第313話「ドラゴンの魔王の子供」
小さなドラゴンに乗った子供の魔王じゃ!
「あーあ、やられちゃったか」
声がする方を見ると、小さなドラゴンに乗った子供がおるのじゃ。
どうやらドラゴンの魔王の子供のようじゃった。傍にはローザがドラゴンナイトに乗っておるのじゃ。
「アーシェ、あの子を知っておるかのう?」
「はい。従兄弟のウードです。歳はアカミちゃんと同じくらいだったかと思います」
六歳前後かのう。それでも実力は測りかねないのじゃ。
「何故下位の神にされるまで見ていた、ウード」
ローザは攻めるのじゃが、ウードは何処吹く風じゃ。そして何か悪い笑みを浮かべるのじゃ。
「下位の神に興味があってさ」
突風が吹いてマルウが小さなドラゴンに攫われるのじゃ。
「なるほどな、確かに興味はある」
暴れるマルウを無理矢理抑えたウードは爆笑するのじゃ。
「こんな簡単に攫えるんだから、あいつら倒せるんじゃないの?」
「コン様! どうする?」
テンカが慌てるのじゃ。じゃが、ワシはもう既にルナに伝えた後じゃからのう。ルナはそれをジーナに伝えたはずじゃ。
ワシはわかっておったのじゃぞ? 小さなドラゴンがこちらに向かっておった事はのう。勿論ジーナも気づいておったはずじゃ。それを見逃すように伝えたのじゃよ。
「ジーナ、あとは任せたぞい!」
「うん!」
「ルナ、頼むのじゃ!」
「はい!」
ワシはルナと共にルナのワープ魔法でウードの背後に飛んだのじゃ。そして白主を当てたのじゃ。
「何!?」
「え?」
ワシはウードに尋ねるのじゃ。魔王だけの世界が本当に正しいのかを、魔王とて人間じゃ、人を支配するのが本当に正しいかを尋ねたのじゃ。
「くそ……ウードから離れろ!」
「うわあああああああ!」
ウードはドラゴンを飛ばし振りほどこうとするのじゃ。ワシはわざとルナを振り落とし、ウードにしっかり掴まって頭をこねるのじゃ。
ルナはテンカとジーナの手によって拾われたのじゃ。ついでにマルウも助けられたようじゃ。ワシはそのままウードの説得に回ったのじゃった。
本当ならローザを説得したいところじゃった。じゃが、失敗すれば大惨事じゃ。じゃからウードを説得することで、生まれた時から魔王で人を恨んできた者を説得できるか試そうとしたのじゃ。
「嫌だああ、離してええ!」
「話を聞くのじゃ! お主が悪だと言ってるわけではないのじゃ。お主らの気持ちも分かるのじゃ」
ワシは魔王が人間の敵になってしまっているのはわかると言うのじゃ。神から狙われることもわかっておるのじゃ。
ワシはただ知って欲しかったんじゃ。ワシのように魔王の味方の者もいるとのう。
「確かにそういう人もいるよ? でもそんなのまやかしだよ!」
「そんなことはないぞい。お主には魔王の里に家族がおるからのう。下位の神にはなりたくないじゃろ?」
「うん……」
「ならそれでよいのじゃ。人間を嫌いでもよい。それでもワシはお主と『友達』になりたいわい」
「友達……」
「神の友達は嫌かのう?」
もう既に魂は柔らかいのじゃ。ウードは頷いたのじゃ。
「わかった。僕どうしたらいい?」
「ローザに気づかれないようにそのまま暴れながら聞けよのう。絶対に信頼できるとお主が感じた者を集めて、お主の『ワシとの同盟軍』を作っておけよのう。
勿論無理ない範囲で裏切られてもいいようにしておけよのう。お主は賢いからきっと上手くやれるわい!
ここからは上手く演じるんじゃぞ? ワシは絶対にお主が死ぬことを許さんからのう?」
頭を撫でると暴れる演技をしながら笑ったのじゃ。
「さぁ、ワシを振りほどき行け、若き飛竜よのう!」
「どっかいけえ!」
ワシは無理矢理解かれた風を装って落ちるのじゃ。
「大丈夫か? ウード」
「うん……ただかなり厄介だね、さっきのやつ」
「一度離れるぞ。まさかお前が狙われるとはな」
ワシも本当ならローザを説得したいわい。二度目はないじゃろうがのう。
離れゆく中でウードと目が合ったのじゃ。ウインクしてみせた彼を見守って、ワシは皆の元へと向かったのじゃった。
「大丈夫だった?」
アオが皆をカジキ鮫に乗せて来てくれたのじゃ。ウードのドラゴンはローザすら超える程速かったのじゃ。
「上手くいきましたね」
ルナは笑顔じゃ。
「ウードが無茶しないといいですけど」
「大丈夫じゃろう。正直言ってウードが逃げたら速度では敵わんのではないかのう?」
アーシェの心配にワシが言うと、確かにその通りだと頷いたのじゃ。
「どうせならローザも説得すればよかったのに」
ジーナが口をすぼめて言うのじゃが、ワシは首を横に振るのじゃ。
「恐らく誰かといる時は難しいのじゃ。ローザが一人じゃったら可能かもしれんのじゃがのう」
ウードがそうしなかったのは待機時間のはずなのじゃ。じゃがもしウードの説得で、ウードが逃げずにドラゴンを出して戦闘に回っていたら、ワシらも戦うしかなかったのじゃ。
じゃから予想は当たったと言えるのじゃ。上手くいってよかったわい。この行動が後にきっといい風を吹かせてくれるじゃろうとワシは思ったのじゃった。
この種がどうなるかはまだわからんのじゃ。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




