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【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
幼少期編

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第20話 若々しい祖父母と、最優先任務の危機

――その日の夕方。

王都バルトル邸の応接室で、俺はふかふかのソファに沈み込んでいた。


「レオン、よく来たな。道中寒かっただろう。まずは温かい茶でも飲みなさい」


 そう言うのはおじい様のクロード・バルトル。端正な顔立ちに厳格そうな雰囲気の“イケおじ”だ。


「さあさあ、レオンちゃん。こっちに来て」


 俺を手招きする上品で華やかな美人さんは、おばあ様のオリヴィア・バルトル。

――それにしても二人とも、50代くらいのはずなのに全然そんな歳に見えないぞ。


 おじい様は40代、おばあ様なんて30代だと言われても納得してしまう……。

(何だろう、幻覚の魔法でも使って……)


 そんなことを考えていると、突然おばあ様がジーっと俺の顔を覗き込んでくる。


「レオンちゃん……、今、何かいけないこと考えていませんでしたかぁ~」

「ひっ!」

胸がドキリとし、思わず声をあげてしまった。


「そ、そんなこと考えていませんよ。おばあ様は若くて綺麗だなって思っただけで……」

「まぁ、レオンちゃんは素直で良い子ですね」


 何とかおばあ様がご機嫌になってくれた。

――いや、素直って……おばあ様に無理やり言わされたような気もするけど。


(にしても母上といい、おばあ様といい、この世界の女性は心が読める魔法でも使えるのか?ちょっとおばあ様の若作りについて考えただけで……)


『むにゅ~』

そのとき、俺の頬に痛みが走った。


「レオンちゃん……、女性に対して年齢のことは考えてはダメよ~」

「ふぁい!」


 優しい笑顔のはずなのに、目の奥が少し怖い……。うん、おばあ様も怒らせないようにしよう。


 おばあ様に開放された俺は、早速王都のケーキ屋さんに行ってみることにした。《保存》の魔道具の効果は1か月ほどなので、お土産を買うにはまだ早い。だけどせっかく王都に来たんだから、俺だって味見したいのである。

――お土産は帰る直前に改めて買えばいいだろう。


 そんなことを考えながら、ノアくん、ガイルさん親子とお店に向かうと――

店は閉まっていて、シャッターには張り紙が貼られていた。


『社交シーズンの為、しばらくお休みいたします。

再開は社交シーズンが終わる1か月後位を予定しております。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。』


「ケーキが……買えない……?」


 視界がぐるりと揺れた。俺はその場で崩れ落ちそうになるのを、ノアくんに支えられた。


「ど、どどど、どうしよう……ノアくん、

ケーキが買えないよ! は、母上に殺される……」

「大丈夫ですよ、若様。まだ死刑宣告されたわけではありません」

「実質そうだよ!!」


 張り紙を見て動揺する俺に、ノアくんは落ち着いた声で言った。


「落ち着いてください、若様。社交シーズンが終われば再開するようですから……」


 ノアくんが思案しながら続けた。


「ですが、ケーキが買えなかったときに備えて、何か別のお土産を用意しておいた方がいいかもしれませんね」

「そ、そうだよね……さすがノアくん。頼りになる!」


 さすが、優秀な参謀・ノアくんだ。俺は現実逃避しながら、家で待つ母上たちのお土産を探しに行くのであった。


 商業区を歩くと、人々の活気が肌に伝わってきた。行き交う商人や子供たちの声が混ざり、石畳の上に足音がリズムを刻む。地方とは桁違いの規模だ。店先では色鮮やかな果物が並び、甘い匂いが風に乗って漂ってくる。


「うわぁ、やっぱ王都って本当に賑やかだな……」

と、思わず呟く俺。


「若様、人混みに気を付けてください。また誘拐されてしまいますよ」


 ノアくんは冷静に周囲を見渡しながら声をかけてくれた。


「……いやノアくん、それ冗談になってないよ!」

俺の嘆きをよそに、ガイルさんはにこやかに笑った。


「はっはっはっは。どうやらレオン様と仲良くやっているようだな、ノア」

「はい、もちろんです。父さん」

――うん、今日も親子仲が良さそうで何よりだよ。


 さて、何か良いお土産はないかな、と辺りを見回していると一番最初に目を引いたのは、コーヒーの店だ。店内に入ると、棚にはコーヒー豆が並び、焙煎された香りがふわりと漂う。


(確かリュミナ先生が前にコーヒーを飲んでいたな)


 良い香りを堪能した俺は、リュミナ先生へのお土産としてコーヒー豆を選んだ。


 次に目を向けたのは、雑貨屋のような店。


「ん、これはペンかな?」


 俺が手に取ったのは魔力を流すと自動でインクが出るという魔道具のペンだ。


(これはアレクシス先生にぴったりだな! 思いついたことをすぐメモできて便利だろう)


 俺はメモ帳も添えて、セットで購入した。


 さらに足を運んだのは、アクセサリーショップ。華やかで美しい髪留めが並ぶ中、小さな蝶々のモチーフに目が止まる。


「お、これも魔道具なんだ。見た目は可愛いのに……」


 説明書きを読むと、髪留めにはちょっとした守護の魔法がかかっているらしい。


(アンナは《アクア・パピリオ》の魔法を気に入っていたし、これならぴったりだ)

――にしても、この髪留め、どうなってるんだろう?


 興味が湧いた俺は、研究用も兼ねてもう一つ購入することにした。


 さて、残るは母上へのお土産だ。母上は高位の貴族女性で、いつも洗練されたものを身に着けている。さすがに母上に適当なものは渡せない。


(うーん……ケーキが買えなかったときの為に、何か特別感のあるものでご機嫌を取らないと……)


そう思いながら店を回っていると、

ふと目に留まったのは、高級ティーセットと茶葉の専門店だ。


「お、これなら喜んでもらえそうだ!」


 ティーセットは見た目も豪華で、茶葉の香りも素晴らしい。


(茶葉の香りで心が落ち着けば母上の怒りも和らぐ……はず!)


 早速俺は店員さんに相談しながら、母上が気に入りそうなデザインのティーセットと、香りの良い茶葉を選んだ。


(はぁ……少しだけ心が軽くなった気がするぞ)


――後はケーキが買えれば完璧だ。どうか、買えますように!


 俺は神様と≪千客万来≫さんに祈りながら商業区を後にしたのであった。






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