第200話「ジーナの日記⑦」
ジーナ達、急に危機に陥ったのう。夜じゃから尚更じゃな。
宿ではアオさんアナさんハフちゃんとキツ様が同じ部屋、私とルナとテンカが同じ部屋だったんだけど、寝ていると突然テンカに起こされたの。
「すぐに立って部屋の外を見てきて」
私はテンカの険しい表情を見て察したから、すぐに立ち上がって壁をすり抜けたの。
そしたら壁の向こうには魔鮫だらけだったよ。私は急いでテンカとルナに知らせたの。
「テンカ! 援護して! 突破するよ」
自分でもびっくりしてる、こんな大きな声が出せたなんて。
「ルナはあたしの後ろにいな! 行くよ、ジーナ!」
私は頷いて魔鮫を倒していくの。すると群れになって飛びかかってきたよ。
「大丈夫、あたしに任せなさい」
テンカは沢山の魔鳥に風の加護を乗せてカマイタチを飛ばしたの。遠くからじゃなくて、近くから。
すると真っ二つになった魔鮫が大量に積み上がったよ。
「明日はフカヒレスープだねぇ」
「本当にテンカは強くなったね」
私がそう言うと笑ったテンカは、私の頭を撫でるの。
「ジーナに比べたらまだまださ」
その後も空を泳ぐ魔鮫を蹴散らしながらアオさんたちのいる部屋に入ったら皆いなかったの。
机を見ると窓に来てくださいとあったから窓を開けると、アオさんたちが下から手を振ってたの。
テンカの力を借りて三人で下に降りると、キツ様が謝ってくるの。
「すいません、危機を脱出するために、先に降りてました」
「それは助かるんだけど、どうやって降りたの?」
するとキツ様が白と黒の混じった鳥を見せてくれたの。
「白黒主、どちらも混じったこの力だと人も私も乗せられます」
「凄い! 私にもできるかな?」
「どうでしょう? それよりこの場所はアオさんに聞いた隠れ場所だそうですが、バレるのも時間の問題です。移動しましょう」
そういえば今何時なんだろう? 確認せずに飛び起きたから……わからないんだよね。
「夜中の一時ですよ」
ルナが教えてくれるんだけど、この後どうするんだろう?
それはルナもわからないみたいで首を横に振るの。
「あの、次どうするか決めてるんですか?」
私がキツ様に聞くと、キツ様はアオさんを見たの。
「あたしが鬼ヶ島に送られる前に殺せなかった魔王がいるんです。そいつを抑えられたら多分少しはマシになるかもです」
アオさんの話ではその鮫の魔王はアオさんより強いそう。アナさんを助けたのもその人相手が最初だったそうなんだけど、三日三晩戦って負けたんだって。
元々因縁の相手だそうで、何度も殺すために挑んでは負けて、生かされてたそうなの。
私は、どうして? とは聞かなかったの。何か事情があるみたいだったから……あえて聞かなかったよ。でもとにかく、私達がいたら何とかなるかもしれないよね。
何より説得できたら心強い味方になってくれるかもしれない。
「あの建物にいるはず」
それは大きな建物だった。国のお偉いさんがいる様な場所。
「この国の国王は全てを投げ出して、鮫の魔王の好きにさせてるの」
「実質実権を握っているのが鮫の魔王ってことですか?」
ルナが聞くとアオさんは首を横に振る。
「そうじゃなくて、好きにする代わりに国王達の『譲歩して作ったルール』には従うという感じね」
そのルールは殺しをした場合、罰金を多くとる。魔王の税金は高いなど、お金に関するルールと、国の重鎮には手を出さないというルール。
国民は守られるために上を目指す。目指せない人は蹴落とされ鮫の魔王の餌にされる。
「そんな横暴なことあるの?」
私が尋ねると苦笑いしたアオさんは、その建物を見て言ったの。
「この国をぶっ壊すつもりでいかないと負けるよ?」
「じゃあ壊そうよ」
私の言葉を聞いた皆が笑うの。
「流石、元魔王の神様ですね」
ルナが笑いながら、走る私の手を握るの。
「ぶっ壊してやりましょう」
「うん!」
アオさんが魔鮫の魔王の力で、その木造の建物に穴を開けて中に入るの。
すると中には二十人くらいの男の人が立ってたよ。それぞれ大小の空飛ぶ鮫を従えながら、アオさんに向かって言ったの。
「やっと帰ったか、アオ」
「久しぶりね、ジンベイ」
顔見知りなんだね、当たり前かな? 因縁の相手なんだからね。
「ようやく俺の物になりたくなったか?」
「お生憎様ね。あなたが、あたし達の下につくのよ」
ジンベイと呼ばれた男は、私達を見て爆笑したの。
「おままごとを続けて仲間を増やしてたんだな、昔はあんなに尖っていたのになぁ? 蒼の殺し屋さんよ?」
「昔話はどうでもいいわ。大切なのは『今』でしょ?」
「いいや、どうでもよくないな。そこのアナとか言う、亡き恋人の子供を保護してからじゃないか。丸くなったのはなぁ?」
「アオさん……?」
アナさんが震えて声を出したの。どうしたんだろう?
「お父さんの……恋人?」
「……恋人なんかじゃないわ。ただ、私はアナの父親に救われて愛されて、殺し屋としての心を壊されただけ」
衝撃の事実に固まるアナさんを私は後ろから抱きしめて頭を柔らかくしたの。
「アオさんの過去なんて関係ないよ。アオさんはアナさんを守ってくれる。勿論知りたいのは分かるけどね」
魂の柔らかくなったアナさんは頷いて涙を拭いたよ。
「こいつらを全員屈服させます!」
「ありがとう、ジーナ様。一つお願いがあります。この中でも親玉のジンベイはあたしでも勝てません。援護しますから、お願いします!」
「わかった! 行こう、皆!」
アナさんとアオさんの言葉に頷いて、私達は駆け出したの。絶対に勝ってみせる!
ジーナ達の勢いを読んでおるとその時何があったかわかるわい。ワシはもう少し未来でこれを読んでおるぞい。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




