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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第29話 懐かしい再会と、予想外の再会

 入学式も終わり、俺たちはぞろぞろと教室へ移動した。案内されたのは──大学の講義室みたいな場所だった。階段状の席に、前方には魔導式ホワイトボード。椅子も座り心地が良くて、さすが貴族学園という感じだ。因みに席は自由に座っていいとのこと。


「レオン。こっちだ」

俺が何処に座るか思案していると、そこには俺に手を振る見知った顔があった。


「リヒト殿下じゃないですか。同じクラスだったんですね」

「あぁ。六年ぶりか。久しぶりだな」

「はい。ご無沙汰してます」


 俺が丁寧に答えると、王子が不満げに眉をひそめた。


「どうでもいいが、そんなかしこまった話し方はやめろ。同級生なんだし、殿下も不要だ」

「えっ、そうですか? じゃあリヒト様で……というか何か丸くなりました?」

「様もいらんのだが……まあいい。しかし丸くか? むしろ鍛錬のお陰で痩せたと言われるんだが……」


 ふ、と以前より柔らかく笑う。なんだろう。丸くなったというか……雰囲気が穏やかになってる? 晩餐会で会った昔の“わがまま王子”を知っている身からすると、その変化はすごく大きかった。


「いや、体型じゃなくて雰囲気なんですが……」

──人って成長するんだなぁ。しみじみ。


「えっと、それでお隣が……」


 リヒト様の横に座っている少年に視線を向ける。こちらも晩餐会でも会っている。確か名前は……。


「えーと、昔近所に住んでたユウタくん!」

「うん、久しぶり……って違うわ! それ7年前リヒト様に言った、空想上の友達の名前だろ!」


 ツッコミが高速で飛んできた。


「あ、よく覚えてたね、カインくん。久しぶり」

「ちゃんと私の名前覚えてるじゃないか……まったく相変わらず無礼な奴だ」


 こちらは公爵家三男──カイン・フォン・ヴァルデンくん。昔はもっとツンケンしていたけど、今は少し落ち着いていて話しやすい雰囲気になっている。


(カインくんもなんか優しくなった?)

「はっはっは。相変わらずレオンは面白いな。さあ、座れ。隣が空いているだろう」


 うん、二人とも良い子に育ってくれてうれしいよ。これなら学園生活も楽しくなりそうだ。そんな俺たちのやり取りに、教室がざわざわしはじめる。


(そうだよね。“有名人二人と仲良くしてるあいつ誰だ!?”ってなるよね~。いや〜注目されるのも大変だなぁ)


 気分が良くなって周囲の声に耳を傾けてみた。


『なんだあの無礼な態度は……』

『私のカイン様に馴れ馴れしく……』


――あ、違った。これは炎上案件の方だ。


(こわっ……! そりゃ、リヒト様もカインくんも、超絶美少年なんだから人気者だよなぁ。《王都の二大美形》なんてね。……うん、ファンに睨まれないよう態度には気を付けよ)


 無用な火種を避けるためにも、俺は目立たないよう静かにリヒト様の隣の席に腰を下ろした。その後も三人で七年間の思い出を語っていると──。


 ガラッ。


 ようやく教室の扉が開いた。静まり返る空気の中入ってきた人物は……。


「アレクシス先生?!」

「レオンくん。お静かに」

――怒られてしまった。いや、そうじゃない。何で先生がここに?


 教室に入ってきた人物は俺の座学の家庭教師だったアレクシス先生だった。


「アレクシス・ハートマンと申します。これからこの【グラニ】クラスの担任を務めさせて頂きます」


(アレクシス先生が担任? いや、それより……いつの間に学園に戻って来てたんだ?)


 衝撃の事実に脳内がしばしフリーズした。思い返せば、バルトル領で別れたとき、先生はやけにあっさりしていた。


「では、レオン様。短い間でしたが、楽しかったです」

そう言った先生は、いつも通り爽やかに手を振っただけだった。


(え? 結構長い間教えてもらってたのに、あっさりしすぎじゃない? もしかして俺、嫌われてた?)

――本気で数日悩んで、へこんだのに。


(ってことは、あの人も? ……いや、考えるのは後にしよう)


 そんなモヤモヤを抱えつつも、アレクシス先生が話始めたので耳を傾ける。

「では諸君。まずは今後の授業の進め方について説明しよう」


 先生の声音は家庭教師のときと変わらず落ち着いていて、不思議と聞きやすい。


「一年次と二年次は、必修科目のみになります。魔法理論、剣術、マナー、歴史、政治、数学など……基礎を固める期間と考えてください」


 ふむふむ。まぁこの辺は既に学習済みだし楽勝だな!

――って油断してると後で地獄を見るやつじゃないよね?


「三年・四年になると、必修に加えて選択科目が増えます。剣技、魔法、魔道具技術、領地運営など……自分の進路や興味に合わせ、時間割を各自で組むことになります」


 ほう……普通に大学っぽい。

(選択か、なにを学ぼうかな……領地運営かな? 魔法や魔道具技術も捨てがたいか……)


「補足しておきますと、出席日数も単位取得に必要になります。なのであまり授業を休まないようにしてくださいね」

(あ、そうなんだ……)


 よく異世界転生もので見る“飛び級”や“圧倒的実力で卒業”というお約束のショートカットはここには無いらしい。


「秋には学園祭、冬にはクラス対抗模擬戦があります。どちらも学んだことの集大成を披露する場となります。普段からしっかりと鍛錬と学業に励んでくださいね」


 ざわっ。


 教室が微かにざわめく。

 どうやら二つともこの学園名物らしい。


(クラス対抗って、燃えるやつじゃん! 学園祭も……前世の記憶ほぼ無いけど、何かワクワクする)

――とにかく両方とも楽しみだ。


「以上が簡単な説明になります。他に質問があれば、後ほど受け付けます。まずはこの教室に慣れ、周囲の仲間を知るところから始めてみて下さい」


 アレクシス先生がそう締めくくると、教室がほっとしたように息をついた。俺はというと──。


(……アレクシス先生が担任か。まさかの展開すぎるけど、なんか安心したかも)


 胸の中のモヤモヤが、少しだけ溶けていくのを感じたのだった。



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