第524話「ノミチの町の試練」
眠れぬゲールじゃ。
次はノミチの町じゃ、馬車を使わないので数日使ってしまうのじゃが、何とか徹夜で着くのじゃ。
役場に行く前に宿で一旦休むのじゃ。皆眠る中ゲールがこっそりワシのところに来るのじゃ。
「どうしたのじゃ?」
「なんだか、眠れなくて」
徹夜して来たんじゃから寝ないと疲れは取れないのじゃ、むしろ二日休みを取ってるくらいなんじゃから、たっぷり寝ないとじゃ。
じゃが魔族であるゲールは何か生活リズムが違うのかもしれんと思ったワシは、頭を撫でてあげて、お腹をポンポンと叩きながら子守唄を歌ってあげるのじゃ。
たまには男同士で寄り添って眠るのも良いじゃろう。
翌々日、役場に行ってシーネスさんに話を聞きに行くと、バタバタ忙しそうにしていたのじゃ。
何事かと話を聞いてみるとジャックデッドシャドウカメレオンが出たそうじゃ。
ワシらが手印を貰いに来たことを告げると、すぐに長を呼んできてくれたのじゃ。
こうしてジャックデッドシャドウカメレオンの討伐が始まったのじゃった。
ワシらは倒し方を聞くのじゃ。
「舌が複数あるデッドシャドウカメレオンですから囮も複数必要です」
四人、囮に使わないといけないそうじゃ。ワシらは顔を見合わせるのじゃ。
「どうしますか? 囮を雇いますか?」
「いや、足りるじゃろうな」
ハフとテンカがとても嫌そうな顔をしたんじゃが、ワシはちゃんと助けるからと説得するのじゃ。
「ウチ、ドキドキしてきた」
「アカミは最優先で助けるぞい」
そのワシのセリフにブーイングが起きるのじゃが、ワシがルナを見るとブーイングは止むのじゃ。
「なんで私を見るんですかー!」
ルナはプリプリ怒るのじゃが、皆は苦笑するのじゃ。流石にルナの手料理を食べて毎日を暮らすくらいなら、アカミを優先に助けた方がマシのようじゃ。
それに関してもルナは怒るものの、ルナ自身も自覚があるのでしょんぼりするのじゃ。
「大丈夫じゃよ、ルナにはルナの役割があるのじゃ」
そう言うワシに力なく項垂れるルナじゃ。
「巫女としての役割は減っていますよ……」
それを聞いてゲールも俯くのじゃ。
「確かに禰宜としてちゃんと何かをしていないですね……」
そう言う二人にワシは頭をポンポンと叩いて励ますのじゃ。
「その存在は大きいのじゃ。外大陸に来てから今まで狐の神と出会ったかのう?」
二人はハッとするのじゃ。狐の神に今まで会っていないのじゃ。
「二人がいなくなってしまったら、ワシとジーナは誰と契約したらいいんじゃ? そうじゃろ?」
それは外大陸では通用しても、内大陸に戻る時、二人がいないとワシらは何もできないのじゃ。
「それにワシとジーナだけでは困難な時もあるじゃろう。そんな時二人がおるから安心できるんじゃ」
この先のビャッコ様に認められる話を見据えても、かなり困難は続くじゃろう。ワシとライア刀だけでは切り崩せないかもしれないしのう。
ジーナ、ルナ、ゲールは頼りにしているのじゃ。勿論、テンカやアカミや、アオやハフも頼りになるがのう。
とにかく今は、ジャックデッドシャドウカメレオンのところに行くのじゃ。
どこにいるのかもまだ判明してないらしく、被害に合っている神が何人かいるのじゃ。
元々数少ない常駐神が減るのは避けたいシーネスさんに完全な討伐を任されるのじゃ。
できれば移動させて欲しいそうじゃ。見つけたら討伐してから大きめのトーチをそこに置いて欲しいそうじゃ。
そうすれば遠ざかるそうなので、安心できるそうじゃ。
四人の囮が前を進んでいると一気に首を掴まれて吸い込まれていくのじゃ。ワシとジーナとルナとゲールは大急ぎで追いかけるのじゃ。
どんどん北の奥地に行き、着くと巨大なカメレオンの影に捕食されそうな四人じゃ。アカミ優先とは言ったものの、誰一人として失うつもりのないワシはライア刀を全力で振るうのじゃ。
光に包まれて舌を失ったジャックデッドシャドウカメレオンは逃げようとするのじゃが、光を纏ったジーナが尻尾を掴んで投げ落とすのじゃ。
「ナイスじゃ! ジーナ、そのまま掴んでおれ!」
次こそと再びライア刀を振るいジャックデッドシャドウカメレオンを斬り殺すのじゃ。
そしてルナが大きめのトーチを置いて、ワシらはその場を後にするのじゃ。
ノミチの町に戻ってシーネスさんに報告すると頭を下げてもらえるのじゃ。そしてシーネスさんはワンちゃんがどうなったかを聞いてくるのじゃ。
「ジュウジの街で獣神ライア様と共に待ってくれておるぞい」
「じゃあ急いで行ってあげないとですね!」
そうしてワシらは長の獣人に手印を押してもらい、最後のジュウジの街の試練を受けるために、ワンちゃんを預かってもらっているもう一人のライア様の元へと向かう準備をするのじゃ。
「早く早く!」
ハフが急かす中、ワシらはデッドシャドウカメレオンを避けつつ、ジュウジの街を目指して出発したのじゃった。
早くワンちゃんを迎えに行きたいのう。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




