第58話「道場で修行」
ここでも進化が出るのじゃ!
ワシらはメリケン師範を前に正座しておったのじゃ。メリケン師範はワシらの事情を聞いて提案してきたのじゃった。
「この道場は初心者から受けられるようになっとるから勧められたのじゃろう。ここで拳闘の基礎を覚えれば、色々な事に役に立つはず。金は払ってもらうがのう」
ワシは不安に思うのじゃ。流石に初心者向けなら少しは覚えがあるからのう。剣を使うのじゃからある程度は体は動くぞい?
「神様は少し難しい修行をしたいそうなのですが……」
「儂には見えとらんから、動きを真似て慣れてくれとしか言えん。どうかな?」
確かにそれはよい。じゃが師範のレベル、この道場のレベルを知りたいのじゃ。
「上級者の模擬戦みたいな事って見学させてもらえたりできませんか?」
ルナの提案にメリケン師範は笑ったのじゃ。
「ケン! ライ! 来なさい」
二人の男の子が来たのじゃ。ケンは案内してくれた子じゃな。
「今からここで模擬試合をしなさい。勿論本気で」
この道場のレベルを知れる機会じゃ見させてもらおうかのう。
「えー! ケンとですか? シンか、オウにしてくださいよ」
「押忍! 師範の言葉をきちんと受け入れてください、ライ」
喧嘩のようになっとるが大丈夫かのう? じゃが、二人は道場の中央に立ち、構えて師範の合図を待っておったのじゃ。
「では、始め!」
合図を聞いた瞬間すぐさま二人は飛び出したのじゃ。ケンが右手を繰り出し、ライはそれを避けた後ケンの腹を左手で狙うのじゃ。
すぐさま飛び退いたケンはそのフットワークの軽さで左手でパンチするのじゃ。
ライは避けるがケンのそれはフェイントで、ケンの右手がライの腹に刺さるのじゃ。
どちらも速すぎて目で追うのが精一杯じゃ。拳闘とはいえ足腰も鍛えてなければいかんのじゃ。
ワシが元いた世界のボクシングとは少し違うのう。ガードをせんのじゃ。避けなければいけない感じじゃな。
二人の戦いは白熱したのじゃ。
トントンとリズムを踏みながら相手の出方を待ちカウンターを繰り出したり、フェイントを織り交ぜ強い一撃を叩き込んだりしとるのじゃ。
そして模擬試合はケンの勝利じゃった。
「だから嫌なんだよ、ケンとやるのは。勝てないのわかってるじゃん」
ライはそう言うのじゃが、ワシはライも健闘したと思うぞい。ケンも息を切らしておって汗だくじゃ。
「拳闘っていうから拳だけかと思ったら、凄く動いてたね!」
グーシャが興味を持ったらしいのう。
「どうかな? お気に召したかのう?」
ワシはこれなら習う意味があると思ったのじゃ。お願いしたいのじゃ。
「是非よろしくお願いします!」
こうしてワシらの拳闘修行が始まったのじゃ。
あまり長期間はかけられんからのう。まずルナとグーシャとテンカは、ライから基礎から習うのじゃ。
そして師範はケンと稽古をするのじゃ。それを見てワシは真似るように言われたのじゃった。
「力を入れる時と抜く時の差をしっかり付けなさい。まだまだ甘い、拳は急激なようでしっかりとブレずに丁寧に。力の込め方にムラがある一撃を入れる時に最大の力を出せるようにしなさい」
「押忍!」
これらの言葉はワシの糧になったのじゃ。ケンの方に立ち師範の動きを見ておったのじゃが、全く無駄がないのじゃ。
ワシは師範とケンの稽古を見ながら力の込め方と、動き方をマスターしていったのじゃ。
ルナ達の方を見るとルナとグーシャはバテておったわい。おいおい、大丈夫かのう? ここまで旅してきたじゃろ。
「こんなに激しく動かないじゃないですか」
ルナが抗議してくるのじゃ。確かにスライムに乗って旅しとるしのう。
「あたしちょっと思ったことがある。試していい?」
グーシャはゴブリンを出したのじゃ。
「魔物!?」
「あ! 大丈夫です。彼女はゴブリンマスターなので」
「今はスライムマスターでもあるけどね」
「ほう、魔物使いじゃったか。肌が黒くないからわからんかったわい」
魔王であったことは話さん方がよいな。じゃがどうするのじゃ?
「ゴブリンに拳闘を覚えさせたい」
なるほどのう。それは名案じゃ。ゴブリンが拳闘を覚えたら強くなるかもしれんからのう。
「あたしも頑張るか! さぁ、ルナ立って」
「ま、待ってください、テンカ。私まだ息が……」
ヒーヒー言いながら拳闘を覚えとる皆じゃ。
ワシも大分体の動かし方の勉強になったわい。ちなみにガードをせん理由は、当たってしまうと致命的じゃからだそうじゃ。
拳闘士の装備は軽い。攻撃は全て避けるのがセオリーじゃ。
そして修行をさせてもらって二週間の日、グーシャのゴブリンに変化が起きたのじゃ。
光り輝いたゴブリンはスラリとした筋肉質な体で顔も整った魔物になったのじゃ。
「これはシーフだな。進化をこの目で見るとはのう」
グーシャはゴブリンマスター改め、シーフマスター兼スライムマスターになったのじゃった。
ワシも形だけとはいえかなり動きがよくなったのじゃ。
本来なら何年もかけてマスターしてゆくのじゃろうが、ワシらは旅人じゃし、旅のどこかで別のことを覚えられるじゃろ。
今回はここまでということでメリケン師範に礼を言い次の街に行く準備をしたのじゃった。
シーフになったのじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




