第33話「死」
この辺りが一つの転換期になりますのじゃ。後に神力などに変化が現れてきますので、楽しまれたら幸いなのじゃ!
ワシは沈む意識の中でワシを呼ぶ声を聞いたのじゃ。ワシは中々起きれんかったのじゃが、暫くして、意識が浮上していくのを感じたのじゃ。
「……様! コン様!」
ワシを呼んだのはルナじゃったらしい。ルナは泣き腫らした目でワシに抱きついてきたのじゃ。
「良かった……!」
「ここは……?」
そこは森の中じゃった。一体どうなったのじゃ?
「起きたわね」
メデサの声がして振り返ったのじゃ。メデサの後ろには手と足に蛇が巻きついたウェアがおった。生きておるのじゃ!
「殺すのをやめてくれたのかのう!」
「……」
メデサは無言じゃ。ルナが強く抱きついてきたのじゃ。
「コン様……ごめんなさい……ごめんなさい……」
ルナが泣いておる。何があったのじゃ?
「二人を守れなかった……! ううう、ああああああ!」
ワシは慌てて立ち上がったのじゃ。ふらついて周りを見るとジーナとグーシャが倒れておる。
嘘……じゃろ……? あのイメージは現実になったのか? 嘘じゃ……嘘じゃと言うてくれ……。
「魔王は確かに殺したわ」
ワシはメデサに掴みかかったのじゃ!
「何故……何故じゃ! 二人には幸せになる権利もないのかのう!?」
「あなた、魔王に随分肩入れしてるのね。事情はそこの巫女から聞いたわ。私はね、神のやる事は魔王の抹殺だと思ってる。でもあなたは違うようね?」
「当然じゃ! 魔王だって好きでなったわけではやい! 周りの人間のせいで……!」
「環境のせいだとしても、一度は全てを壊すことを祈ってるから魔王になるのよ? 魔物を生み出す魔王とはそういうものよ」
「言うとる事はわかるのじゃ! じゃが更生の道くらい用意したってよいじゃろ! ワシが責任持って生かすと決めたのじゃからワシの命にかけてもジーナとグーシャには悪いことをさせんつもりでおったのじゃよ!!」
メデサは、ふーん、と手を顎に置いたのじゃ。ワシはブチ切れてメデサを殴ったのじゃ。ポヨンと魂が揺れる。こんなにも柔らかい魂をしとるのに何故こんなにも酷いことをできるのじゃ……。
「命にかけても、ね……。じゃあ聞くけど、この先他の魔王に会っても助けられるなら殺さずに助けるの?」
メデサは問いかけてきたのじゃ。
「当然じゃ。一人一人に事情がある。ワシはそれを無視して討伐しようとは思わん。勿論話を聞けん魔王もおるじゃろう。じゃが少なくともジーナとグーシャは違ったのじゃ! 説得できたのじゃ! それを……!」
「はいはい、わかったわかった。じゃあ対処法を教えてあげる。今なら助けられるわよ」
「へ……? な、なんじゃと!? 二人は死んでおらんのか?」
ワシは驚いたのじゃが、メデサは首を横に振るのじゃ。
「確かに死んでるわよ」
「この世界には死んだものを生き返らせる方法があるのかのう?」
「ないわよ」
「では助からんではないか!」
何のやり取りをしとるのじゃ、ワシらは。意味がわからないのじゃ。
「人としての蘇生は無理よ。二人を神にするしかないわ」
こっちはスライムの神、こっちはゴブリンの神にするしかないと言うメデサじゃ。
「なんでもよい。その方法を教えておくれ」
ワシはメデサに土下座して頼んだのじゃ。
「まったく、魔王相手にここまでする神なんて初めて見たわ」
メデサは黒い蛇の分体と白い蛇の分体を出して説明を始めたのじゃ。
「分体を白と黒一匹ずつ、二人に入れるの。それだけよ」
ワシに白い狐二匹と、黒い狐二匹出すように言ったメデサ。ワシは言う通りにしたのじゃ。
「念じると出るようになっとるのう」
急激な成長とも言えるかもしれんのじゃ。ワシは分体にジーナとグーシャの体に入るように言ったのじゃ。
(いいの? 知らないよ?)
(どうなってもしらねぇぞ?)
白コンと黒コンの声が聞こえるのじゃ。じゃがこれしか方法がないなら構わんのじゃ!
分体がそれぞれの体に入るとジーナとグーシャはビクンとしたのじゃ。そして、ゴホッゴホッと咳をしだしたのじゃ!
「コン様! 二人が……二人が生き返った!」
「良かったのじゃ! じゃが蘇生されとるぞい?」
「違うわよ。人の体を依代とした神となっただけ。それより、生き返った二人が受けた死の痛みは、眷属にしたあなたに返ってくるわよ」
何じゃと? それはどういう……? すると分体がジーナとグーシャから出てきたのじゃ。
そしてワシの体に入ってきたのじゃ。その瞬間、身体中に激しい痛みが襲ってきたのじゃ!
「ぎゃあああああああ!!」
「コン様! 大丈夫ですか!?」
ワシはのたうち回って痛みに耐えとったのじゃ。ジーナとグーシャはと痛みに悶えながら見ると、起き上がりワシの方を見て慌てとったのじゃ。
「コン様! 大丈夫? しっかり!」
「あいつがやったのか? くそ!」
「違うの。そうじゃなくて……! でもジーナ、グーシャ、良かった!」
ルナはジーナとグーシャに抱きつきながら涙して、次にワシの体に手を置いたのじゃ。
「メデサ様、これはどうしたらいいんですか?」
「二人が受けた死の痛みがなくなるまで待つしかないわね」
お主のせいなのに随分他人事じゃのう。
「私は魔王含むあなた達を見逃すと決めたから、後は好きにしなさい。ガンマ街に戻るといいわ」
そう言うとメデサはウェアを解放したのじゃ。
「とにかく街へ戻ろう」
ウェアはワシをワイルドウルフの背に乗せ街へ運んだのじゃった。
のほほんと魔王を救うことを考えとったワシのここからの展開を楽しんでくださると嬉しいのじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




