表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【転生】辺境伯家の長男 《千客万来》スキルに今日も振り回される  作者: jadeit
幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/31

第18話 メレンゲ地獄と、アレクシス先生の仮説

「フィオ、しっかりするんだ! 誰か魔力回復薬を……!」

「し、師匠……すみません……わ、私……もう……ダメです……がくっ」


 フィオの指先が震え、小さな竜巻がぷつんと消えた。そのまま彼女は糸が切れたように崩れ落ちる。


「フィオーーー!!」


 祭り三日目――収穫祭の最終日。


 俺たちの“スフレパンケーキ”の屋台は初日からずっと大盛況だったが、今日は特に客の行列がとんでもないことになっていた。


「坊ちゃま。遊んでないで、メレンゲの追加をお願いします」

「あ、はい。わかりました」


 アンナに一刀両断され、背筋を伸ばして返事する。

(……遊んでたわけじゃないよ! ただフィオの様子を見てただけだからね!)


 この三日間、俺はひたすらメレンゲを作っていた。そして、俺が伝授した料理魔法――小型竜巻ミキサー≪トゥルボー・ミキサー≫を使って手伝ってくれていたのが、料理スキル持ち三人組のひとり、フィオだ。


 2日目までは根性で乗り切っていたが、三日目ともなると、お客の数は桁違い。フィオの魔力は尽き、ついに限界を迎えてしまったらしい。


(くっ……フィオがダウンしてしまった。しかし――まだだ!ここで折れるわけにはいかない!)


 俺は両手を広げ、すぐさま小型竜巻を二つ形成する。その竜巻が唸りを上げ、目にも止まらぬ速さで卵白をかき混ぜ始めた。


「あ、レオン様、こちらにも追加をお願いします!」

「は、はいッ!よろこんで!」

――負けてたまるかぁぁぁあ!!


 気づけば俺はメレンゲの精霊と化し、ひたすら量産し続けた。


 そして――嵐のような三日間が終わった。

(メレンゲしか……作って……ない……記憶がない……)


 俺は放心しながら空を見上げていた。だが嬉しい知らせもあった。“スフレパンケーキ”の試作を手伝ってくれた料理スキル持ち三人組――


 フィオ、エミル、ティナを中心に、孤児院の子どもたちが「祭り以外の日も屋台を続ける」と言ってくれたのだ。

――よし……。計画としては完璧だ。


 俺は邪悪な笑顔を浮かべながらほくそ笑んだ。


(将来カフェを作るからな……!そのために、君たちにはバリバリ働いてもらうぞ……ぐふふふ)


「若様、また悪い顔してますよ……」

――ノアくんは黙っておくように!


 バルトル領にとっても孤児院にとっても得しかない、まさに理想の計画なんだから……多分。


 さて……次の問題は――。


(ケーキを作れる環境、どう整えるか……。≪千客万来≫さん、ケーキ職人とか呼んでくれないかなぁ)


 しかし、脳裏に浮かぶのは一つ――


(……でもトラブル先行型は避けたい)


そこで思い出す。数日前の、アレクシス先生との会話を。


* * * * * * *


「レオン様、少しよろしいですか?」

「ん? アレクシス先生! どうしたんですか?」


 めったに自室に来ない先生が現れたので、思わず姿勢を正した。


「はい、レオン様のスキル――≪千客万来≫について、私なりの仮説がまとまりまして。お話ししておこうかと」


(おおっ! ついに来た。≪千客万来≫さんのナゾが解明されるのか!)


 胸を躍らせる俺に、先生はいつもの落ち着いた笑みを浮かべた。


「まだ研究途中ではありますが、≪千客万来≫には“人材先行型”と“トラブル先行型”の二種類があるのではないかと思うのです」

「二種類ですか?」


 俺は先生に聞き返す。


「ええ。まず“人材先行型”――私やリュミナ君のように、多少癖はあってもレオン様が必要とする人物が集まるタイプです」

(アレクシス先生……自覚あったんだ……)


「そして“トラブル先行型”――こちらは“何かしらの問題”を抱えた人物と、その問題そのものを引き寄せる能力ではないかと」

「問題を抱えた人物……」


「はい。そして、その問題をレオン様が解決することで、その人物は“レオン様にとって有用な人材”へ成長する……。そういう仕組みなのでは、と考えています」

――孤児院の件や誘拐事件。大変だったけど結果的に人材が増えたのも事実だ。


「なるほど……たしかに、しっくりきますね。僕としては、どちらの型でも有用な人が来てくれるなら嬉しいですが……」

「ええ。それにスキルは成長しますから、今後さらに新たな能力が開花する可能性もあります」


「え、スキルって、成長するんですか?」

「はい。持ち主の成長に合わせて“最適化”されていくものなんですよ」

(まじか、知らなかった……。じゃあ≪千客万来≫にも、まだ隠された能力が……?)


* * * * * * *


(よし……。とりあえず“ケーキ職人”に出会えるように、≪千客万来≫さんに祈っておこうかな)


 夜風が吹き、祭りの灯りが少しずつ消えていく。

忙しい三日間だったけれど――とても楽しかった。


……いや、メレンゲしか覚えてないわ。


(次に来るのは“人材先行型”か……

それとも、めんどくさい“トラブル先行型”か……)


 胸の奥で、期待と不安が混じり合った感覚がふくらんでいく。


……お願いだから“人材先行型”で来てくれ。

いや、ほんとに。マジで頼むよ、≪千客万来≫さん!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ