第214話「ツクヨ砂漠に向けて」
マルヒノ諸島から出発する準備の前の話し合いじゃ!
ワシらはマルヒノ諸島を出る準備をしたのじゃった。情報によると船が出とるらしいのじゃ。
「そんなに焦らなくてもいいんじゃないですか?」
ルナがそう言うのじゃが、ワシは今回の事で痛感しておったわい。
「ワシらはまだまだ弱いのじゃ。強くならねばならんのじゃ」
「そうは言ってもあたし達、元魔王はもうこれ以上強くなれないじゃないか。精霊の加護は受けられるけど」
そう言うテンカに、ワシはそれを否定するのじゃ。
「魔王同士で子供を産めば強い子が産まれるかもしれんのじゃ。ただ……グーシャだけは無理じゃ。人としても殺されてしまったからのう」
それを聞いてグーシャは項垂れるのじゃ。じゃがワシはグーシャの頭を撫でるのじゃ。
「スライムやシーフはそもそも強いのじゃ。大丈夫じゃよ、安心せいよのう?」
「うん……スライムはジーナから受け継いだものだしね」
「そもそもあたしは子供どころか恋人も作りたくないわ。特に魔王となんてね」
アオの言葉にジーザスは落ち込むのじゃ。
「なんでジーザス君が落ち込んでるんですか? 私もアオさんと同じ意見です。愛されるならコン様で十分ですよ」
アナもそう言うので、ワシは二人の頭を撫でたのじゃ。
「そう言うなよのう。もしかしたらいい男が現れるかもしれんのじゃからのう」
ないないと首を横に振り手を振る二人じゃ。
「そもそもウチは子供産めるほど成長してないよ?」
「私もだよ」
アカミとハフは幼すぎるのう。そしてジーザスが涙目で言うのじゃ。
「ぼ、僕はグーシャと……」
そうじゃな。わかっておるわい。
「あたしからしたら子供を産んで大きくなるまで冒険を止めるのか? とも思うよ」
その通りじゃな。まぁ待つのじゃ。
「実は今朝、ルナに調べてもらっておったのじゃ。すると面白い研究をしておる所があったのじゃ。それがツクヨ砂漠にもあるそうじゃ」
ワシは説明を続けたのじゃ。それは魔王の遺伝子操作じゃった。魔法による遺伝子操作で配合した新しい魔王が生まれとるそうじゃ。
「子を産むというよりは生まれ変わるだそうじゃ。魔王にしか不可能じゃが、行く価値はあるじゃろう?」
皆は、ふーんという感じで聞いておったのじゃ。
「無理に生まれ変わらなくてよいがのう。どうせならここから更にワンランクアップしていかんかのう?」
研究自体は色んな場所で行われておるらしいのじゃ。それは魔王への対策として行われておるようじゃがのう。
「女の子なら特に変化があるらしいのじゃ」
「それって僕は関係なくないですか?」
ジーザスが再び落ち込むのじゃ。ワシは頭を撫でながら抱きしめてやり説明するのじゃ。
「遺伝子として体にある精子を残すことができるのじゃ。お主も役に立つかもしれんぞい?」
ワシはそれが誰から聞いた話なのかを説明したのじゃ。それは昨日のヒマチュ様じゃった。
宿で寝ておったらすり抜けてきて説明しに来たのじゃ。
最近出てきた研究なのでまだまだ発展途上だそうじゃ。じゃからこそ可能性は無限じゃ。
「ちょっと大丈夫なのか心配だね、あたしは」
そう言うテンカに、ポンポンと頭を軽く撫でるのじゃ。
「その通りじゃが、行ってみないとわからないのじゃ。じゃからワールド様の住まいも探しつつ行ってみんかのう?」
ワシがマルヒノ諸島でできる事も少ないのじゃ。多くの問題はジーナが解決したようじゃからのう。
「まぁそれでも焦る必要はないと思いますが、皆さんはどう思いますか?」
ルナが皆に聞くのじゃ。するとジーナが言うのじゃ。
「コン様の道に、私は乗るよ」
するとアオさんとアナさんは顔を見合せて言うのじゃ。
「まぁ確かに命を預ける身ですし」
「コン様が強くなるに超したことはないですからね」
そしてアカミやハフも二人に同意するのじゃ。
「あたしもそれでいいよ。正直言うと、マダラみたいなのにまた負けられても困るしね」
テンカは言うのじゃ、そこじゃよ。また敗北するわけにはいかんのじゃ。
「あたし、ずっとコン様のためにいるから! コン様の道があたしの道だよ!」
グーシャがそう言うとジーザスが手を重ねるのじゃ。
「僕の道はいつだって決まってます。コン様、行きましょう!」
これで決まったのう? ワシはルナを見るのじゃ。
「いいんですね? スネーク国の黒幕は見つかってませんが」
皆、うっ、と言うのじゃ。ふふふじゃ。ワシの解答を聞かせてやろうなのじゃ。
「ワシはむしろ、研究所にこそ、黒幕はおるのではないかと睨んでおるのじゃ」
ルナは驚きもせんと話の続きを待つのじゃ。
「魔王について研究しとるということは良い事もあれば悪い事もあるじゃろう? スネーク国の事件に何か関連する事があるのではないかと思っておるのじゃ」
「それがコン様が急ぐ理由ですね?」
わかっておるのに聞くなよのう。やれやれじゃ。皆は納得して次の大陸への船に乗り込んでいくのじゃった。
(まさかと思いますが本当に黒幕がいるなんて思ってないですよね?)
ワシはルナの念話に考えで返すぞい。まずジーナの日記では、ルルウさんの記憶障害は三年前じゃった。
じゃから恐らくもう、その黒幕は次のツクヨ砂漠でも何かしらの成果を上げて、その先に進んでおるじゃろう。
ワシがそう心で考えると、ルナがワシの手を握ってきたのじゃ。ワシがルナの方を見ると、微笑んでワシの方を見ておったわい。
ワシはルナのその手を握り返し、船に乗り込み次の大陸を目指すのじゃった。
ルナよ、わかっていて皆に問いかけておったのう?
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




