけて』をよろしくお願いいたします。


※作品の執筆がメインのため、イラストにはAI生成を使用しております。ご了承ください。

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