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GO! WEST!  作者: マリオン
眠れる森の魔女
4/10

4

「我こそは!と思うものは申し出よ!」


 私とロレッタは、魔女の頼みを聞いて──聞かずに通り過ぎてもよかったのであるが、あまりにも憐れに思えたのである──近隣の村々を練り歩き、魔女の伴侶となりたいというものを募ることにする。


「魔女っていうのは──()()()()()()()のことかい?」

 そう問いかける村人に、私は魔女の使いらしく、重々しく頷く。


 魔女は、森の外に知り合いなどいないと言っていたのであるが、実際には彼女を知るものは多かった。もちろん、男にとっては、魔女は街道を使えない原因なのであるからして、忌むべき存在なのであるが──女にとっては、森で迷っているところを助けられたもの、山菜の生えているところを教えてもらったもの、さらには赤子のための薬を処方してもらったものなどもいて、意外に評判がよいのである。とはいえ、求めるは男──いくら女の評判がよかろうと、それは解呪の役には立たない。


「意外に集まったもんだねえ」

 ロレッタの言に、うむ、と頷く。


 森の外周をぐるりとまわり、村々をめぐった結果──意外にも、数十人が名乗りをあげたのである。あれだけ魔女に怨嗟の声をあげていた男どもが、これほど集まろうとは思ってもみなかったのであるが──彼らからもれ聞こえる話からするに、魔女の財を目当てにするものがほとんどのようで──そこに真実の愛があろうとは、到底思えない。


「それでは──今から魔女の城に出発する!」

 ロレッタは、魔女の使いらしく、威勢よく宣言して。

「眠りについたものも、森の外までは連れ帰るから、安心して」

 私は彼らの不安を払拭するように続ける。


 私たちは、森に足を踏み入れる。

「のろのろ歩かないで! 駆け足で!」

 ロレッタの命に従って、彼らは駆け足でついてくる。呪いの効果に打ち勝つ可能性を少しでもあげるために、最短の距離を走破するつもりなのである。


 しかし──それでも、森の奥に進むにつれて、彼らは眠りに落ちていく。そのたびに、ロレッタの魔法で羽のごとく軽くして、糸を結んで引きずっているのであるが──もはや数が多すぎて、ほんの少し進むにも、たびたび木々に引っかかる始末で、走りにくいこと、この上ない。


「やっぱり、魔女の呪いに勝てる男なんて、いないんじゃないかなあ」

 木々にぶつかる男どもを引きずりながら、ロレッタは悲観的につぶやく。

「でも、まだ走ってる人、いるみたいだよ」

 私は後ろを、ちらと振り向いて、ロレッタに返す。

「一人でも残ってくれるといいけど」

 それでも、ロレッタの悲観を払拭するには至らない。



 私たちは、森を抜けて、茨の城にたどりつく。私とロレッタの背後は、死屍累々──もはや何人を引きずっているやら、数えるのもあきらめている。


 私たちは、眠りこける男どもを庭園の隅に放り出して、城の門に向かう。

「ただいまあ」

 ロレッタの声が届いたのであろう──魔女は茨を操って、門を開ける。

「どうであった!?」

 勢い込んで出迎える魔女に。

「全滅」

 ロレッタは首を振って応える。


「──やっぱりのう」

 魔女自身、期待はあったものの、同時にあきらめもあったのであろう──そうつぶやいて、がっくりと肩を落とす。


 しかし──そのときである。


 集団から遅れて、ようやく城にたどりついたものか──男が、肩で息をしながら、ゆっくりと門まで歩いてくる。その足取りは、決して軽くはないのであるが、それはあくまで疲れによるものであって、呪いの眠気によるものではないように思える。


「あの──私は眠ってはおりませんよ」

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