第60話「上位の神」
とうとう上位の神様、再登場じゃ!
ロープウェイで進んでる間にも夜になるのじゃ。コウモリのような魔物が襲ってきたり、フクロウのような魔物が襲ってきたりじゃ。
ロープウェイの機体自体は頑丈にできておるようで問題ないのじゃが、襲われると危険なため戦わねばならぬのじゃ。
テンカは大量の魔鳥を呼び出し応戦するのじゃ。ワシとルナも神力で対応するのじゃが、グーシャのやる事が少ないのじゃ。
「アルトを見て貰えますか?」
ハーリアさんが退屈そうなグーシャに尋ねたのじゃ。
グーシャは喜んでアルト君を抱きかかえあやすのじゃ。ワシはその様子を見て微笑ましく思っておったわい。
「コン様とこんな子供が欲しかったな」
「神様との子供ですか?」
グーシャはアルト君をあやしながら、ハーリアさんにこれまでの旅を話しておるのじゃ。
相槌を打ちながら聞いとるハーリアさんはグーシャをアルト君ごと抱きしめたのじゃ。
「子供を持つことだけが幸せではないわ。好きな人、優しい人の傍にいられることもきっと幸せの一つだもの」
ハーリアさんの言う通りじゃ。テンカは体が死んどらんからもしかすると子供を産めるかもしれんのじゃが、グーシャは一度死んだ身じゃ。
どんな男相手でも子供は産めんからのう。
(どの道コン様も子供作れないんですから)
鷲にした白コンに乗って飛びながら魔物を倒しておるワシにルナが念話で話しかけてくるのじゃ。
まぁワシのことはよい。お主らの人生よりは長く生きるのじゃからのう。
テンカは徹夜で対応してくれたのじゃ。ワシは魔物の減る昼に眠るようにテンカに言うたのじゃ。
「三徹くらいできるよ?」
「駄目じゃ。お主がもし倒れたらワシらの危機じゃ。昼はワシとルナで対応するからのう」
そうしてテンカが眠ってる間戦っていたのじゃが、周りの魔物の様子が変じゃ。
明らかに減ってきておる。そしてピタリと来んようになったのじゃ。
「あれ? 急に眠く……」
ルナとグーシャとハーリアさんが突然眠ってしもうたのじゃ!
「どうしたのじゃ! 起きんか!」
ワシは中にすり抜けて入って、ルナを揺するのじゃが、全く起きんのじゃ。
「久しぶりだな」
ふとそんな声がアルト君の方から聞こえてきたのじゃ。
「誰じゃ! アルト君の体を返さんかい!」
「まぁそう言わないでくれ。私は下界では誰かの体を介さねば存在できないのだ」
まさか……まさか上位の神か!?
「いかにも。私はお前をこの世界に転生させた神、世界から名前をとって、世依ワールドと呼ばれておる」
日本語なのか英語なのかどちらかにせいよのう。
「それはお主が日本人だからそう聞こえているだけだ。別世界から来たり、違う国から来た人には別の言葉で聞こえている」
そうなのかのう? まぁそれはよい。何故アルト君の体を利用しておるのじゃ?
「当然お前に用があってきた。この世界を旅してきてどうだ? 気に入ったか? それとも帰りたくなってないか?」
帰りたいかじゃと? 帰れるのかのう?
「ここまではお前の試用期間なのだ。お前は良く活躍してくれたからこのままこの世界にいてもいい。だがお前がこの世界を嫌になって元の世界に帰りたくなったのなら、私の権限で転生させてやろう。どうする?」
「一つだけ聞きたいのじゃ。ワシが帰ってしもうたらこの子らはどうなるのじゃ?」
「この子らの心配は要らない。また次の神と旅したらいいし、ユー街に留まってもいいわけだ。この子らはこの子らの選択をするだろう。結局お前がどうしたいかだ」
ワシは……ワシはワシのせいでジーナのような子が出てしまうのは嫌じゃ。ルナもグーシャももしかしたらワシとの旅の中で死ぬかもしれん。
じゃが……それ以上になかったことには出来んのじゃ! もう嫌だ帰りますなんて言えんわい!
何よりワシはジーナも含めルナやグーシャやテンカとの旅が楽しかったのじゃ。
それだけは絶対じゃ。じゃからワシはこの世界を旅することを選ぶのじゃ。
「仮にこの世界で今後死んでも元の世界には返してやれなくなるぞ」
「チュン様のようにはならんのかのう?」
「あれは大きな未練があったから留まらせる事が出来た例の一つだ。そういう例もあるだけだ」
「それでもよい。ワシはもうこの世界が好きじゃ! この世界を救うことに決めたからのう!」
「では狐依コンの採用通知だ。初任給はそうだな、何か考えておこう」
そう言うとワールド様は消え、アルト君が泣き出したのじゃ。
「う……ん? あれ? いつの間に寝てたんだろう」
グーシャが起きて慌ててアルト君をあやすのじゃ。ルナも起きて周りを見渡すのじゃ。
「コン様、何があったんですか?」
「ちょっとした事があったのじゃ。心配せんでよい、もう終わったからのう」
ハーリアさんはまだ寝ておったのじゃ。寝かせておいてやろうかのう。ワシは白コンに乗り飛んだのじゃ。
魔物は集まってくるからのう。処理しながらワシは考えるのじゃ。
選択はしたからのう。後は全力で皆を守るだけじゃ。
ワシは魔物を殺しながら、皆を守れるだけの大きな強さを得ようと思ったのじゃった。
ちなみにワシは中位の神じゃぞ。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




