第87話「騎士団」
フェレ様とエレスとはここでお別れじゃ!
ワシらは王都の中のギルドに寄ったのじゃ。そこは王都の南東支部らしいのじゃ。
合計四つある王都のギルドは中央にある城から見て、南東にある南東地区から北東地区に向かい、その後北西地区で、南西地区に着くらしいのじゃ。
つまり王都もぐるりと回るということじゃな。ワシらが役員さんに話を聞いていると、ワシを探しとる人は南西地区におるらしいのじゃ。
そこは王都の中心である城への入口があり、この国の王と女王がおるらしいのじゃ。
また各大臣が王都に住んでおり、護衛の騎士が多いようじゃ。
要は貴族様の住む街というわけじゃな。ギルドにも多くの冒険者や神がおるのじゃ。勿論今までのギルドにもいっぱいおったがのう。
とはいえ、ここは段違いの広さと人の多さじゃ。巫女や禰宜が話を聞いとるのも見えるしのう。
護衛任務が特に多いようじゃ。要人警護じゃな。騎士だけでなく冒険者も志願するようじゃ。神が護衛することもあるらしく、報酬は高いようじゃ。
「俺とエレスはここで護衛任務で鍛えようかな? いいか? エレス」
「はい、フェレ様」
ここでフェレ様とは別れるのじゃ。まぁ同じ街におる間はすれ違うこともあるじゃろうがのう。
「ちょっとの間だけじゃったが楽しかったぞい! 二人共頑張っておくれよのう! さよならバイバイなのじゃ!」
手を振りフェレ様たちと別れた後、ワシらは北東支部を目指したのじゃ。
人の多いこの通りを歩くにはやはりアレしかないじゃろう!
「よし、皆、電車ごっこを……」
「しません」
ピシャリと言われたワシは、では何か代案があるのかを聞いたのじゃ。
「この街で魔物を出すのは良くないのはわかってるけど、これくらいならいいでしょ?」
そう言うとテンカは小さい魔鳥を全員につけたのじゃ。
「可愛いです」
ジーザスが魔鳥を撫でるのじゃ。
「小さくもできるんだな。あたしも後で試してみるかな」
グーシャがスライムを小さく出来ないか試そうとしとるのじゃった。
「バレないようにしてくださいよ?」
ルナが不安そうにテンカに言うのじゃ。
「大丈夫じゃろう。バレたらその時はまた別の方法を考えるとしようかのう。例えば……」
「電車ごっこは却下です」
むぅ、名案なのにのう。
「そもそも電車ってなんですか?」
「リニアモーターの遅い版じゃ。そもそもワシの元いた世界には電車から新幹線、リニアモーターというように、電気で動く車両があったのじゃ」
ワシは理論を知っとる限り教えてあげたのじゃ。皆は不思議そうに聞いとったのじゃ。
「魔物避けの物はどうしてたんだい?」
「魔物がいない世界だったのじゃ」
テンカが聞くのに答えると、皆びっくりしておったのじゃ。
「優しい世界から来たんですね」
「そんな事はないぞい。人々は肌の違いで差別し合い蔑んでおった。この世界の魔族と人間の争いと一緒じゃ。そして土地を奪い合い人間同士で殺し合いをしておったからのう」
ジーザスの言葉をワシは否定するのじゃ。
「浮気や不倫もあったのかい?」
「当然じゃ。皆なにかしらの不幸を背負っておったのう。じゃから全然優しい世界などではないぞい」
テンカはそれを聞いて呆れたのじゃ。
「どこの世界も男ってやつは……」
ワシはテンカに苦笑したのじゃ。
「女は体を売り、男は女を買うのじゃ。きっと人間というものがそうなっとるのかもしれんのう」
ジーザスは困った顔をしてワシに聞くのじゃ。
「救いはないのかな?」
ワシはジーザスの頭を撫でやり、こう言うのじゃ。
「救いは求めるものじゃが、救われるには自分で動かねばならんのじゃ。ただ待っとるだけで救われるのはごく一部じゃ」
するとジーザスはワシに抱きついてきて言うのじゃ。
「僕がコン様に救われたのは運が良かったからなんだね?」
ワシは屈んでやり、ジーザスと正面から向き合うのじゃ。
「酷なようじゃが、その通りじゃ。たまたまワシが通りかかったから良かったのじゃ。
そうでなかったら魔王として街を破壊するか、討伐されるか、どちらかじゃった」
ジーザスはワシの体に頭を埋めるのじゃ。
「話は聞いたじゃろ? グーシャはワシが救うまでに時間が経ってしまっていて、町を一つ滅ぼしているのじゃ。
ワシとて、いつもいつでも間に合うわけではないのじゃ。今もどこかで悲劇から、魔王が生まれておるじゃろう」
そして更なる悲劇を生んでいるはずじゃ。ワシらはそれを救うために進まねばならんのじゃ。
ワシはこの世界とは違う、元いた世界の話をしてあげながら、この世界ではどうすれば魔王の心を救えるのか、考えるのじゃった。
そうして北東地区へ向かう途中、ワシは嫌な視線を感じて振り返ったのじゃった。
後ろから人に道を空けさせてこちらへと来る騎士団の姿があったのじゃ。
ワシは嫌な予感がしたのじゃった。
騎士団はワシらの目の前で止まり、馬から降りてルナの前に剣を突き立てるのじゃ。
「……なんでしょうか?」
あまりに無粋なやり方にルナも顔をしかめるのじゃ。
「魔物を使役しているだろう?」
騎士団はテンカの小さな魔鳥を見て言ったのじゃ。
「この王都では魔物使いも魔物は使役しないで頂きたい。どの魔物が敵かわからないのでね。間違って殺されたくなければ、ご協力願いたい」
「テンカ、逆らわないで言う通りにするのじゃ」
小さな魔鳥はテンカのイヤリングへと戻っていったのじゃ。
「それと身分証を確認させてもらえるかな?」
騎士団は身分証を確認しながら、ルナに言うのじゃ。
「神憑きならば、もう少し魔物への配慮をして欲しいものだな」
ルナは責められて頭を下げるのじゃ。グーシャとジーザスは納得いってないようじゃったが、抑えておったのじゃ。
騎士団が行った後、テンカはルナに謝ったのじゃ。ワシはテンカの頭を撫でてやり、こう言ったのじゃ。
「もう一度、魔鳥を出してワシらにつけて欲しいのじゃ」
テンカとルナはあまりの事に驚いておったのじゃった。
不穏な空気の中、逆らうなと言っておきながら、逆らうような真似をするワシじゃ。
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