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俺は、街を出て、高台を目指す。
谷間の街である。街道に沿って歩くだけで、道は自然、のぼり坂になり──それほどかからず、街を見下ろす高台にたどりつく。
高台は共同墓地になっており、見渡すかぎりの墓石が並んでいる。さすがに夜の墓地には誰もおらず、今から墓荒らしをする身としては都合がよい。
俺は館主に教えられたとおり、墓地の隅に向かって、そこに真新しい墓石をみつける。その墓石は、よその墓とは離れたところにあり、しかも花も飾られていない。無縁の墓なのであろう、と思う。
俺は、マリオンに頼んで、フィーリから借りた魔法のシャベルで、その墓を掘り返す。土は、まるで耕したばかりの畑のように、軽々と掘り返されて──墓穴は深く、深く、掘り下げられていく。やがて、シャベルの先に、土とは異なる感触を覚えて──俺はシャベルを置いて、土を払う。
土の下から現れたのは、昨日の女である。安らかな顔──ではない。苦しみ抜いた末に死んだとでもいうような、苦悶の表情で事切れている。
「──毒、か」
女の肌は、どす黒く変色していて、一目で自然死などではありえないことを悟る。毒殺となれば、告死の手口である。俺は確信を得て──苦悶に見開かれた女の目を閉じる。墓を埋めて、女の仇を討つことを心に誓う。
俺は街に戻り、再び娼館を訪れる。
「旦那!」
館主は、俺の顔を見るなり、うれしそうに駆け寄ってくる。
「もういらっしゃっていただけねえかと。別の娘を用立てますかい?」
館主からすれば、お気に入りの娘が死んで、へそを曲げた客、という認識であろうから、別の娘を勧めるのも理解はできる──できるのであるが、へらへらと笑う館主の様は、死んだ女をないがしろにしているようにも思えて、いくらか腹立たしくもある。
「俺の他に、一番髪の黒い女を指名していたものはいるか?」
女の叛意から、その死まで──どう考えても早すぎる。おそらく、この街に根ざした告死が存在する。彼奴も、仕事の斡旋のために、俺と同じく娼館を訪れていたはずである、と当たりをつける。
「へえ、月に一度程度ですが──」




