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GO! WEST!  作者: マリオン
絶影武芸帖「椿の女」
10/10

5

 俺たちは三日目の朝に街を発つ。


 街を出て、街道沿いに歩けば、緩やかなのぼり坂になる。やがて、高台にたどりついて──俺は足を止める。

「どうしたの?」

 前を行くマリオンは、俺が足を止めたことに気づいて、声をあげる。

「──知り合いのお墓?」

 俺の視線の先──花の飾られぬ無縁の墓を見て、マリオンは問いかける。

「まあ──ちょっとな」

 俺は、ロレッタの手前、曖昧に濁して答える。


「なあ、ロレッタ──花を咲かせる魔法、使えたよな?」

 街を発つ前に、花くらい買ってくるべきであった、という後悔が、俺に、らしくない提案をさせる。

「昔の女の墓とかじゃないよね?」

「──違えよ」

 ロレッタの鋭い勘に、平静を装って返す。

「この墓だけ、花が飾られてないのは──不憫だろ」

 言いながら、俺は名前も知らない女のえくぼを思い出す。


 ロレッタは、それでもなお怪訝そうに俺の顔をみつめて──ようやく納得したものか、力ある言葉を唱える。

『花よ、咲き誇れ!』

 ロレッタの力ある言葉とともに、墓石のまわりに──白い椿の花が咲く。


 しかし──()()()()()()()()()() ちょっとした花畑のようで、まるで街一番の果報ものの墓のように飾られているのである。まったく、ロレッタは加減というものを知らぬ、と俺は一人苦笑する。


 マリオンと黒鉄は、縁もゆかりもない女の墓であるというに、当然のように墓前で祈りを捧げる。まったくもって、自らを顧みて恥ずかしくなるほどの善人である。だから──というわけでもあるまいが、俺も柄にもなく、女に祈りを捧げる。


「さあ、行こうか」

 やがて、祈り終えたマリオンがそう言って、皆が歩き出しても──俺はまだ祈っている。


 安らかには眠れないかもしれないが、お前が一緒に足抜けしたいと思うほどの情を抱いていた医者も、あの世に送ってやった。そっちで仲よくするなり、復讐するなり、好きにしてくれい。


 そんな節操のない祈りに応えるように、俺の脳裏で女が笑う。えくぼのかわいらしい彼女の──その豊かな乳房を思い起こして、やっぱり抱いておけばよかったなあ、と後悔しながら──俺は皆の後を追うのであった。

「絶影武芸帖」完/次話「ロレッタの小さな冒険(仮)」

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