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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第34話 勇者の剣技と、キャンプ?の準備

「キンッ、キンッ!」


 演習場に澄んだ金属音が響いた。俺は今、3クラス合同の剣術授業で、ユウキくんと真正面から剣を打ち合わせていた。


「はぁーーっ!」

「っく! なんの!」


 ユウキくんの振り下ろしを必死に受け止め、剣を弾き返す。

(はぁ、はぁ……さすが勇者様。ずっと攻撃されっぱなしなんだけど!?)


 額に汗が垂れる。反撃に転じられないまま、時間だけが過ぎていく。

「ふふ、さすがレオンくん。じゃあ――これはどうかな?」


 そう言った瞬間、ユウキくんの姿がふっとかき消え――空気が一瞬だけ揺れた。視界がそれを捉えた時にはすでに目の前――息を飲む間もない。


「……っ!?」


 驚いている俺に、容赦なく剣が振り下ろされる。


「うわっ……!」

反射で地面を蹴って後方へ飛び退き、なんとか避けきった。


「甘いっ!」

振り下ろした剣がそのまま、しなやかに切り上げに変わる。

――これは……“ツバメ返し”!


 それは“島の決闘”で名を馳せた、前世では有名な大剣豪の必殺技だった。俺は二撃目もギリギリのところでかわす。


(知ってる技だから避けられたけど……初見だったら確実に当たってたよ、これ!)


 すると斬り上げられた姿勢には“脇腹の空白”がわずかに生まれる。ほんの一瞬のスキを俺は見逃さなかった。


「もらった!!」

俺は勝ちを確信した――が。


 カンッ!


「え?」


 気づけば俺の剣は横に弾かれ、首元にはユウキくんの剣が添えられていた。


「勝負あり」

(……?? え、俺今、何されたの?)


 俺が脇腹を薙ぎ払おうと踏み込んだ瞬間、ユウキくんは後ろに飛び退きながら軽やかに一回転。その勢いを殺さず、俺の剣をはじき飛ばしたらしい。

――うん、全然見えなかった!?


「うぅ~、負けたぁ~……」

俺が地面に座り込むと、ユウキくんが優しく笑ってくれた。


「いや、俺も危なかったよ。あの技を避けるなんて、本当にすごいよ」

「……もしかして……脇腹のスキって、わざと?」


 恐る恐る聞くと、ユウキくんは頬をかきながら照れた。


「うん、まぁね。でも、あの一瞬を見逃さないとは、さすがレオンくんだね」

(負けた俺を気遣ってくれるユウキくん、優しい!)


「ありがとう……でも負けちゃったし……」

「そんなことはないぞ、レオン」


 腕を組みながら声をかけてきたのはリヒト様だった。どうやら俺たちの攻防を見ていたらしい。


「剣戟系のスキルもないのに、ユウキとあれだけ打ち合える者など滅多におらぬ。胸を張れ」

「え、そうかな……えへへへ」


 褒められてニヤける俺に、すかさずカインくんの冷たい指摘。


「リヒト様。レオンを甘やかしすぎです。負けは負けです」

「うわぁ~ん。カインくんがイジメる! カインくんも僕をもっと甘やかしてよ!」

「え~い、泣くな、鬱陶しい……! 負けたのが嫌なら鍛錬すればいいだろう。……ほら、私も手伝ってやるから……」


「え、本当に!? ありがとう、カインくん!」

――やっぱりツンデレだよね、カインくんって。


「お、良いね。じゃあ俺も混ぜてもらおうかな」

「うむ。私も強くなりたいしな」


 ユウキくんとリヒト様まで参加してくれるようだ。


「よし! じゃあみんなで鍛錬して強くなろう!」

「「おー!」」


――あれ待って? みんなで鍛錬したら俺、一生ユウキくんに勝てないのでは……?


 そんな疑問を胸に抱いたまま、今日の剣の鍛錬は幕を閉じた。


* * * * * * *


 数日後。俺たちは再び演習場に集められていた。ガルム、グラニ、フギン――三クラスが勢揃いだ。


「皆さん。二週間後に、三クラス合同で二泊三日の野外演習を行います」


 登壇して説明しているのはアレクシス先生。


「そこで、ここにいる生徒で六人組の班を作っていただきます」

――うん、これは楽しいキャンプだね。なんか修学旅行の班決めみたいでワクワクする。


「2日間の夕飯は自分たちで調理してもらいます。食料や必要な品は班ごとに相談して用意してください。テントや寝袋、調理器具はこちらで用意しますので事前に必要なものの申請をお願いします」


 するとすぐ横から声がかかる。リヒト様だ。

「よし、レオン。俺たちと班を組むぞ」

隣ではカインくんもメモ帳を開いていた。


「あと三人必要ですが……ユウキとミナミを誘いましょうか」

「うん! あと……エリスも……誘いたいんだけど……」


 おずおずと付け加えると、二人が同時にニヤニヤと笑っている。

 ――やめて! その目!


「だろうと思ったぞ。早く誘いに行け」


 俺は急いでエリスのもとへ向かった。


「……えっと、エリス。野外演習の班なんだけど……ぼ、僕たちと組んでくれないかな?」


 俺の誘いにエリスは、ぱっと花が咲くように笑った。


「はい。もちろんです」

(良かったぁぁぁ……!)

――いや、ただ班に誘うだけなのに、なに緊張してんの、俺。


 こうして、俺たちはいつものメンバーで班を組むことになった。そして午後はそのまま、演習の準備会議に。


「はい! バーベキューがしたいです!」

満を持して俺が手を挙げる。


「落ち着け、レオン。まずは演習に必要なものを決める方が先だ」

カインくんが淡々とツッコミを入れる。


「でも食料は大事だよね。俺はカレーが食べたいな」

――分かるよユウキくん! キャンプと言ったらカレーだよね!


「ふむ。では初日はバーベキュー、二日目はバーベキューで残った肉と野菜でカレーということでどうだ?」


 リヒト様が二つの案を綺麗にまとめてくれた。天才か?


「さすがリヒト様。それは良い案ですね。では食材は、肉、野菜、米、カレースパイス、といったところでしょうか」


 カインくんが進行しながらスラスラとメモを書き込む。気が利く男すぎる。


「あ、あの……演習に必要な回復薬なども、持っていくべきかと……」

食べ物の事しか話してない男子組をよそに、エリスが控えめに提案してくれた。


「あ、そっか、演習が目的だったね! さすがエリス」

俺が素直に褒めると、エリスは少し恥ずかしそうに笑った。


「よし。では食料と回復薬だな。装備は普段使っているものがあるだろうし、各自で用意ということで。……あとは馬車か」


 カインくんがまとめたところで、それまで沈黙していたミナミさんが唐突に胸を張って答えた。


「ふっふっふ。移動手段は私に任せろ!」

――いや、なんでそんなドヤ顔?


「そうか。少々不安だが……任せたぞ、ミナミ」


 リヒト様の“わずかに眉が上がった顔”がすべてを物語っていた。


「任せておけ。我に秘策あり! なのだよ」

(絶対なんかやらかすよね、この人……)


 そんなこんなで話し合いは終わり、必要なものをすべてリストアップ。申請書も提出した。あとは、演習前日にみんなで買い出しをして、当日を迎えるだけ。うん。これは、絶対に楽しくなる予感しかしない。

――≪千客万来≫さんが、また変なトラブルを呼び寄せなければ……。



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