第204話「ジーナの日記⑪」
次はスネーク国のようじゃな。
船で向かう途中、シャーク国の方を振り返るアナさん。アナさんにとって、生まれたのはスネーク国でも、育ったのはシャーク国。
私はそもそもの疑問を聞いたよ。
「今まで来た国は海の生き物だったのに、突然陸の生き物になったね?」
「このずっと先に進むと、砂漠の国があります。そこから逃れてきた人達がつけた名前だそうです」
アオさんは物知りだなぁ。私が感心していると、アオさんが頭を掻きながら呟くの。
「全部あの人の受け売りですけどね」
悲しそうな横顔だったよ。
「そろそろ着きますよ」
キツ様が言うから甲板に上って伸びをしたの。天候は穏やかな晴れ。
私はハフちゃんと遊ぶアナさんを見たの。きっと大丈夫だよね?
「不安はありますね。でもクヨクヨしたってしょうがないですからね」
ルナの言う通りだよ。前に壁が現れた時ぶち壊せばいいんだから。
私の狐依パンチも強くなってるからね。
「ハフちゃん、スネーク国ではあなたが鍵を握るかも」
「そうなの? 私頑張るよ!」
アオさんがそう言うとハフちゃんが力こぶ見せてくるの。
「勿論アナもね。頼りにしてるわ」
「はい!」
アオさんはこの国にも詳しいみたいだから少し任せてみるよ。
私達は船を降りると、街並みを見たの。なんだろう? コン様ならなんて表現するかな? 遺跡の上に立ったような街?
「大分古い感じの街ですね」
アナさんがそういうの。雰囲気もどこか暗いその街を歩いていると声をかけられたの。
「アナ? アナじゃない?」
私達が振り返ると女の人が立ってたの。
「……? 誰ですか?」
「やっぱりアナだ! 久しぶり! 元気してた?」
「私はあなたを知らないんですが……」
アナさんが困ってたの。アオさんが助けに入ろうか迷ってたけど様子を見てたよ。
「そうだよね。あなたがこんなにちっちゃい頃に近くに住んでただけだもんね」
「私を知ってるんですか?」
「あなたのお父さんとお母さんがあなたを連れてシャーク国に引っ越すまで、近くに住んでたから交流もあったのよ?」
私は白主を当ててみるの。魂は柔らかいから嘘は言ってないみたい。
「教えてくれませんか? 私が小さい頃どんな風だったのかを」
「私はルルウ。そこの店で話しましょう」
ルルウさんに連れられて私達は店の中に入ったの。店内の雰囲気も暗くて、でもぼんやりとした明かりがいい雰囲気を出してたよ。
「ルルウさん、こちらシャーク国出身のアオさん、この子はクラゲ国のハフちゃん。そしてこの人が私達を助けてくれた狐の神様を連れているルナさんとテンカさんです」
「凄いメンツね、というか何があったの?」
「私はお父さんを殺されて魔蛇の魔王になってしまいました……」
ルルウさんには私もキツ様も見えていない、つまり普通の人だ。
「お母さんは?」
「引っ越してからすぐ病気で死んだと父から聞いています」
「その頃の記憶もないの?」
「はい……」
「やっぱりね」
ルルウさんは何か知ってるね?
「ルルウさんの知ってるアナさんを教えてもらえませんか?」
「勿論そのつもりよ」
ルルウさんは語り始めるの。アナさんは幼い頃記憶維持障害という病気にかかっていたんだって。
それを治すためには潤っていたシャーク国に引っ越して治療を受けるしかなかったそうなの。
両親、特に母親は長く住んだスネーク国に依存してたんだけど、流石にアナさんの症状を見て覚悟を決めたんだって。
記憶の維持が難しい難病を治すためにシャーク国に渡ったアナさんのその後を知らないそうだけど、今の感じを見ると治ってるみたいだね、とルルウさんは安心してくれたよ。
それからルルウさんの、アナさんの小さい頃の話を聞いたよ。
アナさんは小さい頃、好奇心旺盛で誰にでも懐くような正確だったけど、すぐ忘れるから周りも困っていたそうだよ。
それでもアナさんの笑顔を見るのが楽しみだったみたい。
お父さんに似た思考の持ち主だったアナさんの研究メモをお父さんはこの国の実家に残していったみたい。
小さい頃は天才肌だったんだって。今では想像もつかないね。
「まぁ、あの人の面影はありますよね」
アオさんが語るの。アナさんは照れてたよ。
「ルルウさん、部外者のあたしが聞くのもなんだけど、この国になにか困ったことがあるんじゃない?」
テンカが口を挟むと、ルルウさんは少しだけ黙るの。次に口を開いた時のルルウさんの声の調子はとても暗かったよ。
「アナみたいな子供が増えつつあるの。私はこれは毒じゃないかって睨んでる」
「毒に詳しいんですか?」
「一応アナのお父さんと同じ研究者なの。アナの記憶維持障害も神経毒によるものではないかと睨んでいて、研究してたんだけどお金もなくてね。
裕福なシャーク国は研究者の受け入れもしてたけど、私はそこまで優秀でもなかったから」
この国では研究が難しいのに、この国で何か毒に関する事件が起きつつあるみたい。
治すためにシャーク国に行く人たちもいるそうなんだけど、患者自体が凄く多いわけではないから、治療のみで調査をしてくれないそう。
結局この国の調査機関も優秀じゃなくて、ジワジワと被害が広がっているんだって。
「私達で調査してみましょうか」
ルナがそう言うと、ルルウさんは喜んでくれたよ。こうして私達のスネーク国調査が始まったの。
謎の解決に向けて動いとるのじゃな。
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