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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第28話 珈琲ブームと、衝撃の順位発表

 季節は春。俺は今、王都の貴族学園の学園寮にいた。王都に到着して数日。手続きも済ませ、真新しい制服と寮室の鍵を受け取り、そのまま入寮という流れである。そして俺が与えられたのは――なんと一人部屋。


 平民は二人部屋って聞いたけど……、“身分差なし”とは? どこからどう見ても差別してるけど! ……まあ、俺も貴族枠だから文句は言えないんだけどさ。

――うん、世の中なんてそんなものだよね。


 そういえば、前回王都に来たのは、もう半年も前になるのか。あのときは“母上の悪だくみ”…もとい、カフェ計画のためだったな。ふと俺は、少し前にバルトル領にオープンしたケーキ&カフェ店のことを思い出した。


* * * * * * *


 オープンから数日、店内は人でいっぱいだった。


「すごいお客さんの数ですね、母上」

「ふふふ、もちろんです。私たち三人で進めた計画です。失敗はありえません」

「そうですね、奥様。成功は確約されていたも同然です」

「まぁ、天才の私が手伝ったのです。結果は見えていましたとも」


 母上、アンナ、リュミナ先生。三人の美女が並んで胸を張っている光景は微笑ましいのだが──動機が“甘いものを好きなだけ食べたい”という欲望全開なのはどうなんだろう。


(おかしいな。カフェの発案者は俺なのに……全部三人の手柄みたいになってるのはどういうことだ? ……まぁいいんだけど……)


 店内に足を踏み入れると、ショーケースには色とりどりのスイーツがずらりと並んでいた。ベリーのタルト、ふわふわのショートケーキ、──見ているだけで幸せになれる。値段は少し高めだが、“自分へのご褒美”や“家族へのお土産”として人気らしい。


 そして今、バルトル領で大ブームなのが──リアムのコーヒーである。出勤前のビジネスマンや午後のティータイムなど、老若男女問わず「ちょっと一杯」が流行っているらしい。


「トール・アイスラテ・ツーパーセント・エクストラミルク・クワッド・キャラメルソース……」


 リュミナ先生がさっそく注文しているが、あれ本当に飲み物の名前?  呪文じゃなくて?


「これは私おすすめのカスタマイズなんです。レオン様もご自分の好みに合わせて注文できますよ」

「そ、そうなんですね……」


 言われてカウンターに向かったものの、前世の“マーメードのコーヒーショップ”のトラウマが蘇る。


 「……えっと、……アイスコーヒー……でお願いします」


 うん。やっぱ無理。あんな長い呪文をかっこよく言える気がしない。

(前世でもあの長い呪文が恥ずかしくって……)

──今わかった。俺には華麗に注文するなんて無縁のようだ。


(いや、いつかはリュミナ先生みたいに、こなれてる感を出して注文してみたいんだけどさ……)


 そんな店内には甘いケーキの香りと、コーヒーのほろ苦さが広がり……そして笑顔の客ばかり。母上たち三人は終始ドヤ顔だったが、まあ……これは確かに成功かな。こうしてバルトル領に、新しい文化が生まれようとしていた。


* * * * * * *


 そんなカフェの光景を思い出しながら、俺は学園寮のベッドに寝転がり、明日への期待と不安に胸を躍らせていた。


(さて、明日は入学式。そして……入学試験の結果発表とクラス分けだ!)


 いや~、緊張するなぁ! 別に期待してるわけじゃないよ?

(…………でも1位だったらどうしよう)


 新入生代表の挨拶とか考えといた方がいいかな? 「えー、本日はお日柄もよく」とか? いや違うか。というか、さすがに代表はリヒト殿下か。だって王族だし、絵になるし、オーラあるし、俺とは違うし……。


 そんな妄想を延々と垂れ流した結果、俺は遠足前の小学生みたいにワクワクしてしまい中々寝付けなかった。


翌日。やってきました、順位発表会! いや入学式か。講堂前――正確には順位発表の掲示板前には、新入生がぎゅうぎゅうに集まっていた。俺は人込みをかき分け、ボードの前へと陣取った。


(さて、1位は……?)


【1位 リヒト・フォン・アルトリウス】


「あ、うん。そうですよね」


 知ってた。王族だもんね、そりゃ優秀だよ。そもそも俺が1位なわけないじゃん、はははは……。よし、気を取り直して……俺はどこだ?


(ここは謙虚に3位あたりかな? なんて……)


……

…………

…………………


【7位 レオン・フォン・バルトル】


(…………え、誰? 俺?)

 俺は目をこすった。


【7位 レオン・フォン・バルトル】


「7位? ……7位……レオン……バルトル……って、やっぱ俺かーー!!?」

しばらく固まってしまったが、何とか再起動できた。


(うん、悪くないよ? むしろすごく良い! 新入生は九十人くらいいるし、十分上位……なんだけど……)


 いやいやいや。俺、転生者だよ? もうちょっとこう……“前世知識で異世界無双コース”みたいなのは無かったのかな? てか、なんで中途半端に7位なんだよ!?

――神様、脚本間違ってない?報告したいんだけど、サポート窓口はどこですか?


 納得がいかない俺に、さらなる追撃がやってきた。

(はぁ~、嘆いていてもしょうがないか、それで俺のクラスは……)


 掲示板を見ると、【グラニ】、【ガルム】、【フギン】の3クラスの名前が。そして俺のクラスは【グラニ】だった。


(ん、【グラニ】? SとかAじゃなんだ。 え……特待生クラスは?)


 後で聞いたところによると、学園最強の「選抜クラス」なんて存在しなかった。そして入学試験は、単に3クラスの実力が均等になるよう調整するため。学園祭や武闘祭などクラス対抗で行事があるから、戦力を均等にしないと盛り上がらないらしい。

――そりゃそうか。


 しかし今の俺にはそんなことなど知る由もない。

(えぇ~、どういう事? 誰か教えて~!)


 混乱した頭のまま講堂へ向かった俺は、式の内容がほとんど入ってこなかった。王国の偉い人の挨拶とか、建学の理念とか、校長先生のありがたい話とか……全部右から左へ素通り。


(7位、7位、7位……脳内スロットで大当たりが出ちゃった! あと、クラスの名前【グラニ】ってなに。いや、ちょっとカッコいいけど……)


 残念ながら俺の脳内には『7位』の二文字と【グラニ】しか残っていなかった。こうして俺の期待と不安と若干のショックに満ちた、学園生活の幕は上がったのであった。


(はぁ~、転生者なんだからもっと上位でもいいじゃん。頑張れよ、俺……)


――いや、『7位』だろうと【グラニ】だろうと、やるしかないよな。よし、異世界学園生活のスタートだ。頑張れ、俺!


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