第7話「魔王」
ちょっとだけ危ない表現しとるぞい。
ワシが倒しきれん程スライムが増えとるのじゃ。これは一大事じゃとルナも朝から教会に向かったのじゃ。
どうやら魔王が生まれつつあるようじゃ。完全に魔王が生まれたらスライムは実体化してしまうらしいのじゃ。
そうなると人を襲うようになるらしいのう。つまりこの町の危機じゃ。
教会のマザーはルナの報告を受けて、兵達の招集に動いたのじゃ。
ワシは特にスライムが集まっとるところを教えたのじゃ。
それはやはりスラムじゃった。魔王は恐らくスラムで生まれるのじゃろう。
魔王とは元々人らしいのじゃ。じゃがあまりにも負の感情に包まれると魔物を生み出し、魔王となってしまうそうなのじゃ。
そうなる前に救えたらいいのじゃが、流石にスラムが広すぎてわからんのじゃ。
それに家の中の話じゃと余計わからんのじゃ。虐待を受けとる児童か、はたまたDVを受けとる婦人か、働けないダメ男か。
ワシは一旦スライムを倒すのを諦めて、魔王探しに精を出したのじゃ。
ワシは誰からも見られんし壁もすり抜けられるのじゃから家など関係ないのじゃ。
プライバシーはあるのじゃが、とにかく家の中の様子を見て回ったのじゃ。
どこも酷い有様じゃが、今はとにかく魔王を探すことじゃ。
すぐに救えぬ辛さに耐えながらじゃが、魔王の捜索に力を入れたのじゃ。
ルナの話じゃと、ワシならば魔王は一発で分かるそうなのじゃ。それはワシが神じゃからという事じゃった。
ワシは半信半疑ながら家の中を覗いて回ったのじゃ。
そして、その子を発見したのじゃ!
その少女は最初出会ったタケトのように家の壁に座り込んでいたのじゃ。
あちこち酷い傷があったのじゃが、それだけではなかったのじゃ。
明らかに大きな心の傷があるようじゃった。
それは目じゃった。少女の前に黒いモヤがあり二つの目が涙を流しておったのじゃ。
そしてモヤからスライムが生まれ、町へと壁をすり抜けていったのじゃ。
この少女が魔王で間違いないと感じたのじゃ。
「お主は辛かったのかのう?」
ワシは声をかけたのじゃ。すると少女はピクリと動いたのじゃ。
「誰……?」
ワシの事が見えとるようじゃった。ワシは話せるなら話し合いで解決できるかもしれんと思ったのじゃ。
「ワシは狐依コンと言うのじゃ。お主の名は何じゃ?」
「……ジーナ」
「良い名じゃのう」
「よくない」
ジーナは名前を否定したのじゃ。ということは名付けた親に何かあるのう?
「何か悩み事があるのではないかのう?」
ワシはジーナに尋ねたのじゃ。ジーナは首を横に振るのじゃ。一体何があったのかのう?
「ワシは神じゃ。何か力になれるかもしれんからお主を助けさせてほしいのじゃ」
ワシは少しずつ距離を詰めたのじゃ。するとジーナは気づいたのか叫んだのじゃ。
「いや! 来ないで!」
黒いモヤの目が赤くなっていくのじゃ。これはマズいと感じたワシはジーナに言ったのじゃ。
「わ、わかったのじゃ! じゃから落ち着いてほしいのじゃ!」
「……」
これでは埒があかんと思ったワシは思い切って頼んだのじゃ。
「ワシ、お主の隣に行きたいのじゃ」
「どうして?」
ジーナはワシを睨みつけてくるのじゃ。
「ワシはお主の頭を撫でてやりたいからじゃ」
「頭を……撫でる?」
何故そんなことをしたいのかわからん風なジーナは、ワシに問いかけたのじゃ。
「どうしてそんなことをしたいの?」
「お主がよく頑張ったからじゃ」
ここでも彼女は首を捻る。何が? といった感じじゃ。
「お主はそんな大きな闇を抱えて一人で戦っておるのじゃ。じゃからワシからの褒美じゃ。受け取ってほしいのじゃ」
ワシはゆっくりと近づいたのじゃ。ジーナはワシを見とる。そしてワシは隣に座ったのじゃ。
「よく頑張ったのう」
ワシはジーナの頭を撫でてやる。少しずつじゃが黒いモヤが薄れていくように見えたのじゃ。
黒いモヤの目も少しずつ泣くのを止めていったのじゃ。
「神様……助けてください!」
ジーナは親に虐待されとるようじゃった。そして義理の父から「そういう行為」もさせられとったらしいのじゃ。
これは予想以上に闇の深いことじゃったのじゃ。
「ルナ! 聞こえるかのう? 今すぐワシのところに来て欲しいのじゃ」
ワシは念じながらルナに話しかける。するとルナから返答があったのじゃ。
(随分遠くにいますね。今行きます!)
「ジーナ、これで安心じゃぞ。今教会のものが助けに来てくれるからのう」
「……うん」
安堵したのも束の間、突然扉が勢いよく開かれたのじゃ。ルナではない、だらしない格好の男が入ってきたのじゃ
「お父さん……」
「ジーナぁ、今日もいい事してやるからなぁ?」
これはまずいのじゃ。ワシはパンチを繰り出したのじゃ。
「ぎゃあああ! 痛いのじゃあ!」
いつもの十倍くらい痛かったのじゃ!
「神様! 神様!」
ジーナが服を脱がされていくのを見とるしかなかったのじゃ。
ワシは何度もパンチを繰り返したのじゃが、この男は完全に闇に染ってるようで今のワシには太刀打ち出来んかったのじゃ。
「いや! いや! いやあああ!」
再び黒いモヤが現れ目から涙を流す。ジーナも泣き叫んでいたのじゃが、男はそれすらも楽しんどるようじゃった。
やがてどす黒い闇がスライムを大量に放出して爆発したのじゃ。
「な、なんだぁ?」
男は呆けておったが、周りにいるスライムに気づいたのか、驚いて逃げ出したのじゃ。
「ま、ま、魔物だぁ!」
こうしてスライムの魔王ジーナが生まれてしまったのじゃ。
魔王ここに爆誕じゃ。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




