第20話「一度も助けてくれなかった過去」
ワシの説得開始じゃ!
グーシャは歪んだ笑みのまま語るのじゃ。
「あたしのパパとママは盗賊に殺された。エフ街の商人をやっていたんだ。大商人だった、私は恵まれた環境で育った。
でもパパとママが街道で盗賊に殺されてから、叔父さんや叔母さんが金に群がるようにパパとママの遺産を奪っていった。
あたしはお金がなくなるとボロ雑巾みたいにされて捨てられた。結局皆お金なんだ。あたしは何度も神様に祈ったよ。助けて! ってね。
でも一度だって助けてくれなかったじゃないか! パパとママは色んな人を助ける良い商人だったのに殺されたじゃないか!」
グーシャは一気に言って息を切らしておったのじゃ。そして最悪の笑顔でこう言ったのじゃ。
「だからあたしがゴブリンを生み出して操れるようになった時、みんなみんな殺してやったよ! 大人も子供も関係ない! あたしから金を奪ったやつは全員皆殺しさ!」
「その割にはこんなとこで隠れてチマチマしとるのじゃ」
「今の戦力じゃ、兵達には不意を打たなきゃ勝てない。だから準備してたんだ。丁度試せる機会が来て最高の気分さ!」
するとグーシャは手を挙げたのじゃ。まずいのう、気付かぬうちに囲まれとったらしい。
ゴブリンが十匹はおるのう。河川敷の上からこちらを見張っとるのじゃ。
「のう、グーシャ。今ならまだ助けられるのじゃ。お主が人殺しであったとしても、それはゴブリンのせいじゃ。ワシはお主を救いたいのじゃ」
ワシの言葉を聞いたグーシャは笑いながら言ったのじゃ。
「ハハハ! じゃあこいつらに勝ったら煮るなり焼くなり好きにしろよ。こいつらは一対一なら鍛えられた兵士にも勝てるぞ?」
「すまぬジーナ。後でいくらでも癒してやるのじゃ。じゃから今は全力でワシを援護しておくれ」
ワシはジーナにそう言うと、グーシャの方に走って言ったのじゃ。
「ハハハ! 大将から殺ろうってか? 無駄無駄」
グーシャは三匹のゴブリンを護衛に回したのじゃ。
「ジーナ!」
「うん!」
ジーナはスライムをめちゃくちゃ出したのじゃ。河川敷がスライムで溢れたのじゃった。
「凄いのじゃ!」
「くそっ! こんなやつ!」
グーシャはゴブリンでスライムを潰そうとしていたのじゃが、逆にスライムがゴブリンを溶かそうと頑張っとったのじゃ。
ワシはスライムの海をかき分けてグーシャに近寄ったのじゃった。
「やめろ! くるな! お前もどうせあたしを……」
「大丈夫じゃ、ちょっと抱きしめるだけじゃから」
ワシはグーシャを正面から抱きしめたのじゃ。
「お主は悪くないのじゃ。お主を利用した大人が悪いのじゃ。じゃがお主も悪に染っておるのじゃ。じゃからもういいのじゃよ。光を掴んでよいのじゃ。正しくなって、ごめんなさいをしようなのじゃ」
「う、うるさい! うるさいうるさい! 今更! 今更なんで! なんであの時に来てくれなかったの? あたしは沢山祈ったのに! なんで今更?」
「遅くなってごめんなのじゃ。じゃから、いい子に戻っておくれ。お主は良い子なのじゃろ?」
ワシはグーシャの頭を撫でたのじゃ。硬くなった魂をほぐし、柔らかくしていくのじゃ。
どうあっても過去は変えられんのじゃ。ワシが間に合わんかったのは事実なのじゃ。
もしワシがエー町でもたもたしとらんかったらどうじゃろうか? 間に合ったじゃろうか?
考えても仕方ないのじゃ。終わった事実より、変えられる未来を見るのじゃ。
「ガッ!」
ゴブリンに後ろからナイフで切りつけられたのじゃ。じゃがワシはグーシャを離さんかったのじゃ。
「な、なんでそこまで……」
「お主にはワシが命を賭ける価値があるからじゃ!」
ワシは震えておったのじゃ。神力はもう僅かしか残っておらんのかもしれんのう。
「お主を見捨てたら今度こそお主は悪の道へ行くのじゃ。お主のような少女が、そんな道を行くのは嫌なのじゃ!」
ワシは何度もゴブリンに切りつけられたのじゃ。ルナの光の加護が守ってくれとったが時間の問題じゃ。
「もういい! もういいよ! あたしに幸せな道なんてないんだから!」
「お主はそういうがのう? ちょっと考えてみてほしいのじゃ。誰かと幸せになる道を」
「……誰と?」
「……誰じゃろうのう? ワシかのう? ガハハ!」
ゴブリンの魔王を娶れる者なんぞ、神様以外になさそうじゃのう。
「……いいの?」
「何じゃ? 不満かのう?」
「あたしでいいの?」
「一応言っておくが恋仲になるのとは別じゃぞ? 別に恋仲になるわけじゃなくても家族として一緒にいられるのじゃ」
「嫌だ。恋仲じゃないとヤダ」
「お主何歳じゃ?」
「十六」
犯罪じゃのう〜……。やばいのじゃ。選択の道を迫られとるのじゃ。未成年の魔王を恋人にするか、殺られるかの二択かのう?
「コン様!」
ルナが叫ぶのじゃ。
「正妻は私ですよ!!」
何を言うとるのじゃ、あの子は。
「私、側妻だったの?」
ジーナ、お主まで何を言うとるのじゃ。落胆して力を緩めるでない。
「は、ハハハ! 家族、家族か……」
グーシャは膝から崩れ落ちたのじゃ。
「あたし、まだやり直せるのかな?」
「やり直せるのじゃ。共に行こうなのじゃ」
こうしてゴブリンの魔王グーシャを口説き落とす(?)事に成功したワシは倒れて、ジーナのスライムに乗せられ、グーシャと共に宿に運ばれたのじゃった。
まだやり直せる、次はごめんなさいじゃ。
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




