第85話「酔う夜」
酒回じゃ!
ワシらは北西へと上っていき、酒の街、ウォッカ街に着いたのじゃった。
そこら中に酔っ払いがおって危険な香りがするのじゃ。さっさと出た方がいいのう。
「お酒かぁ、そういえば飲んだことないな……!」
「当たり前じゃろ、グーシャ。お酒は大人になってからじゃ」
ワシの言葉にルナは呆れるのじゃ。
「私、前にこの世界では十四歳で大人になると言いましたよね? 十六歳のグーシャはもうお酒が飲めますよ?」
「ダメじゃ。ワシの倫理観の問題じゃ。お酒は二十歳になってからじゃ」
ちぇーっと言うグーシャにワシが笑っておると、テンカがニヤニヤしながら聞きに来るのじゃ。
「あたしとコン様は当然飲めるよね?」
そうじゃのう……ワシも前世では爺さんじゃしな。酒は飲めんことはないのじゃ。
「僕はまだ子供扱いなのかぁ」
ジーザスがしょぼくれて歩くのじゃ。ワシは頭を撫でながら言ってあげるのじゃ。
「歳なんてすぐにとっていくぞい」
一人前の男と認められるにはもっと大きな事を成さねばならんのじゃ。そして、女の子に優しくなければならんのじゃ。
ワシらはウォッカ街を歩きながら街を見ていると、酒の店ばかりだったのじゃ。じゃがワシは神じゃから飲むことが出来んのじゃ。
「トルネイドさんみたいな人がいたらいいんですけどね」
すると遠くからこんな叫び声が聞こえてきたのじゃ。
「そこにいる神様! ちょっと寄っていかないかい?」
ワシが見えておるようじゃ。そのオジサンに誘導され店に案内されるのじゃ。
中に入るとテーブルがいくつもあり、そこの中央に猫の神が座っていたのじゃ。
「ニャア、狐の神と鼬の神よ、ようこそ。代金一日分払ってくれたら飲み放題だよ」
ルナがオジサンにお金を払うのじゃ。
どうやらオジサンが料理を作るらしい。そのオジサンは禰宜のようじゃ。格好が調理人のようなのでわからんかったのじゃがのう。
「注文しておくれ」
「じゃあ私は……」
「酒はダメじゃぞ。ワシのポリシーに反するのじゃ」
ルナが注文する前に止めるのじゃ。お酒は二十歳になってからじゃ。
「飲み物、何がありますか?」
「ジュースなんでも置いてるよ」
ルナはオレンジジュース、グーシャはメロンジュース、ジーザスはミルク、エレスはリンゴジュースを頼むのじゃ。
「あたしは麦酒を頼むよ。久々に飲めそうだ」
テンカはビールかのう。ワシも飲めるということでワシはやはり……。
「清酒はあるかのう?」
「ああ、珍しいものを頼むねぇ? あるよあるよ」
オジサンが徳利に日本酒を用意してお猪口と一緒に持ってくるのじゃ!
「冷酒の方が良かったかい? 熱燗で用意してしまったが」
「ありがたいのじゃ! まさか異世界で清酒が飲めるとは!」
「俺は果実酒を頼もうかな」
フェレ様に注がれるワインじゃ。香りを嗅いで飲み進めるフェレ様じゃ。
「ニャアニャア、気分はどうにゃ? あたしゃ、猫依バステト。ここで店主を変えながら酒を提供するのに協力しているのにゃあ」
「まさかバステト様が神力を注いでいるのかのう?」
ワシとフェレ様は名乗った後話を聞くのじゃ。バステト様は魔物倒しに飽きたので、神のための店を開きたいと思ったらしいのじゃ。
この国に来て強く思ったバステト様は初代禰宜と共に、酒とつまみを提供する、この居酒屋『マタタビ』を長年やっとるらしいのじゃ。
「もし良ければワシが神力込めてお主にも飲めるようにしてもよいのじゃが、どうじゃ? バステト様よ」
「あたしゃ元々下戸にゃあ。でも好きな物すら飲めない気持ち、よくわかるからこの居酒屋を切り盛りしとるんにゃあ!」
そういう神様はこの国には多いらしいのじゃ。神様用の食事処は少なくないらしいのじゃ。
神が神力を込めて食材や飲み物を飲み食いできるようにするのじゃ。
食材の調達などは巫女や禰宜がするようじゃ。
「名前を聞いとらんかったのう? 禰宜の方はなんという名前なのじゃ?」
「エイルです。もしよろしければたっぷり酔いつぶれてください。お得意様になって頂けると嬉しいです」
一日分の代金は払ったからのう。つまみを食べながらおかわりを所望するのじゃ。
そうやって飲んでいるとテンカが横につくのじゃ。
「コン様ちまちま飲んでないで麦酒グビっといこうよ!」
お主酔っとるじゃろ、テンカよ。やれやれじゃ、ここは勝負といこうかのう?
「テンカよ、ワシのこの徳利と、お主のジョッキ、いくつ飲めるか勝負せんかのう?」
「へぇ、いいよ。あたしも自信あるよ! ちなみにこの店に来てから今まで飲んだ分も入れていいよね?」
ワシが二本目で、テンカは三杯目じゃった。ワシの方が遅いが、ゆっくり飲めばこちらが有利じゃ。
テンカは勢いよく飲んでいくのじゃ。甘い、甘いのう? ワシは少しずつペースが落ちるテンカに追いつきながら、勝ったのじゃった。
「もう飲めない〜……」
テンカがテーブルに突っ伏す中、ワシはちびちびと飲んでおったのじゃ。
すると飲み物を手にルナとグーシャが来たのじゃ。
「コン様、注いであげる!」
「おお、すまんのう」
グーシャがお猪口に注いでくれるのじゃ。
「コン様、夜は長いですよ?」
ルナが笑いながら隣でいてくれるのじゃ。
ジーザスはテンカの背中をさすってあげておったわい。
飲みすぎ注意じゃぞ!
ワシはフェレ様とバステト様とも話しながら夜を明かしたのじゃった。
夜は長いのじゃ。飲み明かす回じゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




