第40話 森の集落で起きた悲劇
※一部に暴力表現や残酷な描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください。
――Side:レオン視点
エリス達がベースキャンプへ帰還してから、約三時間が経過した。俺たちは相変わらず、魔物の集落をヒマそうに監視していた。するとユウキくんが不安げに声をあげる。
「ねえ、何か集落が騒がしくない?」
「確かに。魔物たちが暴れてる?」
俺も視線を集落に集中させた。そこには、体の大きなオークやオーガが暴れまわり、ゴブリンを殴り飛ばす光景があった。ゴブリンたちは、ふらふらで、立ち上がることができずにいる。
「グギャァァ……!」
「ガ、ガハッ……!」
魔物たちの叫び声が、乾いた森に響き渡る。
「何やら苦しんでないか?」
リヒト様の冷静な声に、俺たちは全員うなずく。
「確かに……毒で苦しんでるみたい……」
ユウキくんが恐る恐る口にした。
(え、毒!? 何それ、怖いんだけど……)
すると、カインくんが鋭い目で俺をにらんできた。
「よし、レオン。お前、何をしたか正直に白状しろ」
「ちょっとカインくん、いきなり僕を疑うなんてひどくない?」
「うるさい。こういう不可思議な事態の時は、大体お前が原因だろ」
「うっ……そう言われると否定しづらいけど、今回は僕じゃないよ!」
否定する俺を見て、リヒト様が優しく声をかけてくれる。
「レオン、大丈夫だ。私はわかっているからな」
「リヒト様……!」
信じてもらえたことに感動しつつ、見つめ返す。
「だから正直に言うんだ。大丈夫だ、怒らないからな」
「ちっとも大丈夫じゃないよ! 僕の感動返して!」
――全然信じてくれていなかった。
「とりあえず落ち着こう。それでレオンくん、本当に何もしてないの?」
ユウキくんの問いに、俺は数時間前に発動した魔法を思い出す。
「うん、≪アウラ・カーテン≫で集落を風の防護壁で覆って、魔物が出られないようにしただけだよ」
「お前はまたそんな大がかりな魔法を……で、どうやって維持しているんだ?」
カインくんの質問に、俺は得意げに胸を張る。
「あ、それ聞いちゃう? ふっふっふ。ちょっと改良して、発動時だけ魔力を使って、後は周囲の空気で魔法を維持できるようにしてあるんだ」
俺のドヤ顔に、ユウキくんがハッとする。
「周囲の空気……? ねぇ、もしかして集落って密閉してる?」
「もちろん! ネズミ一匹逃がさないように……しっかり密閉――あっ!」
そこで、重大なことに気づいてしまった。でも言ったら怒られる。俺は冷や汗をかきながら、目線をそらす。しかしユウキくんにあっさり看破されてしまった。
「それって、集落の中では酸欠状態になってるんじゃ……?」
「酸欠とは何だ?」
「空気が薄くなって息ができなくなる状態……かな?」
ユウキくんの説明にリヒト様が聞き返した。
「ということは、魔物たちは息ができなくて苦しんでる、ということか?」
「恐らくね」
するとカインくんは俺をにらみつける。
「やはり、お前が原因か!」
「わ、わざとじゃないよ!」
「まったく、なんというえげつない魔法だ……で、その魔法はどれくらい維持できるんだ?」
「え、多分……ずっと?」
「なぜ疑問形なんだ!」
「うえ~ん、カインくんが怒った! 改良して初めて使ったんだからしょうがないじゃん……!」
ユウキくんが間に入ってくれた。
「はいはい、落ち着いて。それで本当にずっと維持できるの? レオンくん」
「うん、周囲の空気がなくならない限りは多分ずっと……」
その言葉を聞いてリヒト様がうなずいた。
「そうか、それなら……とりあえずこのままにしておくか」
そんな会話をしている間にも、魔物たちは苦しみながら倒れていく。
「な、なんですか! この状況は!」
声に振り返ると、俺たちの背後から砂を蹴り上げる勢いでリュミナ先生が駆け寄ってきた。後方には他の先生方とエリス達も一緒だ。
「あ、リュミナ先生。こんにちは」
「はい、こんにちは……って違います! 何をしたのか説明してください! レオンくん」
やはり、リュミナ先生も真っ先に俺を疑う。
「ちょっと先生、まるで僕が何かしたみたいな言い方やめてください」
「うっ、そうですね。いきなり生徒を疑うのは良くなかったです……」
――うん、チョロい。
俺が無駄な抵抗をしていると、リヒト様があっさり暴露する。
「先生。この状況はレオンの魔法が原因です」
「やっぱり、あなたのせいじゃないですか~!」
「ひっ、落ち着いてください! ほら、他の先生や生徒が見てますよ! 本性がバレちゃいますって」
プンスカと怒るリュミナ先生は明らかに“素”が出ていた。
「本性って何ですか! オホンッ! それで何があったんですか?」
「それがですね……」
冷静になったリュミナ先生にユウキくんが説明を始めた。
「なるほど、窒息ですか。あなたはまた恐ろしい魔法を簡単に……」
「いやいや、意図したわけじゃないですよ。ただ逃げられないようにしただけで……まあ結果オーライってことで」
俺の弁明に、リュミナ先生はあきれ顔。
「はぁ……とりあえず騎士団が来るまではこのまま維持してください。数人で監視して、あとはベースキャンプに戻りましょう」
こうして、俺たちは帰還の腕輪でキャンプ地へ戻ることになった。
――いや、本当にわざとじゃないよ。だからみんな、そんなドン引きした目で見るのやめて……って、あれ? なんでエリスまで距離を取るの?




