第61話「ユー街で」
ワールド様から力を与えられたアルト君じゃ。
ワシらはユー街に着くとロープウェイを降りて、教会を探したのじゃ。
「すまんのう。恐らくアルト君が神力を得たのはワシのせいじゃ」
「どういうことですか? コン様」
ワシは上位神ワールド様に会ったことを言い、アルト君はその為だけに神力を与えられたのじゃろうと推測するのじゃ。
「どちらにせよ光栄な事ですから、コン様が気に病む事はありませんよ」
ワシらは教会に着くとマザーである方に説明したのじゃ。
「なるほど、この子が神託を受けられたのですね」
マザーの方はハーリアさんにユー街で居を構えて、神を待ってはどうかと言われたのじゃ。
このナナナ大陸を更にユー街から北西に進んだティー街、そこから北へ行くとエス街があり、その西側にアール町があるそうじゃ。
アール町から出発しこの街を通る神がいるらしく、その神を待ってもよいし、巫女や禰宜を失った神が通ったら誘ってもよいそうじゃ。
ユー街には今、巫女も禰宜おらんそうじゃから会えれば旅を出来る可能性があるらしいのう。
ハーリアさんはそれまでアルト君と暮らし成長したら神との旅に出しても良いと言うのじゃ。
「よかったね、アルト。神様に選ばれるなんてこの上なく光栄な事だわ。産んだ私も誇らしいわ」
そうしてハーリアさんとアルト君の道も決まったところで、護衛依頼成功の報酬を受け取ったのじゃ。
「ハーリアさん、元気でやっていってくださいね」
「アルト君さよならだよ! バイバイ!」
「護衛依頼完遂できてよかったです。頑張ってくださいね」
ルナとグーシャとテンカがハーリアさんとアルト君にサヨナラを告げるのじゃ。
ハーリアさんもお辞儀をして住む家を探しに行くのじゃった。
ハーリアさん、アルト君、さよならバイバイじゃ!
さて、ワシらは宿に向かったのじゃ。三人部屋のベッドがある部屋を取ったワシらは、思いっきりベッドにダイブしたのじゃった。
「疲れたぁぁぁ!」
テンカの叫びじゃ。一番疲れとるのはテンカじゃ。多くの飛行魔物を相手してくれたのじゃからのう。
ベッドは三つじゃ。ワシはどれかのベッドに寝るべきかのう?
たたないワシじゃし何も問題はないじゃろ?
「私のところにきてください」
「まぁそれでもよいが」
「ええ!? ルナ、ズルい! あたしもコン様と寝たい!」
「じゃあこうしないかい? 許可を取ってくるからベッドをくっつけて寝ようよ」
テンカはそう言って階段を降りていき帰ってくるとオッケー印を手で作ったのじゃ。
グーシャがシーフを出してベッドを運ぶのじゃ。三つのベッドをくっつけて皆で寝るのじゃ。
ルナとグーシャはすぐに眠ってしもうたのじゃ。ワシも寝ようと目を瞑っているとベッドが軋む音がしたのじゃ。
テンカが起き上がって部屋の机に向かって座ったのじゃ。
ワシはルナとグーシャを起こさんように、テンカの後ろに立ち聞いたのじゃ。
「眠れんのかのう?」
「あ、起こしちゃった?」
気にせんでよいのじゃよ。ワシは気になって聞いたのじゃ。するとテンカは話し出したのじゃ。
「実は夢を見たんだ。あのロープウェイの場所で寝てた時にね」
それは光の玉の声じゃっと言うのじゃ。恐らくワールド様の事じゃろうなと思ったのじゃ。
「邪神にならないように気をつけよ、という話をされたの」
なるほどのう。じゃがテンカなら大丈夫じゃろ? 人の痛みがわかる人間なのじゃから。
「あたしはいつかコン様達のところから離れるつもりを話したのは覚えてる? でももし離れた時、理不尽な何かに出会ったら、あたしはあたしの悪い部分を抑えられるか分からないの」
ワシは話を聞いていて思ったことがあるのじゃ。それをテンカに伝えるのじゃ。
「ワシとて蛇の神と対立したこともある身じゃ。悪い事とわかっていても抑えられぬ時はある。勿論それを止めるのは仲間みんなで抑え合うのが理想じゃ。お主はワシらから離れたとして、それからずっと一人でだけで生きていくつもりなのかのう?」
ワシはテンカの瞳を見ながら真剣に話すのじゃ。テンカは、悩みながらも答えを出したのじゃ。
「多分コン様達とは違う仲間を見つけては離れをすると思う」
「ならば仲間がいる時に頼ればよいじゃろ? 違うかのう?」
人は一人では生きていけぬ。下位の神になったとはいえ、普通の人間と変わらぬ状態なのじゃから、誰かと共に考え行動したらよいだけなのじゃ。
大切なのは、間違えた時叱ってくれる人を見つける事じゃ。
ワシも蛇の神メデサ様と対立したりしたし、正しい道へ行ける自信なんかないのじゃ。それでも自分の信念を持って行動しておる。
その信念自体が間違っとったら問題じゃが、ワシの信念を支えてくれる人もおるのじゃから、ワシはワシの道を行くじゃ。
「テンカはテンカなりに考えて生きておるのじゃから、仮に間違ったとしてもちゃんとやり直せるじゃろう。ワシはそう信じておるぞい」
ワシはテンカの頭を撫でてやったのじゃ。
「子供扱いしないでよ。あたしは立派な大人なんだからさ」
「別に良いじゃろ。良い子良い子じゃ」
「最初は胸揉んだくせに」
「あれは逃がさんようにするためには仕方ないじゃろ」
「また揉む? あたしの胸」
「揉んでやろうかのう?」
「たたないくせに」
ぐはっ! ワシのライフはゼロじゃ。ガクりと崩れ落ちるワシを見て笑ったテンカは、ワシの元に近づいてワシに抱きついたのじゃ。
「ありがとうコン様。私の話に付き合ってくれる?」
ワシはテンカと今後について、テンカの考えを聞いて夜を明かしたのじゃった。
テンカの想いを聞くのじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




