第83話「サーカス」
サーカス、見てみたいのう
この国のお祭りという事で、サーカス団も来とるようじゃった。世界を旅する『神輪サーカス』というサーカス団が、タツイ王国の祭りに駆けつけたそうじゃ。
どうやら神を映す投影機を所持しとるようで、構成員は神なのじゃ。
下準備を禰宜や巫女がやって切り盛りしとるようじゃ。
ワシらは練習を見学させてもらうことにしたのじゃ。
象の神が大きな玉に乗ってナイフをジャグリングするのじゃ。
また二人の鳥の神が離れた空中ブランコで超キャッチするのじゃ。鳥の白主で余裕そうじゃが、人から見たら凄い技じゃろうな。
そして鼠の神様が綱渡りで長い棒を持ちながら、飛んで跳ねての大パフォーマンスじゃ。
更に最後に兎の神様が人間大砲ならぬ神大砲で、空中にぶら下がった人参をキャッチして着地するという物じゃった。
ワシらは拍手して見学を終えたのじゃが、どうせなら本番に参加しないかと言われたのじゃ。
ワシとフェレ様は悩んだ末、練習に参加する事になったのじゃった。
ワシは空中ブランコ、フェレ様は綱渡りじゃ。
ワシが空中ブランコをする事に疑問を持つ者も多かったのじゃが、ワシが鷲に変化させる事が出来ることを知り適任だと思われたのじゃ。
フェレ様はバランス感覚抜群でパフォーマンスもバッチリじゃった。
報酬は出してもらえるということで、ワシらは本番に向けて練習したのじゃった。
そして本番でワシとフェレ様は見事、観客を湧かせることに成功したのじゃ!
この後も公演は続くらしいのじゃが、ワシらもワシらの用があるからのう。
報酬を貰ってサーカス団を後にしたワシらは南東に進みカッサ街という場所に着いたのじゃった。
そこは険悪なムードの街じゃった。自分たちの作った祭りの飾り物に対して相手の物を貶し、喧嘩しあっとるのじゃ。
どれも素晴らしい物ばかりじゃ。貶し合うなんてもったいないよのう?
ワシは喧嘩しとる二人の片方の頭を柔らかくするのじゃ。
すると弱っていって自虐的になっていくのじゃ。
「どうせ俺のものは……」
それを見たフェレ様はもう片方の人間の頭も柔らかくするのじゃ。
すると男たちは手を取り合って言ったのじゃ。
「ごめんよ、君の作品はとても素晴らしいんだ」
「こっちこそごめん、意地を張る必要なんてなかった」
片方だけが優しくても駄目なのじゃ。双方が優しくて物事は上手くいくものじゃ。
誰しも心は強くないものじゃ。また頭の硬い人は沢山おるのじゃ。
それら全てを世直しするにはワシの手が足りんわい。じゃが出来るだけ喧嘩を止めて行くのじゃった。
それら全てが解決したわけではないのじゃ。中には頭が柔らかく、真面目に言うとるだけで人に不快感を与える者もおるのじゃ。
正論で人を殴ると言うべきか、それは止められんのじゃ。
本人の強い意志にはワシの神の力では何も出来んのじゃ。
悪いことを言うてるわけではないので、無視するしかないのじゃ。心の弱い人たちを彼らから引き離して守るしか出来んかったわい。
人のために動いとる人達もおったのじゃ。彼らの中にはこの国の法律を動かそうとしとる者もおるのじゃ。
ワシはワシに出来ることをするのじゃ。飾り物の街カッサ、本当なら賑わってていいはずなのに、中々人を寄せつけんモノがあるわい。
どこの世界も喧嘩をする者は多いのじゃ。なんなら喧嘩の押し売りしとる人までおるのじゃ。
争いが発展して戦争にならんだけマシじゃ。この世界には魔王と魔物がおるから、それどころではないだけかもしれんがのう。
今のところ魔王は見かけんし、魔物も兵たちが何とかしとるのじゃ。
祭りを楽しむために兵たちも頑張っとるようじゃな。
ワシらはカッサ街を出て次の街で宿をとることにしたのじゃった。
じゃが次の街ジイロセンでは更に火花を散らす人が多くて疲れてしまったのじゃった。
とにかく相手の揚げ足を取ったり、あれは違うそれは違う、こうしないといけない等、もうめちゃくちゃじゃ!
この王国はどうなっとるんじゃ? まるでワシの元おった世界のように、人がいがみ合っておるのじゃ。
いや、違うのう。どの世界であれ、こうして誰かと誰かが言い争うのは人の性かのう?
ワシとフェレ様は疲労困憊じゃ。一旦休むことを決めて宿に向かったのじゃった。
「だから、何度言えばいいんだい!」
「そんなの知るか!」
宿の店主二人が喧嘩しとるのじゃ……もうかんべんしておくれよのう?
ワシらは部屋の鍵を受け取り、ベッドに転がったのじゃった。
「疲れたわい……」
「お疲れ様です、コン様。私たちはお風呂に入るのでゆっくりしていてください」
この宿の風呂は広いらしく、ワシとフェレ様以外で入るのじゃ。
フェレ様はベッドに寝転びながらワシに話しかけるのじゃ。
「で、誰が本命だ?」
「……何を言っとるのかわからんのう?」
「しらばっくれるなよ」
「……ワシは皆一番じゃ。じゃがあえて言うなら……」
もう手に入らん子にまた会えたらいいのにと思うのじゃ。それは淡い望みじゃ。
彼女は死んで墓も建てたからのう。それでも、もし会えるなら、目一杯可愛がってあげられるのにのう。
風呂からあがり着替えたルナ達がベッドに転がるのじゃ。グーシャはいつも通りワシの隣に来るのじゃ。
すると、ルナがワシにのしかかり抱きしめてくるのじゃ。
ワシは抱きしめ返すと尋ねるのじゃ。
「どうしたのじゃ? ルナ」
「私が一番でないと嫌です」
ルナの小声を聞き逃さなかったグーシャとジーザスはワシの右手と左手を二人で掴み言うのじゃ。
「あたしも一番がいい」
「僕も一番がいいです」
テンカは笑いながらワシの方を横になりながら見て言うのじゃ。
「あたしは二番でもいいよ」
ワシはルナを抱きしめる力を強めて言うのじゃ。
「皆一番じゃ! 同率じゃ!」
ルナの背中をポンポンと叩いてやるのじゃ。それよりもルナの胸成長しとるな? ちょっと大きくなっとるのじゃ。
「変なこと考えないでください」
ワシの頭をコツンと叩くルナじゃった。
またもやあの子に思いを馳せるワシじゃ。それに拗ねるルナじゃ!
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