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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
学園編

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第25話 再びの王都、そして入学試験へ

 王都の城壁が見えたのは、日が頭上に昇りきる少し前だった。

秋の冷たい風が街路樹を揺らし、赤と金色の葉がぱらぱらと落ちてくる。


「王都に、ついた……!」


 馬車の窓から広がる景色に、なんとなく胸が熱くなる。なにせ六年ぶりの王都だ。……いや単に、ようやく着いた安堵か、それとも久しぶりの試験に少し緊張しているのか。とにかく数日後には学園の入学試験だ。それまでにしっかり旅の疲れを癒さねば!


 王都学園――十二歳から十五歳までの四年間を過ごす全寮制の学校。貴族だけじゃなく、平民でも裕福な家の子や、五歳のスキル授与式で“良スキル”を引いた子は奨学金で入学できる。表向きは身分差はない……らしいが、まあその辺は、お察しである。


 それに、転移者たちも基本的にここに入れられて、この国のことを学ぶらしい。そのため、彼らは年上が多い。

――そりゃそうだ、いきなり平和な日本から転移してきても、剣の使い方や魔法の使い方なんてわからんだろう。


* * * * * * *


 入学試験当日。午前は座学、午後は実技。俺はまず、指定された講堂へ向かった。


 試験会場に入った瞬間、俺は思わず声を漏らした。

(これ……大学の講義室じゃん)


 座席は階段状、前方には巨大なホワイトボードの様な魔道具。転生前の懐かしい景色に、胸をざわつかせつつ席へ座る。


(落ち着け俺。座学はアレクシス先生にみっちり叩き込まれたじゃないか)

深呼吸し、問題用紙を受け取る。そして、試験開始の合図が鳴った。


――数学。

うん、余裕だね!


――語学。

地球語とこの世界の語学の二刀流。転生者特典で余裕。


――経済学。

……う、うん。まあ何とか……。アレクシス先生の困った顔が脳裏に浮かぶ。


――歴史。

あれ? “良い箱つくった”アルトリウス一世……だっけ?


 そんなこんなで、試験終了。

(えっと……うん、頑張った!)


 脳が疲労してふらふらした俺は、昼食を求めてカフェテリアへ向かった。


「お~、食券機がある! 懐かしい!」


 テンションが上がって思わず声が出る。まさか異世界で食券機を見るとは。文明すごいなアルトリウス王国。


「どれにしよう……よし、日替わりAランチ!」


 木札の食券を持って列に並ぶと、出てきたのは――カツサンド。

(うん、試験に勝つってね)


 フレンチフライとドリンクのセットだ。まるでどこかのファストフード店のようだ。


 空いてる席に座り、一人の寂しいランチタイム。

―― いやボッチは俺だけじゃないよ。


 周りもだいたい一人で食べている。王都近郊の子はすでに試験を終えてるから、今日の受験者は俺みたいな遠方の領地の子が中心なのだ。

――王都から離れると、同年代の友達って出来にくいよね。わかる、わかる。


(さあ、午後も頑張ろう……!)


午後の実技試験会場は、コロッセオのような円形闘技場だった。観客席まである。


(ここで学園祭とか武闘祭とか開催されるのかな……すご)


 まずは魔法試験。的に得意魔法をぶつけて、威力や精度を魔道具で測定するというシンプルな内容。順番を待ちながら周囲を見ると――


(うん、みんな詠唱してるね)


 そうだ、普通は詠唱するのだ。六年前の俺は、詠唱なしで魔法を使ってリュミナ先生を驚かせてしまった事を思い出していた。

――ふっふっふ、しかぁ~し! 今までの俺ではない。


 順番が回ってきた俺は、水魔法≪ウォーターボール≫を華麗に放つ。そう、しっかりと詠唱して。

(この日の為にリュミナ先生に普通の魔法もしっかり教えてもらっていたのだよ)


 魔道具が反応し、試験官が頷く。

「はい、測定完了しました」


(え、終わり? はや……)

 拍子抜けしていたら――


 ドッカァァァン!


 別の列の的が爆発した。火柱まで上がっている。

(ふん、これだから素人は。力任せに魔力ぶっ放したら拡散しちゃうよ……って、誰だよ今の魔力お化け! 俺の≪ウォーターボール≫が金魚の餌みたいじゃないか)


 なんて偉そうに思っていたら、周囲がどよめいている。『なんだあの威力は……』とか『一体どこの家の子だ?』とか聞こえてきた。


(あ、あれ?おかしいな。やっぱり俺も、“ピーちゃん”使って的とか爆散した方が良かったかな……?)

――って落ち着け俺。大丈夫、リュミナ先生の教えを信じるんだ。


 気を取り直して、次は模擬戦闘試験。試験官と自分の得意武器で軽く手合わせする。もちろん俺は剣を選んだ。毎朝、地獄のような父上の鍛錬に耐えてきたからね。少しくらいは、いいところを見せられると思う。


 武舞台に立つと、試験官の先生が俺の資料を見ていた。


「おや……アルベルト閣下のご子息か。期待しているよ」

「あ、はい。よろしくお願いします」


(おぉ、さすが父上。有名人だ! でもそのせいでプレッシャー倍増……!)


 剣を構え、開始の合図。

(は、速い……!)


 一撃どころか、触れることもできなかった。

華麗すぎる剣捌きに、ただただ押されて終了。


「うん、中々よかったぞ」

(気を遣われてしまった……!)


「ありがとうございました!」


 俺は深く頭を下げた。でもいいんだ。俺はまだまだ伸びる。ここから巻き返すのだ。こうして、俺の入学試験は幕を閉じた。


――さて、結果発表は入学式までお預けか。楽しみだ。なんたって俺、“転生者”だし!

 

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