第356話「スティック国での騒動」
エルフとドワーフに会うのじゃ。
ワシらがウィードリーネさん達と別れた後、スティック国を探索するのじゃが、小さな国なので、あまりやる事がないのじゃ。
そう思っていた時じゃった。馬車が止まっていて、騒ぎが起きているのじゃ。
「やってくれたな? 賠償しろ!」
「私は何もしていませんよ? あなた達が勝手に転んだだけでしょう?」
「おい、面倒事は厄介だ。さっさと金払って行こうぜ」
馬車の主と、耳の長いスラリとした長身の女性と、めちゃくちゃ小柄なオジサンが揉めておるのじゃ。
女性はワンピースに身を包んでおり金髪じゃ。オジサンの方はツナギをきていて職人のようじゃ。
「何か困っておるのかのう?」
ワシは姿を見せるようにしてもらい、話しかけるのじゃ。
「ああ! これは神様、実はこの女と男が馬車をこかしたんです!」
「私たちの言い分は……聞かないわよね」
「やれやれ、逃げようぜ」
「まぁ待つのじゃ。ちゃんと双方の意見を聞くわい。まず馬車の持ち主の方から聞こうかのう? 何があったのじゃ?」
ワシは白主を当てて聞くのじゃ。
「あ、あの、この女に馬車を倒されて……」
「では女さんに聞こうかのう? 何故そんなことをしたのじゃ?」
ワシは女性に白主を当てるのじゃ。じゃが魂は柔らかいのじゃ。
「当然でしょう? 私たちが歩いているのに無理矢理、私を連れ込もうとしたんですもの」
なるほどのう? ワシはもう一度馬車の持ち主に聞くのじゃ。
「お主らは何をしているんじゃ?」
「す、すいません……賠償はいいのでこれで……」
「そうはいかんよのう?」
「いいのよ、お金払わなくていいなら行って」
女性は手のひらをヒラヒラさせるのじゃ。ワシはそれではいかんと思うのじゃが、笑って制されるのじゃ。
「で、では……」
馬車はそそくさと逃げていくのじゃ。テンカとチューに念の為調べさせるワシじゃ。
「そこまでしなくてもいいのに、どうせ人売りよ」
「じゃからじゃよ。ワシは神なのでのう」
「面倒なのね。それより助けてくれてありがとう。私はエルフィーナ、こっちのちっさいオッサンはドワン」
ワシは改めて二人の容姿を見て思うのじゃ。
「もしかして、エルフとドワーフという種族だったりするのかのう?」
「あら、知ってるの? この大陸の外にある外大陸から来たのよ。エルフが珍しいからって人攫いで売り物にするのは相変わらずね、こちらの大陸は」
外の大陸から来たのじゃな。目的は観光ではなさそうじゃが、何が目的なのじゃろう。
「良かったら一緒に泊まらない? あなた達といた方が安全そうだわ」
「こんな事言ってるが、味方してくれる人が現れて喜んでいるんだ、エルフィーナはな」
「余計なこと言わないで、ドワン」
「二人は夫婦なのでしょうか?」
ルナが尋ねると盛大に吹き出すドワンじゃ。エルフィーナは手を横に振るのじゃ。
「私がドワンの護衛なのよ。これでも腕は立つのよ? まぁどっちかと言うと私の方が狙われるから誤解されがちなんだけど」
確かに狙われるのは美人のエルフィーナのようじゃな。ドワンは相手にされないのじゃ。
「でもドワンの腕は本当に凄いからね。鍛冶師としてとてつもない力を秘めているの。今回はこの国の工房を使わせてもらって依頼の品を作る予定よ」
それならワシらも何か作って欲しいのじゃ。ワシがそれを言うと、目を細めて聞いてくるのじゃ。
「いいけど、お金払えるの? 助けてくれたお礼なんて物では足りないわよ?」
「おい、いいよ。何か作ってやろう。簡単なものでいいか?」
「一つ良いかのう? この世界で加工して最高の武器を作るならどんな鉱石があるかのう?」
「そりゃ勿論ゴッドハルコンだ。そんな物があったら何でも造ってやるよ。むしろ造らせてもらえる事が光栄なくらいだ」
ルナとゲールは顔を見合わせるのじゃ。ワシの考えがわかったようじゃ。
「まさかあるの? 神力と魔素の塊だと言われている伝説の物質よ?」
「ワシは刀が欲しいのじゃ。ジーナはリボルバーを造ってもらえるかのう?」
「ゴッドハルコンがあるなら、勿論造ってやりたいが、そこにないじゃないか。あったら流石にすぐわかるぞ?」
「どれくらいの大きさなら刀とデザートイーグル造れるかのう? デザートイーグルは二丁欲しいんじゃが」
「刀は長刀と短刀の二つでいいか? デザートイーグルというのはハンドガンのめちゃくちゃでかいやつだな? それならこれくらいのサイズの物を四つだな。だがこの国には売ってないぞ? それにあったとしても高価すぎて買えないぞ?」
ワシらは念の為、先に工房に着くのじゃ。エルフィーナはワシらが何をしようとしているのか気付いたようじゃ。
「皆よ、ここからが本番じゃ」
ルナとゲールが唱えていくのじゃ。それに合わせてレーゴナやチューも魔力を込めるのじゃ。
そして神力の要求もされたのじゃ。ワシはルナに、ジーナはゲールに力を与えるのじゃ。
神力は覚醒しておるからのう? 一応言うておくと仙道の事はゲールにも教えてあるのじゃ。そうして、ワールド様へ願いは通じ、ゴッドハルコンを得たのじゃった。
「こいつは凄い。見ればわかる、本物だ」
「お見事ね。まさかこんな凄い人達が、まだ『こんな所にも』いたなんてね」
含みのある言い方をするエルフィーナじゃったが、まぁいいじゃろう。
ワシの髪とジーナの髪も抜いて、武器を造ってもらうのじゃ。
馴染みのある元の武器を少しだけ材料に加えて魂を込めていくドワンさんによって、狐依コン刀と、ジーナイーグルができたのじゃった。
『ここまできたか』
ライア様が話しかけてきたのじゃ。
「なんだ? 刀が喋ってるのか?」
ドワンさんが大太刀に触れると、驚くのじゃ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。この大太刀見せてくれないか?」
『あまり触るなよ?』
ワシはライア刀を抜いて見せるのじゃ。
「これもゴッドハルコンでできているな。だが手入れがされていない。研がせて貰うことはできるか?」
ドワンさんに聞かれ、ライア様に聞くと了承してくれたのじゃ。
「意思のある刀ね。神が宿っているの?」
「うむ、昔デス大陸を攻略した神の魂が宿っておるのじゃ」
その後、ゴッドハルコンについてドワン様から色々話を聞くのじゃった。
ゴッドハルコンは一体どんな物質なのじゃろう?
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