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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第48話 謎の卵と、ルーク先輩の視察?

「はぁ~~……つかれた……」


 どうにか森を抜け、領都へ生還した俺達はヘトヘトだった。森の浅い場所では遭遇することのない魔物と戦い、謎の祠を発見し、正体不明の“卵らしきもの”まで持ち帰ったのだから当然だ。


「それじゃあ俺たちは冒険者ギルドに寄ってから帰るね」


 ユウキくんとマリアさんは、森で倒したダークホーン・ウルフを換金しにギルドへ向かうようだ。


「うん。気をつけてね」


 彼らを見送ると、俺は一人寂しくバルトル城へ。帰宅した俺は、早速執務室に向かい、森での出来事を父上に報告することにした。


「……森に祠か」


 父上は俺の報告に顎をさする。


「はい。そして、祠の中心に置かれていたのが――これです」


 俺は布にくるんでいた“卵らしきもの”を机に置く。父上は目を細め、手にとってしばらく観察してから言った。


「……私も見たことがないな。魔物の卵か? うむ、扱いをどうするか……」


 父上も知らない様だ。となると、かなり珍しいものかも。俺は意を決して発言した。


「父上。この卵ですが――僕が育ててもいいですか?」

「む? これはそもそも生きているのか?」


 父上の疑問に、俺は“初めて触れたときに魔力を吸われた”ことを説明した。


「なるほど。だが……魔道具の可能性も捨てきれん。何より危険だ」

(うん、やっぱり反対された……!)

――しかし……俺には切り札があるのだ。


「父上。学園に持って帰れば、先生たちが調べてくれるはずです。もしかしたら、正体が判明するかも」

「……学園、か。確かに専門家が多いな。うむ……まあ、いいだろう」

――やったぁ~。


「ただし、何か分かったらすぐ知らせること。それと、危険があると判断したら即座に回収するからな」

「もちろんです!」


 こうして、謎の卵(仮)は俺の管理下に置かれることになった。


* * * * * * *


 数日後。今日はルーク先輩の希望で、“城下町の視察という名の観光”に出かける日である。メンバーは俺、ルーク先輩、アンナ、ノアくん。


「てかミナミさん。バルトル領に来てからずっと城にこもってるけど飽きないの?」


ミナミさんはまるで自分の家であるかのような、くつろいだ態度でソファに寝ころびつつ、ため息をついた。


「ふっ、甘いなレオン。私は“引きこもりのプロ”だから大丈夫なんだぞ」


 やけに胸を張る自称プロ。


「なにそのプロ?  聞いたことないけど」

「ふふんっ。良いだろう、引きこもりのプロの実力をとくと見せて――」

「いや、そんなのいいから。ほら、ミナミさんも行こ!」

「イヤだ~~!! 外は暑いから出たくない~~!!」


 こうして俺たちは、抵抗するミナミさんを半ば引きずるようにして街へと繰り出した。城下町に着くと、ルーク先輩が目を輝かせながら言った。


「お~、思ったより賑わってるっすね」


 通りでは行商人が声を張り上げ、甘い香りが風に乗って漂っていた。魔物素材で作られた宝飾品や見慣れない薬草まで並び、歩くだけでワクワクする。


「ふん。王都に比べたら大したことないぞ」


 ミナミさんはいきなり街にケンカを売る。


「お、そんな悪口言うミナミさんには、このあと行くケーキ屋さんでおごってあげないよ」

「ちょっ、レオン! それは卑怯だぞ!! う、うん……よく見たらいい街だな」


 急に手のひらを返したミナミさんに、アンナがクスクス笑う。


「うふふ。坊ちゃま、そんなにイジめてはミナミ様が可哀想ですよ」

「アンナ~! なんて優しいんだお前は!」


 そう言うなり、ミナミさんはアンナに飛びつくように抱きついた。抱きつかれたアンナは、困ったようにしつつも笑顔で受け止めている。

――ノアくんが後ろで苦笑してるぞ、ミナミさん。


「もう、現金なんだから。じゃあケーキ屋さんに行こうか」

「「やったー」」


 なぜかアンナまで一緒に喜んでいる。するとルーク先輩が言った。


「じゃあ噂のコーヒーも飲んでいきたいっすね」


 先輩は、街の人々の服装や露店をじっくり観察していたが、しっかりと俺たちの話も聞いていたようだ。

――完全に観光になってるけど、楽しんでくれてるならいいか。


* * * * * * *


「あ、レオン師匠。お久しぶりです!」


 ケーキ屋に入ると、見慣れた女の子が駆け寄ってきた。彼女の名前はフィオ。俺が“料理魔法”を教えた元孤児。今ではこの店のパティシエとして大活躍している子だ。


「うん! 久しぶりだね。元気だった?」

「はい。レオン師匠が王都に行っちゃったので……寂しかったです」

(うん……こういう素直な子は可愛いなぁ)


 久しぶりに会ったフィオは、少し背が伸びていて……なんだか大人っぽい。

しみじみと成長を感じていたところへ、ミナミさんの大声が響き渡った。


「よし。私はこのチョコレートムースケーキにするぞ!」


 するとフィオは目を輝かせ、俺のほうをチラッと見ると、顔を赤くしながら慌てて視線をそらした。


「それ、私の新作なんです! レオン師匠に、その……食べてもらいたくて……」

(うぐっ、なんだこのカワイイ生き物は! 反則だぞ!)

――そんなこと言われたら注文しないわけには……。


「そうなんだ……。じゃあ僕もそれにしようかな」


 俺の言葉にフィオは嬉しそうに厨房へと駆けていった。席に着いて待つこと数分。出てきた新作チョコレートムースケーキは、ふわっふわで口どけなめらか。最後にチョコの香りが優しく広がる。

――フィオ。腕を上げたな!


「ふぅわぁ……美味しいです……!」

「ムフフ、チョコレートのくちどけ最高だぞ」


 女子二人は完全にとろけていた。


「相変わらず美味しいな。コーヒーとの相性も抜群です」

「お~、さすが有名バリスタのコーヒー。ひと味違うっす」


 ノアくんとルーク先輩も満足げだ。


「それで先輩、バルトル領はどうでしたか?」


 俺の質問に、先輩は街並みをゆっくり眺めながら答える。


「活気があって、いい街っすね。露店の種類も豊富なので、観光客が増えればもっと賑わうと思うっす。それに、まだまだ発展の余地もあるし、自分もここで商売をするのが楽しみっす」


 お、視察っぽいコメントだ。


「卒業したら行商で来ることになるので、その時はよろしくっす!」

「おぉ、それは楽しみです!  バルトル領の未来はルーク先輩にかかってますよ!」

「ひぃ〜、プレッシャーかけないで欲しいっす」


 先輩が引きつった顔で両手をブンブン振っている。こうして、ルーク先輩との視察という名の観光は無事終了したのだった。


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