第514話「西の外大陸の旅」
影の野菜を育てている場所へGOじゃ!
外大陸では野菜などを育てていないのはわかっているのじゃ。それは土地柄もあるが、デッドシャドウとの戦いが優先で、育ててる余裕もないのはわかったのじゃ。
じゃがどこか一つくらいは育ててるところはないのかと聞いてみるのじゃ。
すると役場の役員さんは、次の町で育てているというのじゃ。
ノミチの町という場所ではデッドシャドウの脅威は薄いそうじゃ。また農作業に力を入れた獣人たちが色々な野菜を育てているそうじゃ。
ワシらは馬車に乗せてもらっていくことにしたのじゃ。
どんな野菜を作っているのか気になるのじゃが、まずワシやジーナも食えるのかが気になるのじゃ。
「そもそも私たち人間が食べる物かもわかりませんよね」
確かに家畜がどこかにいて、その餌なのかもしれんしのう。
獣人にしか食べられない食べ物の可能性もあるが人間も共生している時点でそれはなさそうじゃ。
そういうことを考えていると、ふと疑問が湧き上がるのじゃ。
ノミチの町に着いて役場に行った時、ワシは役場の獣人さんと話しながら、ある話題について聞いてみたのじゃ。
「なかなか聞きづらかったんじゃが、獣人と人間の交わった例はないのかのう?」
「性交ですね?」
「直接的に言うのう……そうじゃよ」
「端的に言うと、可能ですが、したがる獣人がいません」
「何故じゃ?」
「劣等種が生まれるからです。快感を求めてヤる獣人も中にはいるそうですが、子殺しは犯罪になりますからね。万が一、子供ができてしまったら、一生劣等種と生きていくわけです」
それは死より恐ろしい事だというそうじゃ。人間側に不利益はなくても獣人側には不利益があるのじゃのう。
「それでも本能に負けてヤる獣人はおるんじゃろ?」
「いますけど、獣人同士、人間同士が基本です。誰一人として劣等種を望みませんから。だって寿命も獣人より悪くなるので、親の人間より先に死ぬのに、力や能力は人間よりは強いものの獣人より弱いんですから。いい事なしですよ」
それでいて面倒を見なければならなくなるのだという役員さんじゃ。確かにそんな状態で、自分の仕事もこなさないといけなくなると困るよのう。
「そういう者はどういう場所で働いたりするんじゃ?」
「そりゃあ、どこでも。人手は不足してますから」
そういう役員さんはあるフードを被った役員さんをこっそり指さすのじゃ。
どうやらあの子は獣人と人間の子供だそうじゃ。直視もしない方がよさそうだったので、話を変えるのじゃ。
「このノミチの町では農業が盛んなそうですが?」
ルナがそう聞くと役員さんは頷いて、ある野菜を持ってくるのじゃ。
「これは……りんご?」
「食べて大丈夫ですよ、食べてみてください」
ワシらは切り分け合い食べてみるのじゃ。何故か力がついた気がしたのじゃ。
「これは影のリンゴというものなんです」
「どういったものか聞いていいかい?」
食べた後に影と聞いて不安になったテンカが尋ねるのじゃ。
「この土地は魂の土でできていると言われています。その土地でできた物は、影の何かなんです。デッドシャドウたちも魂の塊であるのは知っていますよね? 外大陸は影という名の魂でできた土地で、だからこそ、デッドシャドウがいて、影の食べ物ができるんです」
他にも色々あって食べてみると美味しい上に力がつく気持ちになるのじゃ。
魂を食べているような感覚になるのだと言う役員さんは、この土地はそういう物を研究している場所だと言うのじゃ。
ワシらは案内して貰えないか聞くと、代わりに後でデッドシャドウ退治を請け負ってくれないかと頼まれるのじゃ。
比較的安全なだけで脅威がないわけではなく、またやはり人手は足りてないそうじゃ。
ここから先へ行ってしまう神達が多く、少しずつ影の力が強くなってしまっているそうで、困っていたそうじゃ。
「じゃあ案内しますね」
役員さんが立った時じゃった。
「あの子に案内してもらおうよ」
ハフが先程の獣人と人間の子供を指さすのじゃ。
「で、ですが、先程申し上げた通りあの子は……」
「私仲間外れ嫌いなんだよね」
ワシの方を見てくるハフに微笑んで、ワシからも頼むのじゃ。
「まぁ、あなた方がそれでいいのでしたらいいですけど」
「案内ができないとかではないじゃろ?」
「勿論ちゃんと案内は出来ると思いますよ? ですが……」
「構わないのじゃ。デッドシャドウの案件もきちんとこなすわい。あの子に伝えておくれよのう」
ワシがそう言うと渋々案内役にあの子を連れてきたのじゃ。お辞儀をする子に名を聞くのじゃ。
「ワンコと言います」
「じゃあワンちゃんだね! よろしくね!」
ハフは力いっぱいワンちゃんの手を握るのじゃ。
「あの……私だけだと困る場合があります。こちらのシーネスさんも連れてきていいですか?」
「どう困るんじゃ?」
「いや、えと……」
「私、シーネスもお付する場合、追加料金は頂きますよ。人手不足なんです」
先程の役員さんはシーネスさんと言うそうじゃ。じゃが追加料金払うくらいなら、案内だけなのにできないなんてことはないじゃろう。
それを伝えると困った顔をしたワンちゃんは、フードを取ったのじゃ。
可愛らしい人間の顔に犬の耳、そんな可愛い容姿なのに痣だらけなのじゃ。
なるほどのう。影の地だけに影から殴りにくるのじゃな。
「こんなのひどいよ!」
ジーナは水の力でワンちゃんを治すのじゃ。
「お、お金払えませんから治療はいいんです……」
振り払おうとするワンちゃんの手を握って素直に治療を受けさせるのじゃ。
「お金はいらないのじゃ」
「で、でも……」
酷い話じゃ、産まれた子に罪はないじゃろう。町ぐるみでイジメをしているなら問題じゃな。
「やっぱり私を付けますか?」
「いや、いらないのじゃ。ワシらだけで十分じゃ。炙りだせもするじゃろう」
ワシとルナとゲールは頷いて作戦を組むのじゃった。
獣人と人間の子供、ワンコちゃんを救うため動くのじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




