第30話 光と影の転移者たちとの出会い
午前中のレクリエーションが終わった。今日はここまでで、明日から本格的に授業が始まるらしい。するとリヒト様が俺に言った。
「レオン。実はお前に紹介したい者がいるんだ」
「紹介?」
「ああ、この後カフェテラスで待ち合わせをしているんだ。一緒に昼食をとりながら紹介しよう」
誰だろう。俺の知っている人……ではないか。というわけで、俺・リヒト様・カインくんの三人でカフェテラスへ向かうことにした。
カフェテラスには昼時の柔らかな風が吹き抜け、美味しそうな匂いが漂っている。そして席に着いて数分。太陽光を背に受けた“キラキラした何か”がこちらへ歩いてきた。
──いや、後光が差してるってレベルじゃないだろ。太陽のせいじゃないよね?
「はじめまして、アマミヤ・ユウキといいます。あぁ、こっちだと名前が先だっけ? 改めて──ユウキ・アマミヤです」
黒髪黒目で、俺より少し年上かな。だがそれ以上に……笑顔が眩しい。光魔法かって位まぶしい。
「は、はじめまして、レオン・フォン・バルトルです。レオンと呼んでください」
「うん! 俺のこともユウキでいいよ。いや〜、やっと会えて嬉しいよ」
「ん? 僕のこと知ってるの?」
「ああ。晩餐会の話を聞いていたんだ。リヒト様なんて、レオンくんのこと“あれは英雄だ!”ってずっと言ってるんだよ」
「うるさい。本当にそうだったんだからいいだろう」
「いやぁ~、てれるな~」
ユウキくんは本当に屈託がなくて、初対面とは思えないほど距離が近い。なんというか、一緒にいると空気が明るくなるタイプかな。
「あははは。それとカインくんからは“ちょっと変わった面白い子”とも聞いてたけど……本当だったね」
「貴様……余計なことを言うな!」
──こら、カインくん。ちょっと変わったって何だい。あとユウキくんも同意しない!
心の中でツッコミを入れていると、リヒト様がゴホンと咳ばらいをした。
「では改めて紹介しよう。こいつは≪勇者≫スキルを授かった転移者なんだ」
(おぉ〜、勇者きた〜!!)
「いや、そんな大したもんじゃないよ……。何か“勇者”ってフワッとしてて、よく分からなくない?」
──わかる! 俺も≪千客万来≫とかいう謎スキルだし!
「でも伝説になるようなスキルだし、きっとすごいんだろうね……って、えーー! 転移者なの!?」
「今気づいたんだ。そうだよ。日本って国で学生だったんだ」
(そっか……勇者の衝撃で気づかなかった)
「まぁ俺は転移してすぐ王家の方たちに保護してもらったから、結構快適だったよ」
──こんな状況なのに文句ひとつ言わないなんて……前向きでいい子だな。
「当然だ。転移者には昔からこの国の発展に協力してもらっているからな。生活の保障をするのは王家の義務だ」
穏やかに会話をしていたそのとき──ユウキくんの後ろで何かが動いた。
「……ん? 誰かいる?」
「あぁ……って、あれ。なんで俺の後ろに隠れてるの? ほらほら、君も挨拶しよーよ!」
「ちょ、やめれ! これだから陽キャは! てかまぶしっ! ギャー! キラキラが多すぎる! 陰キャの私は消滅する……!」
わめきながら押し出されてきたのは、茶髪メガネの女の子だった。なんか吸血鬼みたいに光を避けてる。
「……くそっ。ユウキの後ろは死角だから隠れてたのに……ってこっち向くな! 眩しいだろ」
「死角って何!? 俺は盾じゃないよ!?」
二人のやり取りは絶妙で、妙におもしろいコンビ感があった。
(ユウキくん、ナイスなツッコミ。これは中々の逸材だ)
「こいつも転移者だ。ほれ、自己紹介しろ」
リヒト様に促されているのに、渋々感がすごい。
「うぅ……私は人見知りなんだぞ……。陽キャの光は私には強すぎる……。ってあれ? 君は眩しくない、よかった。これなら許容範囲内だ」
──ちょっと! 俺だって“顔だけはいい”って言われるんだぞ! ……顔だけって何だ顔だけって!
「えっと……はじめまして。レオン・フォン・バルトルです」
「私は転移者の──カスガ・ミナミだ。よろしくな、レオン」
さっきまでの騒ぎが嘘みたいに、落ち着いた声で挨拶してくれる。
「お、ミナミが普通に挨拶するところ初めて見たぞ」
カインくんが感心したように言う。
──いや、確かに俺、他の3人に比べたらキラキラしてないけどさ……これは喜んでいいのか?
「ミナミは≪技術創生≫というスキルを授かっていてな。王宮で変な機械を作ってるぞ」
「変とは失礼な! 私は大学で機械工学を学んでいたんだ。絶対この世界にもロボットを創ってやる。ロボットにはロマンがあるんだ!!」
「へぇ〜、ロボットか! なんか夢があるね!」
「お、さすがレオン! わかってるじゃん! いいか、ロボットというのは──」
マシンガントークが止まらない。ミナミさんは、ロボットの話になると椅子の上でピョコピョコと跳ねている。さっきまで陰キャモードだったのにこの切り替えよ。
これはあれだ、機械オタクってやつだ。そんなミナミさんのロボット談義をユウキくんは楽しそうに笑い、カインくんは何とか理解しようと真剣に頷いていた。
「……よくわからんが、楽しそうで何よりだ」
リヒト様は呆れた顔でつぶやいた。思わず笑ってしまった。この場の空気は賑やかで、それでいて不思議と落ち着く。異世界育ちの俺と、日本から来た二人。本来なら交わらなかったはずの者たちが、同じテーブルで笑っている。そんな状況が、なんだか少しだけ胸を温かくした。
──うん。こんな出会いをくれるなら、≪千客万来≫さんに感謝だ。次も穏やかコースでお願いします。




