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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第27話 母上の“悪だくみ”と、繋がる“縁”

「それでミヤジマさん、例の件はどうなっていますか?」


 卒業試験が無事に終わり、店の片付けが始まった頃。母上が、おもむろにミヤジマさんへ話しかけた。


「はい、実はこの後ご紹介させていただこうかと……」

にこりと柔らかな笑みを浮かべるミヤジマさん。

──母上の悪だくみは……まだ続くのか。


「母上、まだ何かあるんですか?」


 俺が恐る恐る尋ねると、母上は扇子でも持ってそうな余裕の笑みを浮かべた。


「おや? カフェ計画になくてはならない要素なのですが、分からないとはレオンもまだまだですね。ねぇ、アンナちゃん」

「はい、坊ちゃまもまだまだです」


 アンナまで共犯かよ!思わずノアくんを見ると、即座に首をブンブン振られた。


「ぼ、僕は知りませんよ!」

よかった、ノアくんは俺の味方だ。


「カフェ計画に必要なもの……? あっ、もしかして食材の買い付けですか?」

「よく分かりましたね、レオン。でもただの買い付けではありませんよ」


 母上は胸を張り、どや顔で言った。


「ミヤジマさんには、バルトル領まで食材を届けてくれる商人を紹介していただいたのです」

 (……なるほど。王都まで二十日かかるんじゃ、買い付けなんて現実的じゃないもんな)


 俺が感心していると、ミヤジマさんが戻ってきた。その後ろには、品の良い男性と、緊張した様子の少年がいる。


「エレナ様。こちら、アルマレッタ商会の頭取、グレン・アルマレッタさんです」

「お初にお目にかかります。アルマレッタ商会頭取を務めております、グレンと申します」


 深々と頭を下げるその姿は、商会のトップとは思えないほど丁寧だった。


「まあ、ご丁寧に。バルトル辺境伯の妻、エレナ・フォン・バルトルです。堅苦しいのは苦手ですので、気楽にエレンとお呼びください」


 出た、母上の完璧美人スマイル。人を陥落させる殺人級の微笑みだ。母上の見た目に騙されて、いったい何人の男性が犠牲に……。


(ひっ! 睨まれた。さすが母上、カンが鋭い)

気を取り直し、俺も頭を下げる。


「レオン・フォン・バルトルです。僕のことも気安くレオンと呼んでいただけるとありがたいです」

「かしこまりました。エレン様、レオン様。この度は良き“ご縁”をいただき、ミヤジマ様には感謝しております」


(……“ご縁”!? いや、落ち着け、俺。また≪千客万来≫さん案件かと焦ってしまったが、今回は母上がつないだ“縁”だ。)


「なんのなんの。弟子たちの将来がかかっているんだ。一番信頼できる人物を紹介するのは当然だよ」


 ミヤジマさん、ほんと良い人。すると、彼は声を潜めて言った。


「実は、グレンさんのおじい様は“転移者”でして。おじい様の代から、ずっとお世話になっているんですよ」

「なんと……!」


 そのおじい様というのが、チョコレートやコーヒーをこの王国に広めた張本人らしい。“食べたいから”という理由だけで世界中を旅して探し回ったというとんでもない情熱家。


(転移者のおじいさん……あなたがいたからチョコが食べられる……ありがとう……)


思わず天井を見上げ拝んでしまったよ。

──まだご存命らしいけど……。


「それにしても、アルマレッタ商会といえば王都でも指折りの商会では? そんな商会の方が、辺境まで来てくださるのですか?」


 母上の疑問に、グレンさんの目が鋭く光る。


「もちろん、ミヤジマ様のご紹介もありますが……当方にも利がありますので」

(グレンさん、商人の目になってる!)


「なんでも、バルトル領で数年前からジャムやお酒の生産を始めたとか?」

「おや、さすがグレンさん。耳が早いですね」

「母上……何のことですか?」


 俺が小声で尋ねると、母上はさらりと答えた。


「そういえばレオンには言っていませんでしたね。ケーキのため、我が領でも果物の生産を始めたのですよ」

(いつの間に!?)


「そこで採れたイチゴやベリーを加工してジャムにしているのです」

「なるほど……ん? お酒というのは?」


 今度はアンナが説明してくれた。


「旦那様がですね、ブドウ畑を作るときに『ワイン用も作れ!』と――」

(いや父上、勢いで畑増やすのやめて……)


「てか、なんでアンナがそんなに詳しいの?」

「それは、カフェ計画は私とアンナちゃん、それにリュミナ先生が中心になって進めていたからよ」


 母上が“何か問題でも?”みたいな顔をした。


(先生もか! てかおかしい……カフェって俺の発案だったはずだよな。いつの間にか蚊帳の外なのは何故?)


「アンナも俺に教えてくれれば良かったのに」

「申し訳ありません。坊ちゃまは学園入学準備で忙しいかと……」


 学園という単語が出た瞬間、目の前の少年がビクッと反応した。俺が少年に目をやると、「紹介して!」とグレンさんに目で訴えている。


「おっと、これは紹介が遅れました。こちらは私の息子、ルーク・アルマレッタです」

「お初にお目にかかるっす、じゃなくて……かかります! ルークと申します!」

──おや?緊張してるのかな。敬語も何か変だし……。


「初めまして。レオンです。無理して敬語とか使わなくていいよ。年も近そうだし」

「レ、レオン様! 助かるっす!」


 語尾が“っす”なんだ。可愛いなこの子。


「まったく……倅は今、王都の貴族学園に通っております」

「おぉ、学園生なんですね」

「はいっす! 今二年生なので、レオン様が入学される頃には三年生っす……です」


「では僕の方が敬語使わないとですね。よろしくお願いします、ルーク先輩」

「ひえぇっ、やめてくださいっす! 貴族様に敬語使われたら緊張するっす!」


 うん。いじりがいのある先輩でよかった。その後、商会との本格的な話し合いが開始された。


・砂糖、チョコレート、コーヒー豆を定期配送

・代わりにジャム、ワイン、蜂蜜、魔物素材を買い取る

・季節の果物取引の契約


 ──母上の段取りが良すぎて、俺、何もしていない。


「さぁ、あなたたち。卒業試験と食材の買い付けの目途もつきましたので──すぐにバルトル領へ帰りますよ!」


 母上がキラキラした目で宣言する。


「カフェを作る店舗も既に用意していますからね。忙しくなりますよ」


 アンナまで笑顔で言った。

(え、店舗も……? 母上とアンナの本気が怖い)


 こうして王都観光もそこそこに、俺たちはバルトル領への帰路についた。


 今回は≪千客万来≫さんではなく、母上とアンナの“本気”に振り回されつつ、バルトル領カフェ計画と、新しい縁が、確実に動き始めていた……。

――カフェ計画……俺、なにもしてなくない?


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