第468話「お金稼ぎ」
アカミの朝は早いのじゃ。
アカミが起き上がって、調理場に向かうのに気づいて、ワシは起きて共に行くのじゃ。
朝食を作るスタッフのところに着くと、食事メニューを渡されるのじゃ。
そしてそれぞれの部屋の今日のメニューを言われた後、レシピを渡されるのじゃ。
アカミはそれを一瞬にして理解してしまったのじゃった。
「大丈夫です。指示をお願いします」
下準備から入ったアカミじゃったが、あまりの速さに驚かれたのじゃ。
そして別の人の手伝いも指示を受けて適確にこなしていくのを見て、料理長もわかったのじゃろう。
アカミに提案してくるのじゃ。
「入れる時だけでもメインを任せられないかしら?」
料理長が自らメインを任せてくるレベルであると判断されたアカミの実力に他の人も驚くのじゃ。
「任せてください」
アカミは信頼を得て大きな収入源となったのじゃった。
一方でワシは部屋に戻ると、ハフがゲームをしていたのじゃ。ワシは苦笑して皆が起きてくるのを待ったのじゃ。
暫くして起き始めたのを見ていると、ルナがハフを叱っているのじゃ。
「もう少し現実をみなさい!」
「やーだー!」
相変わらずの光景じゃが、ルナは引き下がらないのじゃ。腕を失うほどの怪我をしたハフじゃからこそ、もっと現実問題に目を向けないといけないのじゃ。
じゃがワシはハフの気持ちもわかるのじゃ。腕を失うほどの怪我をしたからこそ、心の回復が大切なのじゃ。
ワシの想いはルナに伝わったようで、顔を困らせながら、俯くのじゃ。
今のハフには遊び相手が必要じゃと思ったワシは、ハフと共にゲームをするのじゃ。
朝ごはんが運ばれてくると、アカミも顔を覗かせて戻ってきたのじゃ。
「ハフ、ご飯を食べようなのじゃ」
「うん」
ご飯を隣で食べてあげると、ぽつぽつと話すハフじゃ。
「私は何かで稼げるほどの能力はないから……」
ハフが気にしているであろうことは気にしなくてもいいことなのじゃ。じゃが違ったのじゃ。
「私は、皆が気にしていたことを知ってるよ? 私の片腕が削れて、ルナもすっごく失敗してしまったって思ってるのを知ってるよ」
ルナは困るのじゃ。そして、ハフが言いたいことは次の事だったのじゃ。
「でもさ! こうやって腕は義手作ってもらったよ! だから今度はもう、誰も失わない、そうしたらいいと思うんだよ!」
ルナはバンと机を叩いて怒るのじゃ。
「そのために考えるのでしょう!」
「まぁまぁ落ち着いて、ルナ」
ワシは少しハフの考えをトレースするのじゃ。
「いつも通りでないとまた失敗すると言いたいのかのう?」
「うん」
ルナは気づいたようでハフに目を向けるのじゃ。
「ルナがゲームに対して怒るのはいいけどさ? いつも通りに怒ってないのがわかるんだよ。ここが内大陸の常識が通じないのはわかるよ? でもいつも通りができないのに、通用するの?」
ルナはため息をついて頭を抱えるのじゃ。思っているより考え込んでいたようじゃな。
「私はトーチで囲う仕事しかできないけど、それだけでもいいでしょ? リラックスして臨むためにもゲームくらいさせてよ」
ハフの言葉にルナも観念したのか、許可をするのじゃ。勿論しっかり仕事はするという条件でじゃ。朝飯を食べた後、ワシらは早速トーチ屋のところに向かうのじゃ。
シクレはいなかったのじゃ。人に聞くと海側へと向かって売りに行ったらしいのじゃ。
いつも全員いるわけではなく、半分くらいがローテーションしているそうじゃ。
「高いのを買いますか?」
ゲールの提案に、ワシは首を横に振り、シクレの次に安いトーチを買うように頼むのじゃ。
そしてもう一度影の暴走に遭えないか探るのじゃ。
「危険では?」
ルナが心配するのじゃが、トーチの限界を知ってないと話が前に進まないのじゃ。
そういうわけで、安めのトーチを買って、影の森に向かうのじゃ。やる事は昨日と一緒じゃ、きっと大丈夫じゃ。
ジーナの目が頼りじゃ。ワシらは離れすぎないようにジーナのいるトーチを見ながらアカミの合図を待つのじゃ。
(あちらに沢山いるようです)
(よし、ではそれを囲おうなのじゃ!)
ジーナの目はとても貴重なのかもしれんのう。一気に囲うのじゃ。
デッドミラーが邪魔するものの、難なく潰せたのじゃった。
「やったね」
「もう少しやろう」
「待ってね」
誰が言ったのかはわからんのじゃが、会話をしているのじゃ。
「どうしたの? 走ろう!」
デッドミラーかと思った時、ジーナが慌てているのじゃ。
ワシらは油断していたのじゃ! 灯りはだんだん小さくなっているのじゃ。
「ルナ! 急いで方向の指示を!」
テンカが慌てるのじゃ。ワシらは急いで走って影の森を抜けるのじゃ。
駆け抜けて走り抜けようとした時じゃった。念の為最後尾に走ったワシとルナじゃが、ルナの袖にデッドシャドウが噛み付いたのじゃ。
「きゃあっ!」
一瞬の判断じゃった。ワシは瞬時に居合切りで、ルナの巫女服の袖を切ったのじゃ。
「走るのじゃ、ルナ!」
何とか立ち上がって走り、影の森を抜けたのじゃった。
「すまんのう。ワシの判断は悪かったのかもしれんのう」
「次は高いトーチを買いましょう……」
ワシは頷いたのじゃが、謎は残るのじゃった。
ギリギリだったのじゃ。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




