第180話「冒険者を追い出す準備」
感謝の気持ちが大切じゃ!
先程までの天気が嘘のように吹雪いてくるのじゃ。ワシは心の中でシルフ様に感謝したのじゃった。
「そう、その心が大事よ、コンちゃん」
フウ子が語りかけてくるのじゃ。
「そういう精神が精霊に選ばれるのよ」
見え透いた欲で接すれば、離れていくのじゃ。ワシも気をつけたいと思ったのじゃった。
宿に行くと冒険者で埋まっておるのじゃ。仕方なくワシらが外で寝ようとしておると、声をかけられたのじゃった。
「話は聞いてるよ、ウチは空いてるからおいで」
女性は自分の家にワシらを連れて行ってくれて料理を出してくれたのじゃ。
「私はバスト、あなたたちの名前を教えて?」
ワシらは自己紹介し、談笑するのじゃ。
「まったく、冒険者の奴らったら無茶振りばかりしてくる。あたしにも生活があるのにさ」
バストさんは寝床を用意してくれて、ワシらはそこで寝るのじゃ。
疲れもあってかぐっすり眠れたのじゃった。翌朝起きた時にはもう昼じゃった。
「起こしてくれてもよかったですのに、バストさん」
「あはは! ぐっすり寝てるもんだから、ついさ」
そうして騒ぎ声が聞こえて急いで行くのじゃ。
「そっち行ったぞ!」
「魔法使っても捕まえろ!」
何事かと思って村人に聞いてみると精霊たちを捕まえようとしとるらしいのじゃ。
精霊鳥たちが飛び逃げ回るのを追い回す冒険者たちじゃ。あれでは認められようもないのじゃ。
「やめてください! 精霊たちを無理矢理捕まえようなんて間違ってます!」
「ああ? なんだお前ら」
ルナがワシを見えるようにするのじゃ。
「お主らのう? そんな方法で力を得られるわけがないじゃろう。この国にも迷惑をかけて恥ずかしいと思わんのかのう?」
「か、神様か……だけど俺たちだって強くなりたいんだ。ならなきゃ魔物から人を守れないんだ」
「その守る対象から飯を奪って迷惑かけて何が冒険者じゃ! ただの荒くれ者ではないかのう?」
「うっ、だ、だけど、俺たちだって事情が……」
ワシは白主を当てるのじゃ。
「精霊はこの国でなくてもおるのじゃ。力を得たいなら修行せんかのう! 簡単な道ではないのじゃぞ? お主ら、『人』は特にのう」
蹲って泣き出す冒険者たちじゃ。
「努力はいつか認められるはずじゃから、この国を出てもっと世界を見なよのう」
「でも、あの神様はここで精霊を見つけて捕まえれば力を得られると言ってたぞ……?」
「その神の名を教えてくれるかのう?」
「蛇依マダラ様だ。禰宜のズーダだ」
なるほどのう。邪神教がやっておったのじゃな。
「それで、成果は得られたかのう?」
「……」
「お主らの言った神は邪神教の神じゃ。お主らはまんまと騙されておったのじゃよ」
「そういうことだったのか……」
冒険者たちはアイスウォール精霊国の首都に人を集めることをワシに言うのじゃ。
そしてその説明をして欲しいと言うてきたのじゃった。
ワシらはダイルさんとバストさんの案内で首都ヒョウガルーまで向かうのじゃった。
その間に先程の冒険者たちが皆を集めてくれるそうじゃ。ここから西に向かった先に一番大きな首都があるので、そこで演説してくれたら去るというわけじゃのう。
納得せん者もおるじゃろう。ワシはそやつらも説得してみせるつもりじゃ。
白主が足りるか分からんがのう。ジーナと力を合わせて頑張るのじゃ!
フェニ子が飛んできて言うのじゃ。
「演説の時はあたいとフウ子の事言っていいからね」
「わかったのじゃ。助かるぞい、ありがとうなのじゃ!」
そうして色々相談しながら首都ヒョウガルーまで行くのじゃ。村が連なる道としてはまるで商店街のような村というのが適切な表現じゃろう。
まっすぐ真ん中に通路があり、両側に家々や店があるのじゃ。
この国にはギルドが首都にあり、依頼もあるのじゃが今は締切っとるようじゃ。
それだけ冒険者が多すぎるのじゃ。途中ですれ違う冒険者たちはどうやら集められておるようじゃ。
家々の奥側は山になっており鳥が見えるのじゃ。
「どうせならスイチョウとライチョウもここで仲間に引き入れましょ」
フェニ子がニヤリと笑いながら言うのじゃ。確かに引き入れられるならそれでよいかもれしれんのう。
ルナがスイチョウとライチョウのいる場所までゆっくり歩いていくのじゃ。そして青主と紫主を出して待つのじゃ。
するとスイチョウとライチョウがルナに近づいてきて何かを囁いとるのじゃ。
ルナが頷き撫でるとついてくることになったのじゃ。
「スイ子とライ子じゃな」
「あら、フェニックスとフウチョウさんじゃない。あなた達もこの子と?」
「あたいはジーナにだけどね」
ワシらは自己紹介し合い、現状を聞くと散々だそうじゃ。
「わたちらスイチョウはもうとにかく逃げてますわ」
「わっちらライチョウは反撃もしますわ」
精霊はこれだけなのかのう?
「あとジドリがいますわよ。でもこの辺りにはいませんわ」
それを聞いて歩を進めるワシらじゃ。
「凄いな君たちは。こんなにも精霊に愛されるなんて」
「聖なる巫女ですから」
ダイルさんの言葉にルナは答えるのじゃ。きっとルナの人柄にも触れておるはずじゃよ。
「もう! 恥ずかしいこと考えないでくださいよ」
ルナは照れながら皆と共に行くのじゃった。
精霊たちに愛されるルナじゃ!
ここまで読んでくださりありがとうなのじゃ!続きを読んでくださるとありがたいのじゃ!




