第231話「迷子」
迷子の迷子の狐さんじゃ!
狐依トルネードで晴らせる範囲にはいなかったので、薄い霧の中をジーザスが先頭で歩くのじゃ。
じゃがおかしいのじゃ。スライムはグーシャが動かしておるからのう。こちらに寄せる事もできるはずじゃ。
ワシはグーシャに声をかけて抱きしめるのじゃ。
「どうしたの? コン様」
「ワシを騙せると思ったのかのう?」
頭をこねるのじゃ。グーシャはため息をついたのじゃ。
「ごめんなさい……でもこのメンバーの時が一番相手してくれてたから」
グーシャは項垂れて、涙を見せるのじゃ。
「幻滅したよね? もうあたしなんか……見てくれないよね?」
「のう、グーシャよ。遠慮することなんてないんじゃ。ワシはお主を愛しておる。親愛じゃがのう。したいならしたい時に、したいと言ってくれていいんじゃよ」
「何を?」
ワシはそっとグーシャの唇に、ワシの唇を重ねるのじゃ。
「コン様……もっとしたい」
ワシらは何度もキスをして愛を確かめたのじゃ。
「ワシを許してくれるかのう? グーシャ」
「うん……ごめんなさい」
そうしてグーシャはスライムを寄せようとしていたのじゃが、困った顔をしたのじゃ。
「支配から外れてしまったみたい。ジーザス、ごめんなさいだけど……」
「うん、任せて」
ジーザスはグーシャの頭を撫でるのじゃ。
「これはあたし達だけの秘密ね。ペーガさんも頼むよ」
テンカがペーガさんに頼むのじゃ。
「それはいいが、早く見つけた方がいいんじゃないか?」
ワシはまずジーザスにアカミの匂いを追ってもらうのじゃ。アカミのケルベロスもおればきっと見つける確率が上がるわい!
はぐれないようにしながら急ぐとアカミがスライムと戦っておるのじゃ。ケルベロスで噛みつき、スライムは半分ほどになっておったのじゃが、それでも襲っておるのじゃ。
ワシは駆け寄り狐依パンチでスライムを弾け飛ばしたわい。初めて戦った時はボコボコにして消滅させたものじゃが苦戦したものじゃ。
今は纏えるからのう。
「次はアオじゃ! 行くぞい!」
ジーザスとアカミが匂いを追って行くと、アオが立っておったのじゃ。スライムは食べ尽くしたらしいのう。
「この程度、何ともないわ」
「アナを見つけるぞい」
暫く進むと、アナがスライムと戦っておるのじゃ。少し大きくなっておる。何故じゃ?
「くっ! どうしたら……」
「アナ! 大丈夫かのう?」
「コン様! 私ではどうにもなりません!」
どうやらコブラの毒で膨らんでいったようじゃ。スライムにこんな特性があるとはのう。
「あたしに任せなさい!」
アオが前に出てカジキ鮫が齧りまくるのじゃが、毒が回りどんどんでかくなっていくのじゃ。
「皆、出し惜しみするなよのう! 白主を使うのじゃ!」
白主の……シーフ、魔鳥、魔犬、ケルベロス、カジキ鮫で対抗するのじゃ。
そうして何とか倒したのじゃった。
「ハフが心配じゃ! 急ごうなのじゃ!」
ワシの心配は当たっておったのじゃ。ハフはなかなか見つからなかったのじゃが、それもそのはず、走り逃げておったからじゃった。
ワシらが追いついた時、ハフにこちらに走るように叫んだのじゃ。
ハフはワシらに気づいてこちらに回ると息を切らしておったわい。
「何なのあれ……」
そこには巨大なスライムがおったのじゃ。木をなぎ倒しながら進むスライムはあまりに大きかったのじゃが、ワシとジーナは臆することなく向かったのじゃ。
ワシはジーナの足元とワシの足元に大地の階段を作り出し上から放つのじゃ。
「狐依パンチ!」
巨大なスライムの中心に届いた狐依パンチはスライムを弾け飛ばしたのじゃった。
じゃがそれで終わらんかったのじゃ。分裂したスライムはまだ動くのじゃ。
更に毒を含んでおるせいか大きくなっていくのじゃ。
「全力で潰すぞい!」
一斉に飛びかかり再び大きくなる前に潰すのじゃ。そうして何とかスライムたちを撃退したのじゃった。
アナとハフは毒が効かんので待機しておったわい。
ワシはハフに話を聞いたのじゃ。
「急に襲ってきたから、支配から逃れたんだと思って倒そうとしたの。そしたら毒を吸って膨らんでいって……」
スライムには毒耐性があるだけでなく栄養として膨らんでしまうのじゃな。
「あたしが迷惑をかけてごめんなさい……」
グーシャが謝ると、アカミとアオとアナとハフが寄っていって励ますのじゃ。
「大丈夫だよ」
ひしっと抱きしめ合うのじゃ。不安な時は相談しなさいと言うワシに泣きながら頷くグーシャじゃ。
そして迷いの森を抜けて、今度は岩だらけの場所に着いたのじゃ。
「次の国、ストーンビーンズ国までが俺がわかる場所だ」
ペーガさんがまだわかる国じゃからどんな国かを聞くのじゃ。
「石だらけの国さ。綺麗で高価な石もあり、貿易で成り立っている国だな」
ワシらは期待を胸にストーンビーンズ国へと歩を進めるのじゃ。
ワシはグーシャとジーザスを傍に呼ぶのじゃ。
「たとえどんな道を進んでもワシの味方であっておくれよのう?」
二人は顔を見合せて頷いて、ワシに寄り添ったのじゃった。
きっと心は同じはずじゃ。いつか別れが来るとしてものう。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




