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狐依コンの異世界大冒険  作者: 狐依コン
ルナと出会い、協力編
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第4話「飲んだくれ」

ワシは人には見えんが…



 中に入るとタケトの父親がおったのじゃ。卓状の机の前に座っとる。机には各種酒が置いてあるようじゃった。

「まったく、情けないのじゃ。酒に溺れて働きもせんと。ほれ、酒を飲むのを止めんか!」

 ワシは思いっきりタケトの父親の頭をシバいたのじゃ。

「ぎゃあああ! 痛いのじゃあああ!」

 あまりの硬さにシバいた時返ってきたダメージが大きすぎて、転がり回ったのじゃ。

(大丈夫ですか! コン様!)

 頭の中でルナの声が聞こえたのじゃ。

「ルナか? なんじゃお主、テレパシーが使えたのかのう」

(昨晩繋がったことで少しの距離なら念話ができるようになったようです)

 繋がった? なんか変な言い方なのじゃ。


(別に変なことはしてませんよ? ただ神力の繋がりを繋いだだけです)

 それならばよいが。とりあえずどうしたものかのう。タケトの時は頭を撫でたのじゃが、こやつは酒飲みじゃし……背中を(さす)ってみるかのう。

「ほれほれ、吐いてみい」

 ワシはタケトの父親の背中を摩ったのじゃ。すると本当に吐いたのじゃ。汚いのじゃ。誰が掃除するのかのう?

「ううう、俺だって本当は働かなきゃいけないと思ってるんだ……」

 このオヤジ弱音も吐いたのじゃ……でも辛い気持ちがあるだけでも救えるのじゃ。

 ワシはタケトの父親の肩をポンポンと叩いてやったのじゃ。勇気を出すのじゃ。

「でも俺の力じゃしんどい仕事ばかり……どうしたらいいんだ……」


 何を甘えたことを抜かしとるんじゃ! 世の中甘い事ばかりだと思っとったらいかんぞい! 苦しいことにも直面して立ち向かってこそ本当の成功があるんじゃ!

 ワシも立ち向かわねばならん。痛いのはわかっておる。それでもこやつの背中を叩いてやらねばならん。

 ワシは勇気をだしてオヤジの背中を思いっきり叩いのじゃ。とてつもない痛みが走る……歯を食いしばって耐えたのじゃ。

「いったぁ……なんだ? 誰かいるのか?」

 オヤジは後ろを振り返った。ワシはおるが目には映っとらんようじゃ。


 今度は頭じゃ。その硬い頭ををぶっとばしてやるわい。思いっきり振り絞って、その甘い考えを持つ硬い頭を叩いてやったのじゃ。

 こやつの頭はぐわんぐわん揺れておる。実際には揺れておらんが頭の魂が揺れておるのじゃ。

 ワシは痛みを耐え抜き連撃を与えるのじゃ。

「ぐううう……。さすがに限界じゃ……」

 何度も叩いて柔らかくなる頃、ワシは腕をダランと下げ息も絶え絶えじゃった。

 これでダメなら一度退散するしかないのじゃ。

「う、うおおおん!」


 突然、タケトの父親が泣き出したのじゃ。訳もわからんと見とると急に立ち上がり走り出したのじゃ。

 そして扉を開けて走り去っていったのじゃ。扉の影で、タケトとルナは見つからんかったらしいのう。

 タケトとルナが家の中に入ると、タケトは酒瓶を片付け始めたのじゃ。

 子供にこんな事させるなんて酷い親じゃ。じゃが、少しは反省したかもしれんのう。

 暫くしてからタケトの母親が仕事から帰ったのじゃ。

 ルナがおることに驚いた母親はルナに頭を下げてお礼を言ったのじゃ。じゃがルナはワシの方を見とった。

 ワシは正直もう限界で早く宿に帰りたかったのじゃが、ルナの目配せでもう少し耐えたのじゃ。

 夕飯を頂くルナは、何かを待っとったのじゃ。


 タケトの父親が帰ってきたのじゃ。何かを持っとった。するとタケトの母親に頭を下げて紙を見せながら言ったのじゃ。

「今まですまなかった! 最低クラスの仕事だがとってきた。これからは真面目に働く! 許して欲しい!」

 タケトの母親はあまりの事に驚いてルナを見た。ルナが何かをしたのかと思ったようじゃ。ワシはそれでもよかった。ワシの存在は見れんからのう。

 じゃがルナがそれを許さなかったのじゃ。

「今からする事はとても私の力を使うことです。でも今日コン様が頑張られたので特別ですよ?」

 ルナは神に祈るポーズでワシに祈りを捧げたのじゃ。


 するとどうやらワシの姿はタケト一家に映ったらしいのじゃ。

「こちらが私の仕える神様、コン様です」

 ルナはワシの紹介を終えると、ワシに言葉を話すように促したのじゃ。

「ガハハ! ワシは狐依コンじゃ! 腑抜けたお主の根性を叩き直してやっただけじゃ!」

 ワシはめいっぱい見栄を張ったのじゃ。タケト一家は頭を地につける。

「悲しいのはなしじゃ。辛く苦しくとも、せめて一緒にいる間は笑えるような家庭を作るのじゃぞ」


 タケト一家は涙を流しながらワシの言葉を聞いておったのじゃ。

 やがてワシの姿は見えなくなったのか、タケトが顔を上げたのじゃ。

 ルナは顔色悪そうじゃったが、お辞儀をしてタケトの家を後にするのじゃ。

 ワシはルナに手を繋がれて引っ張られるように宿に向かったのじゃった。

 この時まるで手を繋いでいないとお互いが倒れてしまいそうになるのは気のせいだったのじゃろうか?

ルナの力で見えるようになるのじゃ。


ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやぁめっちゃ面白い笑笑 救済方法が背中と頭を叩くっていう…… しかも腕痛めるほどってことは相当の強さで叩いてらっしゃる…… めっちゃ面白い笑 ルナさんも結構Sなのがより面白い笑
[良い点] コン様が可愛らしくここまでサクッと読めてしまいました。 話の展開もスムーズですね。 [一言] 不必要な装飾がなく、とても読みやすいです。 ブクマさせて頂きました。
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