第516話「劣等種」
劣等種のワンちゃんがイジメられていたのを助けに入るのじゃ。
「なんだ? 狐の神様か?」
「何をしとるんじゃ? お主らは?」
「ふん、お前ら! 逃げるぞ!」
彼らは物凄い勢いで散って逃げていくのじゃ。じゃがスライムやシーフや犬や蛇に囲まれているのじゃ。
「くそ! 倒してでも!」
「おっと、そうはいかんのう。ワシらも襲いたくはないのでのう」
ワシとジーナが白主をばら撒くのじゃ。当たるごとに膝をつかせるのじゃ。
「あなたたちは自分が何をしているかわかってやっているんですか?」
「どうしてこんな事するんですか?」
ルナとゲールの尋問タイムじゃ。彼らは涙ながらに懺悔するのじゃ。
「劣等種のくせにチヤホヤされてるのが悔しくて……」
そんな事でワンちゃんをイジメてきたのかのう? ワシらは更に白主を当て約束させるのじゃ。
「今後ワシらがいなくなっても、誰かは見ているのじゃ。隠れてイジメるくらい、後ろめたい事なんてしてる間があったら、努力しなさいなのじゃ」
ヘコんだ獣人たちは渋々頷くのじゃ。ワシは追い討ちにある命令をするのじゃ。
「今から言うことを実行したもののみ許すとするのじゃ」
それはワンちゃんの頭を優しく撫でてあげる事じゃった。これにはざわめきがおきるのじゃ。
流石に屈辱かもしれんがワシはもう一度白主を当てるのじゃ。
一人ずつ立ち上がり、ワンちゃんの頭を優しく撫でていくのじゃ。
少し震えるワンちゃんの肩を優しく叩いてあげ、勇気をあげるのじゃ。
フワフワの髪の毛を撫でる獣人たちは顔を赤らめて涙を流しながら去っていくのじゃった。
これで終わるとは思えないのじゃが後はワンちゃん次第じゃ。
「助けを求めることは悪ではないぞい」
「わかってるんです。でもいつも助けて貰えない場所でやられてましたから、慣れてしまっていたのかもしれません」
お辞儀をするワンちゃんは不思議そうに、ワシの方を見るのじゃ。
「コン様は聞こえていたんですか?」
「聞こえる範囲にいたからのう」
ハフがワンちゃんの後ろから抱きついてくるのじゃ。
「遅くなってごめんね」
それで全てを悟ったように、再び頭を下げて礼を言ってくるワンちゃんじゃった。
「この度はありがとうございました!」
役場に戻って一連の話をするとシーネスさんも頭を下げてくるのじゃ。人間である彼女は劣等種であるワンちゃんにも対等に接していたのじゃ。
「ワシらは案内してもらった礼に、ちょっとしてあげただけじゃよ」
そう言って微笑むワシの頬にキスをしてくるワンちゃんじゃ。
「ふふふじゃ。礼の礼をされてしまったのじゃ……」
その様子を見てプリプリ怒るルナの頬にもキスをするワンちゃんは、皆の頬にキスしていくのじゃ。
「まったくのう。これは人気が出るわけじゃよ」
「コン様が人気が高いのと同じですね」
皆が笑うので、ワシも仕返しにと、ワンちゃんを抱きしめてわしゃわしゃと撫でるのじゃ。犬の獣人なのか、人間なのかも微妙なラインの体つきじゃが、女性特有の柔らかさがあり、可愛らしいのじゃ。
そうして地図を頭に入れたワシらは、役場から離れ、早速指示されたデッドシャドウのいるポイントに向かったのじゃ。
どうしてこの町が安全なのかを身に染みて知ったのじゃ。ここは南の端のようじゃった。
正確に言うと南の端ではないそうなのじゃが、この町の南は壁なのじゃ。そして西側も壁じゃ。北か東に戻るしかないのじゃ。
必然的に道は狭まり、魔物も少なくなるのじゃ。とはいえ、広く倒さなければ闇は大きくなるからのう。
この辺りのデッドシャドウはトーチでも倒せるものの、デッドシャドウカメレオンはいるそうなので、注意深く倒していくのじゃ。
デッドシャドウカメレオンもしっかりアオの声にならない悲鳴と共に倒していき、安全を確保してからノミチの町に戻るのじゃ。
この町では宿があるらしく、ワシらは宿に向かうのじゃ。するとワンちゃんが待っていてくれたのじゃ。
「お疲れかと思いまして、換金作業をしに来ました」
健気ないい子じゃよ。ワシは頭を撫でてあげて、換金作業を待つのじゃ。
大して金にならん程度しか倒せてなかったようじゃが、ワンちゃんの話によると、闇は大分遠のいたそうじゃ。
何度もお礼を言われワシらも照れてしまうわい。
「ワンちゃんも一緒に泊まっていこうよ!」
ハフが提案するのじゃ。ワンちゃんは慌てて手を横に振るのじゃが、迎えに来たシーネスさんに話を通すと是非ともと言うのじゃ。
「決まりだね。たまにはあたしにもスイートマジィタ貸してよ」
珍しくアオも乗り気じゃ。部屋に向かわせるのじゃ。
「じゃあウチは腕によりをかけて料理を作るね」
「あの、私もお手伝いに……」
「いいからいいから」
ワンちゃんはもう客なのじゃからハフが無理矢理引っ張っていくのじゃ。
そうしてワンちゃんとのお泊まりパーティーが始まるのじゃ。
交代でスイートマジィタを貸したり、お喋りしたりするのじゃ。
「っ! この料理とっても美味しいです! 今まで食べた中で一番美味しい!」
「嬉しい」
アカミの料理を気に入ってくれてワンちゃんはポロポロ涙を流すのじゃ。
「あ……ごめんなさい……こんなによくして貰えるのが嬉しくて」
「いっぱい嬉し泣きしなさいなのじゃ。ワシらがいる間くらい楽しく過ごしてもいいじゃろう?」
そう言うワシに向けたワンちゃんの笑顔がとっても眩しいのじゃった。
ワンちゃんとお泊まりパーティーじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




