第302話「邪神、鳥依ハッカ」
空中戦じゃ!かなり厳しいのじゃ。
ワシらは下は土砂崩れで立てる場所が少ないし、おまけに相手は飛んでおるので空中戦にもつれ込むのじゃ。
ハッカはある一定の距離を保っておるのじゃ。そしてワシらが進もうとすると全力で止めてくるのじゃ。それに対処しておると風の加護で押し戻されるのじゃ。
「まさか加護持ちじゃとはのう」
「まぁ珍しいと思うよぉ〜? でも中にはいるんだよぉ〜」
ハッカはかなり黒主で飛ぶスピードが速いのじゃ。アオのカジキ鮫でしか追いつけないのじゃ。じゃが、じゃが、カジキ鮫は直線的には速いのじゃが小回りが効かないからのう。
「カジキ鮫で強行突破するか、倒して進むかじゃな」
「彼女を倒して進まないと余計混乱するかもしれません」
ルナの言う通りじゃ。ワシらは戦闘モードに切り替えるのじゃ。
ハフがハリネズミクラゲを空中に浮かべて針を飛ばすのじゃ。触手は届かんからのう。
リューンが雷の加護の龍で雷を飛ばすのじゃが、繋がらないように飛ばされたハッカの黒主に受け流されるのじゃ。
「きゃははは! 空中戦では負けないよ〜?」
ワシらは空中戦の経験が少ないのじゃ。おまけに相手は風の加護を持っておるのじゃ。
「あたしが……!」
「テンカよ、無理するなよのう。これだけの敵の攻撃をワシらに当たらんように回避しながら攻撃するのは難しいのじゃ」
ちなみにジーナは銃を構えて射撃しておるようじゃが、決定打にならんのじゃ。
当然じゃ、相手は動く、自分も動いているのじゃ。上手く当てるのは難しいわい。
「コン様! 狐依ラブ砲撃つ?」
ジーナの言葉にワシは首を横に振るのじゃ。恐らく何回撃っても躱されるじゃろう。
「ライア様、ここから刃を届かせるにはどうすればいいじゃろう?」
ワシはライア刀を抜いて語りかけるのじゃ。ハッカもピリピリとした様子じゃ、じゃがまだ当たらないと思っているのじゃろうか、余裕そうじゃ。
『近づかないと無理だな』
やはり近づく必要があるようじゃ。ワシはハッカに語りかけるのじゃ。
「逃げるなら今じゃぞ? 邪神であることを明かした以上、ワシはもう容赦せんわい。去るなら去れよのう?
それでもここに命をかけてワシを止めると言うのであれば、お主も命をかけろよのう?」
「きゃははは! 脅しになってないよぉ〜。そんなもの絶対に当たらないしねぇ」
「うむ、覚悟はあるとみなしたわい。では皆よ、先に進むのじゃ。ワシはあやつを殺してから向かうわい」
そう言ってワシは白主を変化させ鳥にして乗り、ハッカを追いかけるのじゃ。
「え? え? え? そんなのあり?」
ワシは護衛に黒主と赤主と青主と緑主と紫主を変化させ大きな鳥に変えて、ハッカの鳥を防ぎながら追い詰めるのじゃ。
「皆先に行けよのう! 頼んだぞい! すぐに向かうのでのう!」
「わかりました。コン様、敵はよろしくお願いします」
ルナたちは先に進み、ワシはハッカを追い回すのじゃ。
「ちょっと待って! 聞いてない、こんなの聞いてない! ごめんなさい! 許して!」
「覚悟は聞いたよのう? この世界に連れてこられた立場にも関わらず、神として悪さするお主らを許すわけにはいかん! その魂を天に返すぞい!」
速さ自体は相手の方が速いのじゃが、ワシはライア刀の鎌鼬で牽制しておるからのう。どんどん差が縮まるのじゃ。
ハッカは諦めてペースを落とすのじゃ。泣いておったわい。
「泣くくらいなら何故堕ちたんじゃ?」
「だって……面倒くさくなっちゃったんだもん。禰宜は、助けてあげろ助けてあげろってうるさいし、すごく疲れるし。
だからダイダラ様が全部やってくれる、楽に行こうって言うからついてきたんだよ。でも死にたくはないよ」
「では聞くがのう? お主はこれまでに神殺しはしてないんじゃな?」
それを聞いて黙るハッカじゃ。ライア様に何段階目に見えるか聞いたら二段階目じゃというのじゃ。
「神を殺す、それはお主の罪じゃろ。同族を殺しまでして死にたくないとは我儘にも程があるのう」
「それはそう。でもあなたも殺してるんでしょう? 邪神とはいえ」
「確かにそうじゃ。じゃが、同族を殺した邪神を見逃したこともあるぞい」
それを聞いたハッカは近づいて抱きついてくるのじゃ。
「お願いします。絶対にあなたの思想について行きます。許して!」
「ライア様、なにか方法はないかのう?」
『あるぞ。この子にはダイダラの種が植えられていないからな。おそらく戦力としては取れないと思ったんだろうな。だから、お前が種を植えることで忠誠を誓わせることができるぞ』
それは闇の力の方法なのだそうじゃ。ワシの白、黒、赤、青、緑、紫主全部出すように言われるのじゃ。
「ワシに忠誠を誓うかのう?」
「はい!」
そうしてハッカに入れると光り輝くのじゃ。
「これでどうなったのじゃ?」
『邪神を戻すのは時間がかかるのはわかるな? だが今彼女は、邪神だがコンの意思を継ぐものとして生きることを表明したんだ。いくつか命令できるぞ』
ワシは慎重に命令を考えるのじゃ。
「まず、元の神に戻れるように毎日精進するのじゃ。これは絶対じゃ」
「はい……」
「次に、神に遭遇したら戦いになるよのう? 戦わず逃げることじゃ」
「まだありますか?」
「二度と邪神教に手を貸すなよのう。甘えるなとは言わんが、流されるなよのう。それができねば、どのみちいつか摘み取られるぞい? 今回もダイダラに利用されただけではないかのう?」
「確かに……」
「それでよい。お主のやり方に任せるのじゃ。ワシの意思はこの世界を幸福で満たすことじゃ。折角異世界に来たのに幸せになれなかったら嫌じゃよ。生憎お主を連れては行けないのじゃが、しっかりワシの見てないところでも精進するんじゃよ?」
「どっちみち命令には逆らえない?」
『そういうことだ。元の神になれば種は消えるぞ。頑張れよ』
ライア様も応援して、ハッカは頷くのじゃ。
「ではワシは行くぞい。頑張れよのう!」
ハッカと別れ、ワシは皆を追いかけたのじゃった。
説得と言うより縛りに近いのじゃが、何とかなったわい。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




