第276話「光と闇」
狐依ラブ砲が簡単に止められるのにも理由がありそうじゃ。
信者達は他の皆に任せるのじゃ。ワシは最初から全力じゃ、まずは牽制にジーナと合わせるのじゃ。
「ジーナ! 狐依ラブ砲じゃ!」
ワシとジーナは赤主を纏い炎の熱線をとばすのじゃ。
破壊力はかなり上がっておるからのう、じゃがアライもマダラも平然としておるのじゃ。
「二人合わせてこの程度か?」
マダラは八つの蛇を出し、狐依ラブ砲を全ての蛇で飲み込むのじゃ。
「そんな……」
ジーナはワシら二人分の力が飲み込まれたことにショックを受けるのじゃが、ワシは少し理解てきたのじゃ。
「アライ、マダラよ、お主ら三段階目はゴッド様に貰ったのかのう?」
「それがどうした?」
「その時どちらを選択したのじゃ?」
「……光だ」
アライもマダラも光を選択しておったのじゃ。
「嘘だよ! 二人とも邪神じゃないの!」
「単純にその後、闇に吸い込まれただけだ。絶対的な闇は私たちを黒く染めた。ダイダラ様が私の指針になっただけだ」
「人を救いたいと思わないの?」
「逆に聞くがな? 魔王を救うならこちら側の方がやりやすいだろう? 私たちは魔王となった人間を救いたくて生きている。道は同じはずだが?」
ジーナとマダラの会話を聞いてアライは疑問に思うのじゃ。
「お前らも魔王を救っているのか?」
「そうじゃ。魔王と魔族を救う道を探しておるのじゃ」
「魔族? あれだろ? 魔物と同じの……」
「それでも人と同じじゃ」
「変わってるなぁ、あんた。だが魔王を救うなら邪神教にはいるべきだろ?」
ジーナは困ったようにワシを見てくるのじゃ。
「ワシの理由を話す前に一つ教えて欲しいのじゃ。何故お主らは魔王を救いたいのじゃ?」
アライとマダラは顔を合わせ笑ったのじゃ。
「弱者を救うのが神の役目でしょ? なのにそれをせず殺せなんておかしいと思わないの?」
マダラはワシらを睨みつけてくるのじゃ。
「ワールド様たちは殺せなんて言っておらんじゃろ」
「でも他の神は言ってるよね? 魔物を生み出す魔王は殺すべきだと」
確かにその通りじゃ。最初に出会ったメデサ様も魔王は世界の癌を作る悪じゃと言っておったしのう。
「それでも人を支配するのはおかしいじゃろ」
「何故? 人が支配するから魔王が生まれて、生まれた魔王が殺されるんだ。そんな人間をコントロールする新たな神、それがまだ今は邪神と呼ばれる神の私たちなんだよ」
「言っておることはわかるのじゃ。じゃが魔族を迫害するのがわからんのじゃ。魔王と魔族は共生しておるじゃろ」
「それはあれだよ、ペットみたいなものさ。悪さしたら処理されたりするだろう? そういうものさ」
完全に思考が壊れておるのじゃ。じゃからワシは最後に聞くのじゃ。
「今言った持論に自信があるのなら、ワシとジーナの白主を躱さず当たってみろなのじゃ。どうじゃ?」
マダラとアライは笑って仁王立ちするのじゃ。ワシとジーナは白主を当てたのじゃがほとんど動揺はなかったのじゃ。じゃが少しだけ……少しだけ苦しんでおったのじゃ。何がかはわからんのじゃが、ワシは聞いたのじゃ。
「それでも人を支配するのかのう?」
「ああ、ただ理由は思い出したよ。目の前で悲しみながら苦しみながら死んでいく、あの魔王君の顔が忘れられないからだ。
最初は私情だったかもしれない。それは認める。でも今は大いなる目的となっている。私はダイダラ様についていく」
悪とは、別のまた正義なのじゃ。相容れぬ意見を持つマダラとアライは、もうこちら側にはこれないのじゃ。
「逆にお前たちの方こそ邪な心はないのか? 我が蛇を受けてみなよ。こちらの要求は飲めないなんてことはないよな?」
「いいよ。やってみてよ」
ジーナのことは心配じゃったがワシも受けるのじゃ。
マダラの蛇がやってきてワシらの体に入るのじゃ。その瞬間、心が闇に包まれるのじゃ。
もし他の皆が殺されたら、それでも正気でいられるのか問われるのじゃ。じゃが、ワシの答えは変わらなかったのじゃ。
「悲しい、苦しいを乗り越えて生きていくのじゃ。それは変わらんわい。罰は必要じゃ。それを全ての人に押し付けてはいけないわい」
ジーナも真っ直ぐ前を見ていたのじゃ。大丈夫そうじゃな。
じゃがマダラの方が驚いておったのじゃ。
「狐依コン……お前……」
「何じゃ?」
「何故闇を継いでいる?」
「悪いのかのう?」
「お前こそ邪神であるべきだ! 何故闇を継いでいながら普通の神でいられる?」
ワシはニコリと笑ったのじゃ。マダラもアライも邪神は何も分かっておらぬかもしれんのう。
光とは理性、闇とは本能じゃ。神は光であるべきじゃ。じゃが理性が強すぎると理屈で曲がってしまうのじゃ。それが邪神じゃ。
逆に本能が強すぎると人間や動物、魔物に近くなるのじゃ。あるがままなのじゃ。
結局、『曲がらない』光と闇が最強なのじゃ。そのためにジーナが光を選んだ時点でワシは闇となり彼女の心を支えるつもりでいたのじゃ。
ワシはジーナを本当の意味で神にするつもりじゃった。彼女は元々この世界の人間じゃから、見えておらんこともあるじゃろうからのう。
「話し合いは終わりじゃ。お主らの意志もワシらの意志も相容れぬのはわかったのじゃ。ワシはワシの闇で、神であり転生者であるお主らをこの世界から追い出すわい!」
ワシはライア様を抜いたのじゃった。それは明確にマダラとアライを殺す覚悟ができたという事じゃった。
とうとうワシはライア様を抜いたのじゃ。
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